ゆうちゃんさん
レビュアー:
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衝撃的な幕開けから、最後のエラリー・クイーンの犯人の指摘までの三日間を描く本格推理小説。一見無関係と思われる証拠が全て事件の解明に役立つと言う論理構成が見事である。
1919年5月24日の11時から、フレンチ百貨店の最上階のサイラス・フレンチの書斎では、ホイットニーとの合併を巡り重役会議が開催されていた。そこはサイラスの私室で、書斎の他に控室、寝室、浴室などがある。その日の正午、第五アヴェニューに面したフレンチ百貨店の飾り窓の部屋では、毎日のその時間恒例のフランスのデザイナー、ラヴェリーの創案になる超近代的設計の居間と寝室の兼用部屋のショーが開催された。飾り窓の部屋の道路側のカーテンが開き、部屋の中で店員のダイアナ・ジョンスンが家具の操作をしてゆくと言う手法である。最初にスイッチを押すとベッドが壁から自動的に出て来ると言う仕掛けだが、ジョンスンが何時ものようにそうすると、そのベッドには女の死体が乗っていた。ジョンスンはそれを見て気絶した。通りは騒ぎになり店の中からはデパートの関係者が出て来てカーテンを慌てて閉めた。事件は警察に通報され、クイーン警視と部下、そしてエラリーも駆けつける。サイラス・フレンチ以下重役たちも騒ぎを聞いて降りて来たが、死体はフレンチ夫人だとわかった。フレンチ夫人はサイラスの後妻で、サイラスとは血の繋がりがないバーニスと言う連れ子がいる。重役会の最中にも、実は朝からフレンチ夫人とバーニスが居ないと、フレンチ家から電話がかかってきていた。死体を調べると、フレンチ夫人は、心臓とプレコルディア部と言うどちらも致命傷になる場所2か所を撃たれているが、飾り窓の部屋では出血の跡が殆どない。フレンチ夫人は、口紅を塗りかけで、しかも夫人のハンドバッグから出て来た口紅棒は、夫人のしている口紅と明らかに異なっている。プラウティー医務検査官補の診たてでは、死亡推定時刻は深夜零時頃だと言う。夜勤の守衛を尋問すると確かに昨晩、フレンチ夫人は11時40分頃にこのデパートを訪ね、最上階のサイラスの私室を訪ねたらしいことがわかった。サイラスはその晩、出張で不在だった。
しかし、フレンチ夫人の周囲から私室の部屋の鍵が見つからない。死体が見つかった飾り窓の部屋の照明灯類は張りぼてで、夜は点かないと言う。しかもここは夜の守衛の詰め所から近い。それらを総合すると、エラリーは殺人の現場は最上階のサイラスの私室ではないかと推理した。大学時代の親友で、今はサイラスの秘書をしているウィーヴァーに案内をさせてエラリーは最上階の私室を調査する。すると、煙草の灰、カード・ゲームの跡、帽子や靴など、そこを行方不明のバーニスが訪ねた跡が多数見つかった。しかも、エラリーはフレンチ夫人が持っていた彼女の物ではない口紅から麻薬を見つける。フレンチ家の関係者について捜査を進めると、フレンチ夫人の前夫カーモディーは、バーニスが麻薬中毒者だと告白した。事件は、デパートを舞台にした麻薬取引事件へと発展して行く。
前作「ローマ帽子の謎」では解決に9日要して400頁だったが、本書では実質三日で事件が解決し、しかも460頁もある分厚い本になっている。それに応じて、登場人物もかなり多いし、手がかりらしきものも多数ちりばめられている。しかし、その中の殆どは読者を惑わす目くらましではなく、全て論理的に事件解決に寄与する点が非常に優れている推理小説である。国名シリーズの代表作と言ってよいのではないだろうか。事件の発端も劇的であれば、最後に犯人を追い詰める場面も劇的である(因みにこの最後の場面は、ドルリー・レーンものの「Zの悲劇」の最後の場面に非常に似ている)。本書の優れているのは、1点を除き提示された証拠が最後に有機的に繋がって犯人をあぶりだしている点である。まるでパズルゲームの様で読者に犯人を当てさせる本格物としても、また論理的にも非常に優れた作品となっている。
ネタバレではないが、除いた1点とはマリオンのスカーフをフレンチ夫人がしていた点である。想像で補えばよいがなぜフレンチ夫人がマリオンのスカーフをしていたのか、この点だけは本書の中に明確な説明がなかった。しかし、これは小説の評価を落とすほどの欠点ではないと思う。
しかし、フレンチ夫人の周囲から私室の部屋の鍵が見つからない。死体が見つかった飾り窓の部屋の照明灯類は張りぼてで、夜は点かないと言う。しかもここは夜の守衛の詰め所から近い。それらを総合すると、エラリーは殺人の現場は最上階のサイラスの私室ではないかと推理した。大学時代の親友で、今はサイラスの秘書をしているウィーヴァーに案内をさせてエラリーは最上階の私室を調査する。すると、煙草の灰、カード・ゲームの跡、帽子や靴など、そこを行方不明のバーニスが訪ねた跡が多数見つかった。しかも、エラリーはフレンチ夫人が持っていた彼女の物ではない口紅から麻薬を見つける。フレンチ家の関係者について捜査を進めると、フレンチ夫人の前夫カーモディーは、バーニスが麻薬中毒者だと告白した。事件は、デパートを舞台にした麻薬取引事件へと発展して行く。
前作「ローマ帽子の謎」では解決に9日要して400頁だったが、本書では実質三日で事件が解決し、しかも460頁もある分厚い本になっている。それに応じて、登場人物もかなり多いし、手がかりらしきものも多数ちりばめられている。しかし、その中の殆どは読者を惑わす目くらましではなく、全て論理的に事件解決に寄与する点が非常に優れている推理小説である。国名シリーズの代表作と言ってよいのではないだろうか。事件の発端も劇的であれば、最後に犯人を追い詰める場面も劇的である(因みにこの最後の場面は、ドルリー・レーンものの「Zの悲劇」の最後の場面に非常に似ている)。本書の優れているのは、1点を除き提示された証拠が最後に有機的に繋がって犯人をあぶりだしている点である。まるでパズルゲームの様で読者に犯人を当てさせる本格物としても、また論理的にも非常に優れた作品となっている。
ネタバレではないが、除いた1点とはマリオンのスカーフをフレンチ夫人がしていた点である。想像で補えばよいがなぜフレンチ夫人がマリオンのスカーフをしていたのか、この点だけは本書の中に明確な説明がなかった。しかし、これは小説の評価を落とすほどの欠点ではないと思う。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:460
- ISBN:9784488104061
- 発売日:1978年11月03日
- 価格:756円
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