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マーブル
レビュアー:
この楽しさ。分かる人にしか分かるまい。それでいいのだ。

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

 タイムマシンに乗らずとも、少年の頃に戻ってしまう。
 茶の間に据えられたブラウン管テレビ。
 両親と弟と、当時の食事の情景すらよみがえる。

 毎回同じなのに、オープニングに心踊らせ
 主題歌を焦れながらも耳にし、
 タイトルの怪獣の名前に期待は最高潮となる。

 懐かしい効果音。
 変身の際の映像。
 それを見ていた頃の気持ち。
 
 魂は、光の速度を超えて当時までひとっ飛びだ。

 実相寺氏による「ウルトラマンのできるまで」と「ウルトラマンに夢見た男たち」の二部構成でできている本書。現場の証言に、当時の雰囲気をまざまざと思い出すとともに、子供だった当時には気づきもしなかったスタッフの苦労や、工夫のあれこれに、大人になった今こそ、もう一度見直してみたい気にさせる。

 何故ウルトラシリーズが好きなのだろう。

 いい歳をして、と言われるが子供の頃に刷り込みを受けた鳥のように、あの着ぐるみの怪獣たちが愛おしくてならない。
 ファスナーが見えたとか、覗き穴はあそこだ、とか子供心に話題にはしていても、毎週ワクワクして見ていたことに違いはない。

 本書の中に、頷ける一文がある。

 人間は、壮大なものがくずれてゆくとき、カタルシスをおぼえ、美しさを感じ、挽歌を奏でたくなる本能を持っている。

 確かに、ウルトラに夢中だった当時の我々は、砂場で作った山や、冬には雪で作った雪だるま、あるいは重ねた積み木を、破壊し、粉々にすることに快感を覚えたものだ。
 あたかも自らが強大な力を持ったモンスターの気分で。

 狂暴さを露に、世界を破壊する怪獣。
 それを倒すため、颯爽と現れるスマートなヒーロー。
 一体どちらを応援していたのか。
 今となると判然としない。

 もちろん、光あふれる変身シーンには恍惚としたものを覚えたが、
 ソフビを買ったり、カレンダーの裏に描いたのは魅力的な怪獣たちだった。

 好きではあるが、それほど系統立てて知識を集めてこなかったため、その内容は知らぬことが多く、非常に楽しく読めた。

 コンセプトやストーリーに込めた思い。
 怪獣のデザインの苦労やポリシー。
 着ぐるみ作製の苦労や、工夫。
 撮影や音楽の裏話。
 
 読んでしまえば、再び見直して確認したくなることばかり。

 子供が小さい頃、マックスやメビウスを一緒に見て、
 懐かしさにレンタル店から初代のウルトラマンのDVDを借りてきたけれど、
 やはり現代の目にはちょっとチープで、非難がましい言葉を投げつけられるのが嫌になり、家族で一緒に観ることはやめてしまったのだが、見直したい気持ちがむくむくと沸いてくる。
 今度は感傷的な気分ではなく、積極的に観賞し直すために。

【読了日2020年2月5日】

◆ウルトラに関する本
ウルトラ怪獣幻画館
ウルトラマン99の謎―懐かしのヒーロー
ウルトラマン新研究―その「戦争と平和」論概説
ウルトラマンになった男
ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗


◆特撮に関する本
 怪獣とヒーローを創った男たち―特撮世界の造型師たちが語る時代を飾った作品群の製作秘話
 ゴジラとナウシカ 海の彼方より訪れしものたち


 
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マーブル
マーブル さん本が好き!1級(書評数:1070 件)

 文学作品、ミステリ、SF、時代小説とあまりジャンルにこだわらずに読んでいますが、最近のものより古い作品を選びがちです。
 
 2019年以降、小説の比率が下がって、半分ぐらいは学術的な本を読むようになりました。哲学、心理学、文化人類学、民俗学、生物学、科学、数学、歴史等々こちらもジャンルを絞りきれません。おまけに読む速度も落ちる一方です。

