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三太郎さん
三太郎
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吉田秀和が選んだ、「わたしが好きな26曲」。
クラシック音楽の評論家である吉田秀和さんが、自分の好きな曲を26曲選んで解説するというもの。やっぱりベートーヴェンは特別で4曲も選ばれています。弦楽四重奏曲Op.131、ピアノソナタOp.111、第九交響曲は後期の代表作。それと弦楽四重奏曲Op.59-1(ラズモフスキー1番)は壮年期の作品です。どれも僕でさえ知っている名曲です。

僕が聴いたことがないような曲もあります。例えばラベルのヴァイオリンソナタやベルクのヴァイオリン協奏曲。FM放送で一度くらいは聴いたのかもしれませんが記憶にありません。

ヴォルフの歌曲「アナクレオンの墓」という曲はまず聴いていないと思います。バルトークのピアノの小品「夜の音楽」や、シューマンの歌曲「はじめての緑」(聴いてみたらシューベルトを連想させる曲でした)というのも知りません。バルトークやシューマンで、なぜこんな小品を選んだのかと思ったり・・・逆に歌曲で有名なシューベルトではあの長大な「ハ長調交響曲」D.944を選んでいます。これはブルックナーを連想させる大曲で僕も好きです。

他の曲についてはさすがに知っている曲が多いし、中には僕が今でもよく聴く曲が含まれています。

ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64-5「ひばり」は吉田さんが旧制高校時代にであった曲ですが、僕も高校生の頃この曲を楽譜を片手に何回も聴きました。第一楽章の出だしの第2バイオリンのニ長調の「ミ、ファ、ミ、レ/ド/ファ、ソ、ファ、ミ/レ」という4小節のフレーズが次々と変形されていく様が楽しい曲です。

この出だし部分はYouTubeで聴くことができます。ハイドンの「ひばり」

吉田さんの分析によればこの第一楽章の第一主題は同じ楽章の第二主題に変形され、第二楽章と第四楽章の主題の元にもなっています。すべてはあの最初の4小節から始まったわけだ。ハイドンは古典主義の弦楽四重奏の創始者といわれますが、楽しげな、なにげない音楽の中に音楽理論が詰まっている。それがハイドンの曲の魅力です。

吉田さんはドメニコ・スカルラッティのピアノソナタも取り上げています。ただし500曲以上あるスカルラッティのソナタからどれか一つを選ぶことはせずに、吉田さんが愛聴した3枚のLPを挙げています。その中にホロビッツの演奏が入っていますが、このCDは僕の愛聴盤でもあります。

スカルラッティは父親のアレッサンドロ・スカルラッティ譲りの、二度で音がぶつかり合う激しい不協和音の効果を巧みに取り入れています。例としてL.429のイ短調のソナタ(今ではK.175と呼ばれる)を挙げています。

これは全曲がYouTubeで聴けます。スカルラッティの「ソナタK.175」

スカルラッティはナポリ出身ですが、スペインの宮廷に長らく仕えながら作曲しました。彼のソナタにはスペインの踊りのリズムが染みついている気がします。

変わったところでは、ワグナーの「ジークフリート牧歌」を選んでいます。これはワグナーが彼の息子のジークフリートの誕生を祝って妻に贈った純然たる器楽曲です。でも中身は当時作曲中だった楽劇「ジークフリート」にでてくるフレーズをいくつも引用して作られているとか。僕もピアニストのグレン・グールドが亡くなる直前に指揮した演奏をCDで時々聴くことがあります。ワグナーの楽劇はほとんど知らないのですが、所々マーラーの曲かと思うところがあります。

これもYouTubeで聴けます。ワグナーの「ジークフリート牧歌」

その他にはストラビンスキーの「春の祭典」、モーツァルトの「クラリネット協奏曲」、ブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」、ブルックナーの「第九交響曲」、ドボルジャークの「交響曲第8番」、リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」などの有名どころが並んでいます。気になった曲の項目だけ拾い読みしても楽しめますよ。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:820 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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