ノーベル文学賞作家・・・ということで少し構えてしまった。
すごく切ない散文集だった。
白いものたちについて60ほどの散文が書かれている。
三部構成で、1 私 2 彼女 3 すべての白いものたち。
ざっと読んだ後、感じたのは、これがノーベル文学賞なの?という疑問。
確かにビジュアル的にいい表現もあり、素晴らしい散文だがまとまりを感じないし、モチーフも不明だった。
こういうのが良いと感じた。
>>まだ、誰にも踏まれていない初霜は美しい塩のようだ。
視覚的な白の美が見事に表現されている。
マンションのベランダから洗濯物が落下する情景描写も秀逸だった。
>>ハンカチが一枚、とてもゆっくり落下していった。翼を半分たたんだ鳥のように。落下地点をおずおずと見定めている魂のように。
>>小さい時から飲んでいた彼女の錠剤を集めたら、全部で何個になるだろう。
これも面白い発想だ。
>>鳥の羽毛のように髪が真っ白になったら昔の恋人に会いに行きたいと言っていた、中年の上司のことを彼女は想いだす。
これはビジュアル的ではないが、心情的によく理解できる描写だつた。
たぶん、上司は男だと思う。
この気持ちわかる。
葦原というタイトルの作品が印象深い。
葦原に、白くやせ細った彼女が立っている。
>>彼らに背を向ける前に彼女は自問する。
この先へ進みたいの。
その価値はあるの。
ない、と震えながら自分に向かって答えたときがあった。
過去の自殺未遂を想起させられせゾっとする場面だ。
言葉の吸引力に引き込まれていくのがわかる。
全部よんで思ったのは、白いものについて語った物語だな・・・という印象だったのだが、訳者の解説で印象が一変した。
餅のように白かった姉が生後すぐに死んだという事実がある。
最初の第一段の私は主にそのことに触れていた。
第二段の彼女は、その死んだ姉視線だというのだ。
この葦原や、洗濯物の話しも、死んだ彼女である姉の視点なのだ。
そして、もう一度、視線が第三段で私に戻っている。
つまり、第二段の彼女は、ワルシャワをめぐる死んだ姉の架空の物語なのです。私から生命を与えられた死んだ姉の感じた白いものの話しなのです。
・・・ということになると、まったく物語は違う角度から入ってくることにナル。さすが・・・という作品でした。
2026 4 22
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