 2022年献本以外、評価の星をつけるのをやめることにしました。自身いくつをつけるか迷うことも多く、また評価基準は人それぞれ、良さは書評の内容でご判断いただければと思います。

プロフィール画像は自作の切り絵です。不定期に替えていきます。飽きっぽくてすみません。

読んで楽しい:12票
素晴らしい洞察:1票
参考になる:12票
共感した:3票
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この書評へのコメント

  1. あられ2020-02-06 05:07

    うちの息子(平成生まれ)はウルトラセブンと怪奇大作戦が大好きでDVDも買わされました・・。時代が変わっても素晴らしい世界観は人を惹きつけますね。
    切り絵、素晴らしいですね。

  2. ランピアン2020-02-06 07:01

    愚息もDVDでウルトラマンやセブンを観て育ちましたが、親の私にとっては懐かしい昭和の風景が見られるのも、このシリーズの魅力ですね。

  3. ムーミン2号2020-02-06 21:23

    ウルトラマンもウルトラセブンも、子ども向けだからといって一切手を抜いていない、本物だったと思っています。少しは世の中のことが子どもなりに分かってきたときに出会ったのがウルトラセブンでしたが、ダンやアンヌの苦悩までも感じさせてくれたドラマは、半世紀以上たっても心に残っています。子ども心に一番不思議だったのは、なんで怪獣は日本にばかり出没するのか、という点でしたが、ま、そこは深く追求しないこととして・・・。

  4. マーブル2020-02-06 22:37

    あられさん
    コメントありがとうございます。うちもフィギュアなど買わされましたが、今では一緒に見たことすら忘れているようです。もちろんフィギュアは私のものです(笑)

    実は切り絵を始めたきったけも、今思えばウルトラでした。
    子供が学校の工作で切り絵を使った灯籠を作っていたのを見て、自分も作ろうと考えたとき、デザインとして思い付いたのがウルトラマンのオープニングのシルエットでした。

    ウルトラマンと、ギャンゴを作って、裏から光で照らす照明を作ったのが最初です。今思うと出来は良くなかったですが。

  5. マーブル2020-02-06 22:40

    ランピアンさん
     そうなんです。最近古い映画を観る楽しみのひとつがそこにある、と思い至りました。
     昭和の風景、風俗、当時使った家電や車。それらの貴重な記録でもありますよね。

     義母を家に連れて来ると、よく昭和の映像記録のネット動画など皆で観るのですが、古い映画も記録映像としての価値があると気がついたところです。

  6. マーブル2020-02-06 22:44

    ムーミン2号さん
     そこは子供でもツッコミどころでしたね(笑)

     そこを後付けで意味をつけるような設定で作っていたシリーズもあった気がしますが、そうそう気にせずに観るのが吉の気がします。設定の無理さは言えばキリがありませんから。

     それより、こんな風に皆さんで語れる素材であることに大きな価値があるなあ、と実感します。たくさんいい本はありますが、なかなかコメントで語り合う場面は多くはありませんから。

  7. ランピアン2020-02-06 23:08

    以前にお話ししたかもしれませんが、千葉県に住んでいたころ、ある日家内と車で買い物に出て、突然ポインターとすれ違って吃驚仰天したことがあります。本物そっくりというのではなく、まさにポインターそのものでしたから。

    その後インターネットをやるようになって、有名な城井康史さんが製作された入魂の一台だと知ったのですが、あれはカウンタック(古い)も比じゃないほどカッコよかったなあ。

  8. マーブル2020-02-06 23:30

    ポインターですか!それは羨ましい。私の千葉時代には見かけませんでした。
    千葉ではバットモービルの目撃もありませんでしたっけ?

    コスモスポーツのマットビークルもよかったですけど、やはりポインターがかっこよかった。

  9. No Image

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