書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
ハロウィーンパーティーで、13歳の少女が、殺人の現場を目撃したことがある、と言い出した。
ハロウィーンパーティーで、13歳の少女が、殺人の現場を目撃したことがある、と言い出した。
人の気を惹くために大げさな話をでっちあげたり嘘をついたりするのが日常茶飯事だった子なので、誰も本気になどしなかった。
だけど、このあと、パーティーの舞台裏で起こった殺人事件は、この子の言葉がきっかけだったのではないか、と居合わせた推理作家アリアドニ・オリヴァは考えた。
それで、この殺人事件を、友人のポアロのところに持ち込んだのだった。

犯人は、やっぱりあの人だったのか……やっぱり、というのは私の場合、「それは、思いもかけなかった」という意味だけれど、作者の手の上で右往左往するのも楽しいからいいのだ。

何よりも、この本の楽しみはハロウィーン。
まずはイギリスのハロウィーン・パーティーに興味津々。
箒の柄競争、リンゴ食い競争、小麦粉切り……手鏡に未来の結婚相手を映して見せる仕掛けや、幻想的でスリリングなスナップ・ドラゴンなど、イギリスではパーティーでのポピュラーなゲームなのかな、どれもおもしろそうだ。
準備や後片付けを思うと気が遠くなりそうだけれど、全力で子どもたちを楽しませようとする仕掛け人たちが素敵だ。

もうひとつ。作品全体の空気が心に残る。
ハロウィーンから始まる物語であり、秋という季節のせいでもあるが、なんともいえない雰囲気がある。
この町には隠し庭園がある。美しい庭師によって造られた美しい庭園だ。そこを訪れたときにポアロはこのように感じる。
「ここにはある雰囲気がある」
ポアロがここで感じたその雰囲気が、この物語全体に漂っているような感じだ。
「それは魔法のようなもの、妖術のようなもの、たしかに美というべきもの、おずおずとしてはいるが、しかも野生的な美があった……そこには恐怖もあることだろう」
そして、この庭園を遊び場のようにする美しい少女がいる。まるで森の妖精のような少女。

バカバカしいくらいに賑やかなハロウィーン・パーティーと、雰囲気を湛えて神秘的に静まる庭、そして殺人。不思議なアンバランスが、逆に不思議な均衡を生み出しているようで、この物語に独特な空気を与えているようだ。

それから、ポアロの犯罪捜査に、絶妙なチャチャを入れつつ協力する推理作家オリヴァ夫人のおとぼけぶりがなんともすてきだった。
途中、彼女の作品の登場人物がどのように生まれ、そこからどんな物語に発展していくか、ということを解き明かしてくれたところがあり、なんと嬉しいサービスだろう、と思った。
この人はポアロのシリーズに何作か登場しているそうなので、次の出会いを期待したい。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

読んで楽しい:7票
参考になる:26票
共感した:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. michako2020-10-30 16:52

    私もこの作品好きです!
    子どもがたくさんいて楽しげなのに悲惨な事件が起きて。
    我が家の子どもが小さい頃、アップルボビングは毎年やっていたので尚更凄惨に感じたのかもしれません。
    でも雰囲気は満点。アップダウンがあって全く飽きないですよね。
    オリヴァ夫人は魅力的ですよねw
    ポアロとのおじさん&おばさんコンビがとても好きです。
    私はこのコンビは特に『象は忘れない』が印象的でした。

  2. ぱせり2020-10-30 19:32

    michakoさん、この雰囲気いいですね! ポアロ、いくつも読んでいないのですが、それでも、この作品は今まで読んだポアロとはちょっと雰囲気が違うな、と思いました。
    michakoさん、お子さんたちとのアップルボビング(りんご食い競争ですね♪)の思い出、すてきですねえ。読みながら、子どもたちとこんなパーティができたら楽しいだろうなとおもっていたんです。

    オリヴァ夫人、ほんと魅力的ですね。『象は忘れない』読みます!ご紹介ありがとうございますo(^o^)o

  3. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ハロウィーン・パーティー』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