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hackerさん
hacker
レビュアー:
先日読んだアンソロジー『家が呼ぶ』に入っていた『はなびえ』が印象的だったので、それが収録されている1991年刊の本書を手に取りました。
本書は人体をモチーフにした中島らも(1952-2004)による連作短編集です。収録作の題名を見れば、分かります。

①邪眼
②セルフィネの血
③はなびえ
④耳飢え
⑤健脚行ー42号線の怪
⑥膝
⑦ピラミッドのヘソ
⑧EIGHT ARMS TO HOLD YOU
⑨骨喰う調べ
⑩貴子の胃袋
⑪翼と性器


特に、印象的な作品を紹介します。

・『はなびえ』

本書の中で最も好きな作品ですが、『家が呼ぶ』のレビューの中で紹介しているので、ここでは省きます。

・『膝』

親の遺産で、まったく働く必要のない「私」梨木は、それでも相続には「定職についていること」という条件が付いていたため、「人面瘡評論家」という看板を掲げて、事務所で遊ぶ日々を過ごしていまし。それでも、ひょんなことからTV出演することになって、世間にも名が知られ、ポツリポツリと客が訪ねてきたり、「のっぺらぼう評論家」という男に声をかけられたりするのですが、ある日、本物の人面瘡を持っているという男と知り合います。

途中までのユーモラスな語り口が、ラストに至って恐怖譚に一転する展開が怖いです。

・『EIGHT ARMS TO HOLD YOU』

題名は、作中で登場する若き日のジョン・レノンンの未発表曲の題名です。ビートルズの時代だったので、メンバー4人の8本の腕という意味です。そして、題名には、もう一つ別の意味があったのです。発想が面白いのですが、なによりも、この未発表曲を、セバスチャン兄弟の名曲『サマー・イン・ザ・ジティ』と比較しているので、すっかり嬉しくなってしまいました。

・『翼と性器』

天使は男性なのか、女性なのかという議論に、男性でも女性でもない「無性」となることを望む男が絡む、奇想天外かつグロテスク極まりない話です。この作家なので、先入観かもしれませんが、いかにもドラッグとアルコールの世界です。18歳未満はご遠慮ください。

さて、収録作の多くはオチのある作品なのですが、それが読めてしまうもの、あるいは唐突な感じを与えるものもあって、そういう作品はあまり面白くありません。逆に、ここで紹介した作品は、再読に耐えるものばかりです。言い換えると、作品の出来にはバラツキがあるということなのだと思います。
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hacker
hacker さん本が好き!1級(書評数:2291 件)

「本職」は、本というより映画です。

本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。

読んで楽しい:1票
参考になる:23票
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