efさん
レビュアー:
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こりゃあとんでもない作品だ。ラストのイメージは圧巻です。
Yasuhiroさんの本書に関するレビューを拝読し、本書のことを知りました。
佐藤亜紀さんの 『鏡の影』 とのパクり問題があるということも、Yasuhiroさんのレビューで初めて知った次第です。
そういう曰く因縁がある作品ならば読んでみたいという好奇心から本書を読んでみました。
まず、読み始めてすぐにその文体に驚きました。
擬古文ではないのですが、文語調の独特の文体で、「これは途中から普通の文体になるのかな?」と思いながら読んでいたのですが、驚くべきことに全編この文体で通しているのですね。
こんな文体で書けてしまうことにまず驚きました。
物語は、中世のパリで神学を学んでいたドミニコ会の神学徒である主人公が、偶然入手した『ヘルメス選書』の不完全な写本に興味を抱いたことから始まります。
彼は、この写本は異端であるとは思うものの、その中に一片の真実が含まれていることは事実だと認め、頭から異端だとして否定するのではなく、正しい点は正しいと認めた上で矯正することこそ必要だと考えます。
そのためには完全な写本を手に入れなければならないと考えるのですが、当時のパリではそれは困難なことでした。
知人の修道士の話によればリヨンに行けば入手できるかもしれないということでしたので、リヨン司教の知遇を得て訪ねて行ったのです。
そうしたところ、司教が言うにはこの完全写本を入手するのであればフィレンツェまで行くべきだと言うのです。
そして、フィレンツェに行く途中にあるヴィェンヌの司教管区にある村に、錬金術を研究している者がいるので是非訪ねてみると良いと勧められるのです。
主人公は勧めに従ってその村に行き、錬金術をしているピエェルという男を訪ねたのです。
事前に聞いていた話では、ピエェルは不愛想な男で、村人とも付き合いは無く、訪ねていっても追い返されるのが関の山だろうということでしたが、主人公は家に入れてもらえたのです。
ただ、だからと言って何か話してくれるわけでもなく、ただ、ピエェルがやっている錬金術の仕事を見ていても追い出されないというに過ぎなかったのですが。
その後のあらすじははしょりますが、最終的にはアンドロギュヌスやら巨人やらまで登場することになり、ラストの描写はすこぶるビジュアルであり、圧巻なのです。
このイメージには参りました。
こんな作品を書いてしまえる力量には脱帽しました。
ただし、本書は決して読みやすい作品ではありません。
文体については冒頭に書いたとおりですが、それ以外にも非常に特殊な用字を使っており、見たことも無いような文字や読み方まで平気で出てきます。
それが一種独特の味になっていることは間違いないのですけれど。
難解と言えば難解な作品だろうと思います。
なお、パクり問題については私から何か言うべきことは無く、それぞれの立場からの言い分もあるのだろうとは思うのですが、少なくとも私が読んだ限りでは『鏡の影』のパクり作品とは感じられませんでした。
読了時間メーター
□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位)
佐藤亜紀さんの 『鏡の影』 とのパクり問題があるということも、Yasuhiroさんのレビューで初めて知った次第です。
そういう曰く因縁がある作品ならば読んでみたいという好奇心から本書を読んでみました。
まず、読み始めてすぐにその文体に驚きました。
擬古文ではないのですが、文語調の独特の文体で、「これは途中から普通の文体になるのかな?」と思いながら読んでいたのですが、驚くべきことに全編この文体で通しているのですね。
こんな文体で書けてしまうことにまず驚きました。
物語は、中世のパリで神学を学んでいたドミニコ会の神学徒である主人公が、偶然入手した『ヘルメス選書』の不完全な写本に興味を抱いたことから始まります。
彼は、この写本は異端であるとは思うものの、その中に一片の真実が含まれていることは事実だと認め、頭から異端だとして否定するのではなく、正しい点は正しいと認めた上で矯正することこそ必要だと考えます。
そのためには完全な写本を手に入れなければならないと考えるのですが、当時のパリではそれは困難なことでした。
知人の修道士の話によればリヨンに行けば入手できるかもしれないということでしたので、リヨン司教の知遇を得て訪ねて行ったのです。
そうしたところ、司教が言うにはこの完全写本を入手するのであればフィレンツェまで行くべきだと言うのです。
そして、フィレンツェに行く途中にあるヴィェンヌの司教管区にある村に、錬金術を研究している者がいるので是非訪ねてみると良いと勧められるのです。
主人公は勧めに従ってその村に行き、錬金術をしているピエェルという男を訪ねたのです。
事前に聞いていた話では、ピエェルは不愛想な男で、村人とも付き合いは無く、訪ねていっても追い返されるのが関の山だろうということでしたが、主人公は家に入れてもらえたのです。
ただ、だからと言って何か話してくれるわけでもなく、ただ、ピエェルがやっている錬金術の仕事を見ていても追い出されないというに過ぎなかったのですが。
その後のあらすじははしょりますが、最終的にはアンドロギュヌスやら巨人やらまで登場することになり、ラストの描写はすこぶるビジュアルであり、圧巻なのです。
このイメージには参りました。
こんな作品を書いてしまえる力量には脱帽しました。
ただし、本書は決して読みやすい作品ではありません。
文体については冒頭に書いたとおりですが、それ以外にも非常に特殊な用字を使っており、見たことも無いような文字や読み方まで平気で出てきます。
それが一種独特の味になっていることは間違いないのですけれど。
難解と言えば難解な作品だろうと思います。
なお、パクり問題については私から何か言うべきことは無く、それぞれの立場からの言い分もあるのだろうとは思うのですが、少なくとも私が読んだ限りでは『鏡の影』のパクり作品とは感じられませんでした。
読了時間メーター
□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位)
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:新潮社
- ページ数:189
- ISBN:9784104260010
- 発売日:1998年10月01日
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