ぷるーとさん
レビュアー:
▼
スイスの森に潜む孤独と危うさ。
『誰もいないホテルで』は、友人に紹介されたホテルが閉鎖されているとは知らずにやってきた語り手と、どうやら勝手にそのホテルに住み着いていたらしい女性との束の間の交流を描いている。
アナと名乗ったその女性は、いったいどうしてそんなホテルに一人で住んでいたのか、なんとも謎な作品。
『森にて』のアーニャは、三年間森の中で暮らした。周囲の人々は、その理由を、実家がめちゃくちゃだったから、両親がアルコール中毒で粗暴だったから、二人とも何日も行方不明になったから、と考えたが、彼女自身は、逃げたのではなく何かを目指していったのだった。
このアーニャが、閉鎖したホテルを一時住まいとし、閉鎖されているとも知らずに電話をかけてきた執筆家に営業しているかのように答えて、まんまと宿泊費を受け取ったのだろうか?
10の短編のほとんどが、スイスのボーデン湖に接する地方を舞台としている。その地に住む者、その地にやってきた者。彼らは、楽しいことなどないかのように、どこか諦めたような眼差しをしている。いつもと変わらない日々、それは、不穏ささえ感じさせる。そして、不意に、奇妙な出来事が、それまでの暮らしを一変させる。
救いのない話は、満たされない思いと読んでいく端から壊れていきそうな脆さの中で危うく成り立っている。スイスという美しくも孤立した土地が、その危うさをいっそう引きたてている。
アナと名乗ったその女性は、いったいどうしてそんなホテルに一人で住んでいたのか、なんとも謎な作品。
『森にて』のアーニャは、三年間森の中で暮らした。周囲の人々は、その理由を、実家がめちゃくちゃだったから、両親がアルコール中毒で粗暴だったから、二人とも何日も行方不明になったから、と考えたが、彼女自身は、逃げたのではなく何かを目指していったのだった。
このアーニャが、閉鎖したホテルを一時住まいとし、閉鎖されているとも知らずに電話をかけてきた執筆家に営業しているかのように答えて、まんまと宿泊費を受け取ったのだろうか?
10の短編のほとんどが、スイスのボーデン湖に接する地方を舞台としている。その地に住む者、その地にやってきた者。彼らは、楽しいことなどないかのように、どこか諦めたような眼差しをしている。いつもと変わらない日々、それは、不穏ささえ感じさせる。そして、不意に、奇妙な出来事が、それまでの暮らしを一変させる。
救いのない話は、満たされない思いと読んでいく端から壊れていきそうな脆さの中で危うく成り立っている。スイスという美しくも孤立した土地が、その危うさをいっそう引きたてている。
お気に入り度:





掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
よろしくお願いします。
この書評へのコメント
コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:新潮社
- ページ数:187
- ISBN:9784105901288
- 発売日:2016年07月29日
- 価格:1836円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。