マーブルさん
レビュアー:
▼
この楽しさ。分かる人にしか分かるまい。それでいいのだ。
タイムマシンに乗らずとも、少年の頃に戻ってしまう。
茶の間に据えられたブラウン管テレビ。
両親と弟と、当時の食事の情景すらよみがえる。
毎回同じなのに、オープニングに心踊らせ
主題歌を焦れながらも耳にし、
タイトルの怪獣の名前に期待は最高潮となる。
懐かしい効果音。
変身の際の映像。
それを見ていた頃の気持ち。
魂は、光の速度を超えて当時までひとっ飛びだ。
実相寺氏による「ウルトラマンのできるまで」と「ウルトラマンに夢見た男たち」の二部構成でできている本書。現場の証言に、当時の雰囲気をまざまざと思い出すとともに、子供だった当時には気づきもしなかったスタッフの苦労や、工夫のあれこれに、大人になった今こそ、もう一度見直してみたい気にさせる。
何故ウルトラシリーズが好きなのだろう。
いい歳をして、と言われるが子供の頃に刷り込みを受けた鳥のように、あの着ぐるみの怪獣たちが愛おしくてならない。
ファスナーが見えたとか、覗き穴はあそこだ、とか子供心に話題にはしていても、毎週ワクワクして見ていたことに違いはない。
本書の中に、頷ける一文がある。
人間は、壮大なものがくずれてゆくとき、カタルシスをおぼえ、美しさを感じ、挽歌を奏でたくなる本能を持っている。
確かに、ウルトラに夢中だった当時の我々は、砂場で作った山や、冬には雪で作った雪だるま、あるいは重ねた積み木を、破壊し、粉々にすることに快感を覚えたものだ。
あたかも自らが強大な力を持ったモンスターの気分で。
狂暴さを露に、世界を破壊する怪獣。
それを倒すため、颯爽と現れるスマートなヒーロー。
一体どちらを応援していたのか。
今となると判然としない。
もちろん、光あふれる変身シーンには恍惚としたものを覚えたが、
ソフビを買ったり、カレンダーの裏に描いたのは魅力的な怪獣たちだった。
好きではあるが、それほど系統立てて知識を集めてこなかったため、その内容は知らぬことが多く、非常に楽しく読めた。
コンセプトやストーリーに込めた思い。
怪獣のデザインの苦労やポリシー。
着ぐるみ作製の苦労や、工夫。
撮影や音楽の裏話。
読んでしまえば、再び見直して確認したくなることばかり。
子供が小さい頃、マックスやメビウスを一緒に見て、
懐かしさにレンタル店から初代のウルトラマンのDVDを借りてきたけれど、
やはり現代の目にはちょっとチープで、非難がましい言葉を投げつけられるのが嫌になり、家族で一緒に観ることはやめてしまったのだが、見直したい気持ちがむくむくと沸いてくる。
今度は感傷的な気分ではなく、積極的に観賞し直すために。
【読了日2020年2月5日】
◆ウルトラに関する本
ウルトラ怪獣幻画館
ウルトラマン99の謎―懐かしのヒーロー
ウルトラマン新研究―その「戦争と平和」論概説
ウルトラマンになった男
ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗
◆特撮に関する本
怪獣とヒーローを創った男たち―特撮世界の造型師たちが語る時代を飾った作品群の製作秘話
ゴジラとナウシカ 海の彼方より訪れしものたち
茶の間に据えられたブラウン管テレビ。
両親と弟と、当時の食事の情景すらよみがえる。
毎回同じなのに、オープニングに心踊らせ
主題歌を焦れながらも耳にし、
タイトルの怪獣の名前に期待は最高潮となる。
懐かしい効果音。
変身の際の映像。
それを見ていた頃の気持ち。
魂は、光の速度を超えて当時までひとっ飛びだ。
実相寺氏による「ウルトラマンのできるまで」と「ウルトラマンに夢見た男たち」の二部構成でできている本書。現場の証言に、当時の雰囲気をまざまざと思い出すとともに、子供だった当時には気づきもしなかったスタッフの苦労や、工夫のあれこれに、大人になった今こそ、もう一度見直してみたい気にさせる。
何故ウルトラシリーズが好きなのだろう。
いい歳をして、と言われるが子供の頃に刷り込みを受けた鳥のように、あの着ぐるみの怪獣たちが愛おしくてならない。
