三太郎さん
レビュアー:
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飛ぶ孔雀が主人公!? 実は○○の町が主役なのかも?
いきなりですが、野生の孔雀は飛ぶらしい。飼われている孔雀なら風切羽が切られており飛べないはずなのですが・・・
この小説は、ある地方の小都市を舞台にした、暑い盂蘭盆の季節に起こったある事件の詳細についての報告です。分りにくい報告だけれど。
町の中心を一級河川が流れ、川が蛇行しふくれた所に大きな公園があり、公園の川向うにお城が見える町だという。さらに街中を路面電車が通っているとなると、この町が中国地方の岡山市をモデルにしていると思って間違いなさそうです。となると川中島のQ公園とは後楽園のことですね。僕はまだ行ったことがないのですが・・・芝生の中に池があって美しいところのようです。
前半の物語「飛ぶ孔雀」の舞台はこのQ公園で、盂蘭盆の晩に華麗なお茶会がひらかれます。園内は電飾で彩られ、沢山のお客で大賑わい。お茶うけは干菓子だったというから薄茶が出されたようです。
二人の少女姉妹が各々火を託されて、夜の公園内を右回りと左周りで公園の端まで火を運ぶのですが、なぜか芝生の芝が勝手に動き回ったり、目の赤いクジャクが飛んできて関守石をくちばしで摘まんで移動させたりするので、思うような道順で前に進めません。そのあとはもうしっちゃかめっちゃかで、読み直しても何が起こったのかさっぱり分かりません。可哀そうに、どうも姉妹は無事にたどり着くことはできなかったみたいでしたが・・・なぜクジャクが火を運ぶ少女たちを邪魔するのかが謎として残されました。
物語の冒頭部分でシブレ山で何か事故があり、そのために火が燃え難くなったとあります。でもシブレ山の事故についても、火が燃え難くなる原因についても前半ではまったく触れられません。そして孔雀が少女らを妨害する理由も・・・後半を読めば分かるのかな・・・
後半は「不燃性について」。前半にもちょっと顔を出した男Kが路面電車の女運転手ミツと親しくなるところから物語は始まります。二人がよく通う温水プールの地下には長大な温水用ダクトが張り巡らされています。Kはそこでミツの友人でダクト職人のセツと出会います。そしてミツは突然行方不明になります・・・
Kはセツと中空の塔を逆さに地面に埋めたような階段井戸の中で暮らし始めるのですが、セツの金で買った宝くじが大当たりし、その金でセツは豪遊し、Kはセツの知り合いの小娘リィとともにシブレ山のロープウエイ山頂駅に隣接する温泉ホテルに向かいます。そのホテルの温泉井戸には大蛇が住みついていたのです。どうもこの温泉井戸と下界の温水プールはダクトでつながっているらしい・・・物語の最後で大蛇はダクトを通って温水プールに現れ、Kは小説の前半の初めの部分に戻り、小娘はロープウエイで下山すると女運転手の電飾だらけの特別な花電車に乗り込むのでした。
一度読んだくらいではよく解らない小説です。町が生き物のように思える物語でした。
やや強引な解説を試みると、山頂に住んでいた水の神である大蛇(龍?)が街中に降りてきたので、空気が水っぽくなって火が付きにくいのかも?
飛ぶ孔雀は実は火の鳥(フェニックス)で、炎の中で再生するために少女たちから火を奪おうとしたのかも?
さて、この小説は山尾さんの作品には珍しく、現実の町と物語の町がつながっています。だから、この本を片手に岡山の町を散策しても面白そう。路面電車で街中を周ったり、後楽園を散策したり、なんなら旭川を後楽園の下流までたどり、戦前には遊郭があったという、物語の最後にKがたどり着く中州の町を橋の上から眺めることもできるでしょう。あるいは今は廃止されたロープウエイの麓駅や、ホテルがあったと思われる頂上駅を見てまわることもできそうです。
この小説は、ある地方の小都市を舞台にした、暑い盂蘭盆の季節に起こったある事件の詳細についての報告です。分りにくい報告だけれど。
町の中心を一級河川が流れ、川が蛇行しふくれた所に大きな公園があり、公園の川向うにお城が見える町だという。さらに街中を路面電車が通っているとなると、この町が中国地方の岡山市をモデルにしていると思って間違いなさそうです。となると川中島のQ公園とは後楽園のことですね。僕はまだ行ったことがないのですが・・・芝生の中に池があって美しいところのようです。
前半の物語「飛ぶ孔雀」の舞台はこのQ公園で、盂蘭盆の晩に華麗なお茶会がひらかれます。園内は電飾で彩られ、沢山のお客で大賑わい。お茶うけは干菓子だったというから薄茶が出されたようです。
二人の少女姉妹が各々火を託されて、夜の公園内を右回りと左周りで公園の端まで火を運ぶのですが、なぜか芝生の芝が勝手に動き回ったり、目の赤いクジャクが飛んできて関守石をくちばしで摘まんで移動させたりするので、思うような道順で前に進めません。そのあとはもうしっちゃかめっちゃかで、読み直しても何が起こったのかさっぱり分かりません。可哀そうに、どうも姉妹は無事にたどり着くことはできなかったみたいでしたが・・・なぜクジャクが火を運ぶ少女たちを邪魔するのかが謎として残されました。
物語の冒頭部分でシブレ山で何か事故があり、そのために火が燃え難くなったとあります。でもシブレ山の事故についても、火が燃え難くなる原因についても前半ではまったく触れられません。そして孔雀が少女らを妨害する理由も・・・後半を読めば分かるのかな・・・
後半は「不燃性について」。前半にもちょっと顔を出した男Kが路面電車の女運転手ミツと親しくなるところから物語は始まります。二人がよく通う温水プールの地下には長大な温水用ダクトが張り巡らされています。Kはそこでミツの友人でダクト職人のセツと出会います。そしてミツは突然行方不明になります・・・
Kはセツと中空の塔を逆さに地面に埋めたような階段井戸の中で暮らし始めるのですが、セツの金で買った宝くじが大当たりし、その金でセツは豪遊し、Kはセツの知り合いの小娘リィとともにシブレ山のロープウエイ山頂駅に隣接する温泉ホテルに向かいます。そのホテルの温泉井戸には大蛇が住みついていたのです。どうもこの温泉井戸と下界の温水プールはダクトでつながっているらしい・・・物語の最後で大蛇はダクトを通って温水プールに現れ、Kは小説の前半の初めの部分に戻り、小娘はロープウエイで下山すると女運転手の電飾だらけの特別な花電車に乗り込むのでした。
一度読んだくらいではよく解らない小説です。町が生き物のように思える物語でした。
やや強引な解説を試みると、山頂に住んでいた水の神である大蛇(龍?)が街中に降りてきたので、空気が水っぽくなって火が付きにくいのかも?
飛ぶ孔雀は実は火の鳥(フェニックス)で、炎の中で再生するために少女たちから火を奪おうとしたのかも?
さて、この小説は山尾さんの作品には珍しく、現実の町と物語の町がつながっています。だから、この本を片手に岡山の町を散策しても面白そう。路面電車で街中を周ったり、後楽園を散策したり、なんなら旭川を後楽園の下流までたどり、戦前には遊郭があったという、物語の最後にKがたどり着く中州の町を橋の上から眺めることもできるでしょう。あるいは今は廃止されたロープウエイの麓駅や、ホテルがあったと思われる頂上駅を見てまわることもできそうです。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:0
- ISBN:B08MT1DDWJ
- 発売日:2020年11月10日
- 価格:800円
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