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たけぞう
レビュアー:
他人に合わせすぎた姉と、合わせなさすぎた妹。
彩瀬まるさんは追いかけている作家さんです。
わたしの中にはこれまで読んだ作品が下地にあるので、
著者が関心を持っていることが、つい気になります。

最近の作品は、これまでの作品に多かった幻想的な比喩が減っています。
この作品は、他人との距離感を題材にしていることが伝わりました。
ひょっとしたら、幻惑されていた向こう側には、
いつもこの題材があったのかもしれないと思い当たるところがあります。

依千佳。誰からも尊敬を集める人で、ばか正直です。
いつも誰かと一緒にいたいと思う人です。
仁胡瑠。変わり者で、自分の絶対的な感性を信じています。
子どもの頃から、一日中一人遊びができる人です。
二人の姉妹の視点で、物語は交互に進んでいきます。
両極端な立ち位置を持ち込んだことで、物語が成立しているのですね。

草原のサーカスとは、二人が子どもの頃に見にいったサーカスの記憶です。
演目の中に、白い虎が逃げ出してしまうというコミカルストーリーがありました。

依千佳は、河川敷のサーカスを家族四人で見たこと、屋台のものを食べたこと、
夕暮れの賑わいが楽しかったことを覚えていました。
虎の演目はあったような、ないような。
仁胡瑠は、白い虎を鮮明に覚えていました。
しかも白い虎が金網から逃げ出して、河川敷を疾走する姿が頭の中に
焼き付いていました。もちろん虎は逃げてはいないのですが、
そもそもサーカスを家族で見にいった記憶すらおぼろげたったのです。

人と人は見えているものが違うのです。
それを物語に落とし込んでいます。

物語の半分くらいまでは、頭でっかち感というか、
著者らしくない雰囲気があったのですが、
中盤以降で物語が浮き沈みを始めるあたりから
著者らしさが発揮されています。

自分が思っているほど、他人は自分のことを思っているはずがないという、
当たり前のようで気づきにくい感覚を、わたしは行間から感じ取りました。
それが著者がずっとこだわっている真のテーマのような気がするのです。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1466 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
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この書評へのコメント

  1. noel2021-05-26 11:14

    >自分が思っているほど、他人は自分のことを思っているはずがないという、当たり前のようで気づきにくい感覚

    そうは思っても自惚れてしまうのですよねぇ。

  2. たけぞう2021-05-26 17:16

    >noelさん
    ああ、耳が痛い///というか、激痛かも。

  3. No Image

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