ぷるーとさん
レビュアー:
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シベリアの収容所を舞台にした、井上ひさし最後の作品。
小松修吉は、左翼の地下活動に従事していたが捕まって拷問の末転向し、満州で働いていたところ召集されてシベリアに送られてきた。ロシア語・中国語に堪能なことから日本語新聞の編集局に連れて行かれたのだが、ひょんなことからレーニンの手紙を手に入れることに。
その手紙には、それが世に出たらソ連の国家存続が危うくなるような秘密事項が書かれていた。ソ連の当局は、何とかその手紙を手に入れようと躍起になっている。小松修吉は、たった一人でそのソ連当局と戦うことを決意した。
シベリアに送られた兵士たちの多くは、戦争末期、大慌てで召集されたという者が多かった。関東軍が、戦況が不利であると分かった時点で満州に住む多くの同胞を見殺しにして自分たちの利益だけを図ったことはさまざまな場面で語られているが、関東軍の上官たちは、シベリアの収容所の中でも自分たちの利益だけを考えていた。過酷な労働はすべて下士官にさせ、食事は下士官の分まで奪った。正式な訓練を受けていない間に合わせの兵たちは、そういった横暴を甘んじて受けるしかなく、多くの下士官たちが死んでいった。
こういったことが、今になってさえなかなか表に出てくることはないという悲惨さ。だからこそ、井上ひさしは、半ば笑い話のようにしてこの作品を書いた。そうでもしないと、寒い寒いシベリアの極寒地で死んでいった人たちが浮かばれない、と。
その手紙には、それが世に出たらソ連の国家存続が危うくなるような秘密事項が書かれていた。ソ連の当局は、何とかその手紙を手に入れようと躍起になっている。小松修吉は、たった一人でそのソ連当局と戦うことを決意した。
シベリアに送られた兵士たちの多くは、戦争末期、大慌てで召集されたという者が多かった。関東軍が、戦況が不利であると分かった時点で満州に住む多くの同胞を見殺しにして自分たちの利益だけを図ったことはさまざまな場面で語られているが、関東軍の上官たちは、シベリアの収容所の中でも自分たちの利益だけを考えていた。過酷な労働はすべて下士官にさせ、食事は下士官の分まで奪った。正式な訓練を受けていない間に合わせの兵たちは、そういった横暴を甘んじて受けるしかなく、多くの下士官たちが死んでいった。
こういったことが、今になってさえなかなか表に出てくることはないという悲惨さ。だからこそ、井上ひさしは、半ば笑い話のようにしてこの作品を書いた。そうでもしないと、寒い寒いシベリアの極寒地で死んでいった人たちが浮かばれない、と。
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ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
よろしくお願いします。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:524
- ISBN:9784103023302
- 発売日:2010年06月01日
- 価格:1995円
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