efさん
レビュアー:
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『弊機』は人間が苦手なのです……という警備ユニットが活躍する痛快コミカルタッチのボットSF
私は、図書館に唯一あったシリーズ第二作である『ネットワーク・エフェクト』をお試し的に借りて読んでみたのですが、これが予想以上に面白かった! シリーズ第二作ということは知っていたので、これはもうシリーズ全作読まないわけにはいかない! と思い、図書館に他館からの借り出しリクエストを出して届いた本作も読んでみましたよ(最新作の『逃亡テレメトリー』は私のリクエストに応じて買ってくれたみたい……こちらも「届いたよ~」というお知らせがあったので後で借りに行かなくちゃ)。
本作には、四編(上下巻に二編ずつ)の連作短編が収録されているのですが、シリーズ第一作ということで、物語の設定、背景などは本作から読んだ方がずっと分かり易いです。主人公は保険会社が所有しているアンドロイド(?)です。警備用に作られている警備ユニット。日記風に一人称で語られるのですが、自分の事は『弊機』と呼んでいます。
『弊機』は、ボットと言えども完全な機械ではなく、有機組織部品と非有機組織部品の混合で作られています。外見もほぼほぼ人間に見えるのです。こうなるとサイボーグか? とも思えるのですが、有機組織部品もオリジナルの人体を活かしているというのではなく、クローン増殖させた有機組織を使っているようです。
実は、『弊機』にはトラウマがあったのです。あるミッション遂行中に多数の人間を殺してしまったという……。その結果、『弊機』は所有者である保険会社に回収されて記憶を消されてしまいました(機械的なメモリーは消去されますが、有機的な脳もあるので完全には記憶は消えないのだと説明されています)。自分が人間を殺したのは自分のせいなのか、あるいは外部から操られた等の他の要因によるものなのか? これが『弊機』にとって消せない傷として残り続けているのです。
記憶を消された『弊機』は、再び保険会社の業務としてメンサー博士が率いる調査隊の警備の仕事に就くのですがこれが上巻第一話の『システムの危殆』です。
この事件の後、メンサー博士は『弊機』を保険会社から買い取ってくれるのですが、『弊機』はメンサー博士のもとから逃亡し、自分が人間を殺した原因を突き止めるための旅に出ます(第二話『人工的なあり方』)。
この第二話で、『ネットワーク・エフェクト』にも登場するARTというAI知性を備えた宇宙船と出会います。ARTというのは『弊機』が勝手に名付けた名前で、『不愉快千万な調査船』(アスホール・リサーチ・トランスポート)の略であります(女性的な言葉づかいで描かれる超優秀な船ですよ)。
このARTと『弊機』の掛け合いも読みどころの一つです。
『弊機』は、暴走した殺人ボットという過去があるので、自分がコントロールされる危険を排除するために自ら統制モジュールを切断しており、自分の意思で行動できるようになっています。また、『弊機』は、どうも対人恐怖症的に人間と接するのが苦手のようで、自分の殻に閉じこもりがちです。閉じこもって何をしているかというと、彼(巻末解説を読んだら『彼女』と表記されていた! 女性設定なの? 男性とばかり思って読んでいましたよ。……まあ、この作品では性差はあまり意味がないようですが……)はドラマが大好きで、自分のメモリーに大量にダウンロードしたTV連続ドラマなんかに耽溺しているのです。
この辺りのキャラ設定が抜群に上手く、ユーモラスな語り口もあって非常に面白い作品に仕上がっていると思います。機械から見た人間社会という視点も活きています。
実はこのシリーズ、存在は大分前から知ってはいたのですが、表紙絵がちょっとね~(アニメ調というか、ラノベっぽいというか)。なので表紙絵からのイメージで敬して遠ざけていたのですが、「面白い!」という評判をあちこちで目にし、ちょっと読んでみようかなと思い、第二作を読んだら見事にハマってしまいました。
いや、本当に面白いんですってばさ! アクション部分も秀逸で、警備ユニットの機能を活かしてセキュリティなどを次々とハッキングし、プログラムを書き換えるなどしてミッションを遂行し、いざという時には両腕に仕込んだエネルギー銃も使っての大活躍です。
その端々に「だから人間というのは……」というシニカル(でもユーモラス)なボットならではの視点が活かされているのです。
大変おススメできるシリーズなので、是非本作から読み進めてみてください。さあ、私もせっかく買ってくれた最新作を図書館から借りて来るぞ~。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
