書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

かもめ通信
レビュアー:
11歳の少女ユジの失踪をきっかけに、次第に明かされていく家族皆がそれぞれが抱えている秘密!え?これサスペンスなの!?ひたひたとしのびより次第に広がる不気味な怖さが!?
死体が発見されたのは五月最後の日曜日だった。
そんな不穏な書き出しで始まる物語は、
そのくせ、そんな死体のことなど、
誰も気にしていないのか、
あるいはすっかり忘れてしまったのかと思えるような展開で
ある家族のとある一日のことを語り始める。

大学生のキム・へソンはあくびをかみ殺しながら朝食を食べている。
ヘソンの父、キム・サンホとその妻チン・オギョンは、
互いにひと言も言葉を交わさぬままで険悪な雰囲気を漂わせている。
彼らの娘、11歳のユジは、
まだ半分も食べていないごはんをもてあますかのように、
スプーンでギュッギュッと押しつぶしている。
ごく普通の、ありきたりな日曜日になるはずだった。
その朝までは。

それぞれがそれぞれの用事で出かけていき、
やがて夜を迎えたとき、
ユジの姿がどこにも見えないことに家族はようやく気づくのだ。

少女の失踪をきっかけに、
次第に明かされていく家族皆が
それぞれが抱えている秘密。


え?これって、サスペンスだったの!?
ひたひたとしのびより、次第に広がる不気味な怖さが!?


互いの秘密にうすうす気づきながらも
気づかぬふりをしているうちに
気がつけば、本当に相手のことをすっかり見失っている。

一つ屋根の下で暮らしながら
秘密を抱えすれ違う家族が織りなす人間模様を眺めていると
全○回のテレビドラマでも見ているような気分になってきて
在韓華僑や中国朝鮮族の多くが直面する苦悩がテーマの一つになっていなければ、
韓国文学だということを忘れそうだ。
それだけ翻訳が自然体だということでもあるのだろうが、
物語に親しむのに「○×文学」というジャンル分けに
こだわる必要もないんだな、と改めて思ったりもした。


ちなみに今回の読書のお伴は
ヴァイオリンの英才教育を受けているユジのエピソードから
ハイフェッツの演奏でヴィターリの「シャコンヌ」を。

世界で一番悲しい音楽、ヴィターリの<シャコンヌ>を、
ハイフェッツはなぜこんなに速く、激しく演奏したのだろうかと気になっています。
息もつかせぬほどの速さが、悲しみをよりうまく表現できるのでしょうか。

物語中盤のこのあたりがすごく好き。

掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2234 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

参考になる:34票
共感した:2票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『きみは知らない (韓国文学セレクション)』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