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ゆうちゃん
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ミス・マープルものの長編第四作。イギリスの片田舎の村の新聞にその村のリトル・パドックス館で殺人が起きるという予告状が掲載された。そこの女主人は、面白がって指定された時刻にパーティを開くのだが・・。
チッピング・クレグホーンという村にリトル・パドックス館という屋敷がある。10月29日の金曜の夜6時半、そこで殺人があるという予告状が、チッピング・クレグホーン村の新聞ギャゼットの私信欄に載った。
リトル・パドックス館は、レティシア・ブラックロックという独身の女性が主人で、彼女の級友ドラ・バンナー、遠縁で最近ここに身を寄せたパトリックとジュリア・シモンズ、外国人の使用人ミッチー、そして美貌の下宿人フィリッパ・ヘイムズが住んでいる。レティシアはその広告を読んで怒るどころか、面白いと言いだし、ミッチーにパーティの準備をさせる。その日の晩、近所でリトル・パドックス館とお付き合いしている連中がここを訪ねた。皆が集まった時、電灯が消え、ドアが開いて男が「ホールド・アップ」と叫んだ。皆が混乱するなか二発の銃声がし、その男が振り向いた時三発目の銃声が響いた。死んだのはその「ホールド・アップ」と叫んだ男だった。
その男はチッピング・クレグホーンから少し離れたメデナムのホテルのスイス人の従業員シャーツで、身元を調べると札付きの小悪党だった。彼が死んだのは事故か?自殺か?それとも殺人か?地元のクラドック警部が調べると、リトル・パドックス館の開かずの扉に油を注した跡があり、ここを使えば、混乱の中、シャーツの後ろに回ることが出来ることがわかった。また館の女主人レティシアは若い頃に事業家ゲドラーの秘書をしていたことがあり、子供のいないゲドラー夫妻の莫大な財産の相続人に指定されていた。ゲドラーはもう既に死去しており、夫人も余命いくばくもない。ゲドラーには行方の知れない甥と姪が居て、レティシアが死ねば、遺産は彼等のものになるという。

こちらも前作「動く指」に続きセント・メアリー・ミードが舞台ではない。「ミス・マープルと13の謎」でミス・マープルの推理能力に感銘を受けたという元警視総監のヘンリー・クリザリング卿がミス・マープルと事件の間を取り持つ。また、ミス・マープルはチッピング・クレグホーン村の牧師夫人であるミセス・ハーモンの父母とお友達という設定である。ハーモン夫人が牧師夫人であるならばセント・メアリー・ミードの事件としてもいいような気がするが・・。
ミス・マープルの捜査は警察陣をはらはらさせるほどの行動力である。またクラドック警部は、クリスティの私立探偵ものとしてはかなり優秀な警察官である。解説では、ミス・マープルものとしては結構トリックに凝ったポワロものの名作に迫る作品、とあるが果たしてその評価は正しいだろうか。確かに題名の通りで出だしは奇抜だが、クリスティの本格ものにありがちな、容疑者を一か所に集めるという目的を果たすため、リトル・パドックス館を巡る人間関係が結構強引に見える。また、犯罪構成をきちんと示すには、リトル・パドックス館の見取り図なども欲しい。凶器が話題になるのだがその出所の説明が放りっぱなしになり、尽くされていない気がする。
なお、本書に登場するエドマンド・スウェッテナムと言う作家は「象も忘れる」という戯曲を書いてロンドンで評判をとったことになっている。本書の発表は1950年だが、22年後にクリスティは「象は忘れない」と言うポワロものの実質最終作を書いている。
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ゆうちゃん
ゆうちゃん さん本が好き!1級(書評数:1687 件)

神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。

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