1 マーダーボット・ダイアリー(上)(本作)
2 マーダーボット・ダイアリー(下)
3 ネットワーク・エフェクト
4 逃亡テレメトリー
5 システム・クラッシュ
本作には、四編(上下巻に二編ずつ)の連作短編が収録されているのですが、シリーズ第一作ということで、物語の設定、背景などは本作から読んだ方がずっと分かり易いです。主人公は保険会社が所有しているアンドロイド(?)です。警備用に作られている警備ユニット。日記風に一人称で語られるのですが、自分の事は『弊機』と呼んでいます。
『弊機』は、ボットと言えども完全な機械ではなく、有機組織部品と非有機組織部品の混合で作られています。外見もほぼほぼ人間に見えるのです。こうなるとサイボーグか? とも思えるのですが、有機組織部品もオリジナルの人体を活かしているというのではなく、クローン増殖させた有機組織を使っているようです。
実は、『弊機』にはトラウマがあったのです。あるミッション遂行中に多数の人間を殺してしまったという……。その結果、『弊機』は所有者である保険会社に回収されて記憶を消されてしまいました(機械的なメモリーは消去されますが、有機的な脳もあるので完全には記憶は消えないのだと説明されています)。自分が人間を殺したのは自分のせいなのか、あるいは外部から操られた等の他の要因によるものなのか? これが『弊機』にとって消せない傷として残り続けているのです。
記憶を消された『弊機』は、再び保険会社の業務としてメンサー博士が率いる調査隊の警備の仕事に就くのですがこれが上巻第一話の『システムの危殆』です。
この事件の後、メンサー博士は『弊機』を保険会社から買い取ってくれるのですが、『弊機』はメンサー博士のもとから逃亡し、自分が人間を殺した原因を突き止めるための旅に出ます(第二話『人工的なあり方』)。
この第二話で、『ネットワーク・エフェクト』にも登場するARTというAI知性を備えた宇宙船と出会います。ARTというのは『弊機』が勝手に名付けた名前で、『不愉快千万な調査船』(アスホール・リサーチ・トランスポート)の略であります(女性的な言葉づかいで描かれる超優秀な船ですよ)。
このARTと『弊機』の掛け合いも読みどころの一つです。
『弊機』は、暴走した殺人ボットという過去があるので、自分がコントロールされる危険を排除するために自ら統制モジュールを切断しており、自分の意思で行動できるようになっています。また、『弊機』は、どうも対人恐怖症的に人間と接するのが苦手のようで、自分の殻に閉じこもりがちです。閉じこもって何をしているかというと、彼(巻末解説を読んだら『彼女』と表記されていた! 女性設定なの? 男性とばかり思って読んでいましたよ。……まあ、この作品では性差はあまり意味がないようですが……)はドラマが大好きで、自分のメモリーに大量にダウンロードしたTV連続ドラマなんかに耽溺しているのです。
この辺りのキャラ設定が抜群に上手く、ユーモラスな語り口もあって非常に面白い作品に仕上がっていると思います。機械から見た人間社会という視点も活きています。
実はこのシリーズ、存在は大分前から知ってはいたのですが、表紙絵がちょっとね~(アニメ調というか、ラノベっぽいというか)。なので表紙絵からのイメージで敬して遠ざけていたのですが、「面白い!」という評判をあちこちで目にし、ちょっと読んでみようかなと思い、第二作を読んだら見事にハマってしまいました。
いや、本当に面白いんですってばさ! アクション部分も秀逸で、警備ユニットの機能を活かしてセキュリティなどを次々とハッキングし、プログラムを書き換えるなどしてミッションを遂行し、いざという時には両腕に仕込んだエネルギー銃も使っての大活躍です。
その端々に「だから人間というのは……」というシニカル(でもユーモラス)なボットならではの視点が活かされているのです。
大変おススメできるシリーズなので、是非本作から読み進めてみてください。さあ、私もせっかく買ってくれた最新作を図書館から借りて来るぞ~。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
1 マーダーボット・ダイアリー(上)(本作)
2 マーダーボット・ダイアリー(下)
3 ネットワーク・エフェクト
4 逃亡テレメトリー
5 システム・クラッシュ
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:320
- ISBN:9784488780012
- 発売日:2019年12月11日
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