ファスナーが見えたとか、覗き穴はあそこだ、とか子供心に話題にはしていても、毎週ワクワクして見ていたことに違いはない。
本書の中に、頷ける一文がある。
人間は、壮大なものがくずれてゆくとき、カタルシスをおぼえ、美しさを感じ、挽歌を奏でたくなる本能を持っている。
確かに、ウルトラに夢中だった当時の我々は、砂場で作った山や、冬には雪で作った雪だるま、あるいは重ねた積み木を、破壊し、粉々にすることに快感を覚えたものだ。
あたかも自らが強大な力を持ったモンスターの気分で。
狂暴さを露に、世界を破壊する怪獣。
それを倒すため、颯爽と現れるスマートなヒーロー。
一体どちらを応援していたのか。
今となると判然としない。
もちろん、光あふれる変身シーンには恍惚としたものを覚えたが、
ソフビを買ったり、カレンダーの裏に描いたのは魅力的な怪獣たちだった。
好きではあるが、それほど系統立てて知識を集めてこなかったため、その内容は知らぬことが多く、非常に楽しく読めた。
コンセプトやストーリーに込めた思い。
怪獣のデザインの苦労やポリシー。
着ぐるみ作製の苦労や、工夫。
撮影や音楽の裏話。
読んでしまえば、再び見直して確認したくなることばかり。
子供が小さい頃、マックスやメビウスを一緒に見て、
懐かしさにレンタル店から初代のウルトラマンのDVDを借りてきたけれど、
やはり現代の目にはちょっとチープで、非難がましい言葉を投げつけられるのが嫌になり、家族で一緒に観ることはやめてしまったのだが、見直したい気持ちがむくむくと沸いてくる。
今度は感傷的な気分ではなく、積極的に観賞し直すために。
【読了日2020年2月5日】
◆ウルトラに関する本
ウルトラ怪獣幻画館
ウルトラマン99の謎―懐かしのヒーロー
ウルトラマン新研究―その「戦争と平和」論概説
ウルトラマンになった男
ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗
◆特撮に関する本
怪獣とヒーローを創った男たち―特撮世界の造型師たちが語る時代を飾った作品群の製作秘話
ゴジラとナウシカ 海の彼方より訪れしものたち
お気に入り度:









掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
文学作品、ミステリ、SF、時代小説とあまりジャンルにこだわらずに読んでいますが、最近のものより古い作品を選びがちです。
2019年以降、小説の比率が下がって、半分ぐらいは学術的な本を読むようになりました。哲学、心理学、文化人類学、民俗学、生物学、科学、数学、歴史等々こちらもジャンルを絞りきれません。おまけに読む速度も落ちる一方です。
2022年献本以外、評価の星をつけるのをやめることにしました。自身いくつをつけるか迷うことも多く、また評価基準は人それぞれ、良さは書評の内容でご判断いただければと思います。
プロフィール画像は自作の切り絵です。不定期に替えていきます。飽きっぽくてすみません。
この書評へのコメント
- マーブル2020-02-06 22:37
あられさん
コメントありがとうございます。うちもフィギュアなど買わされましたが、今では一緒に見たことすら忘れているようです。もちろんフィギュアは私のものです(笑)
実は切り絵を始めたきったけも、今思えばウルトラでした。
子供が学校の工作で切り絵を使った灯籠を作っていたのを見て、自分も作ろうと考えたとき、デザインとして思い付いたのがウルトラマンのオープニングのシルエットでした。
ウルトラマンと、ギャンゴを作って、裏から光で照らす照明を作ったのが最初です。今思うと出来は良くなかったですが。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:筑摩書房
- ページ数:398
- ISBN:9784480421999
- 発売日:2006年06月01日
- 価格:998円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。