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ぷるーと
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スイスの森に潜む孤独と危うさ。
『誰もいないホテルで』は、友人に紹介されたホテルが閉鎖されているとは知らずにやってきた語り手と、どうやら勝手にそのホテルに住み着いていたらしい女性との束の間の交流を描いている。
アナと名乗ったその女性は、いったいどうしてそんなホテルに一人で住んでいたのか、なんとも謎な作品。

『森にて』のアーニャは、三年間森の中で暮らした。周囲の人々は、その理由を、実家がめちゃくちゃだったから、両親がアルコール中毒で粗暴だったから、二人とも何日も行方不明になったから、と考えたが、彼女自身は、逃げたのではなく何かを目指していったのだった。
このアーニャが、閉鎖したホテルを一時住まいとし、閉鎖されているとも知らずに電話をかけてきた執筆家に営業しているかのように答えて、まんまと宿泊費を受け取ったのだろうか?

10の短編のほとんどが、スイスのボーデン湖に接する地方を舞台としている。その地に住む者、その地にやってきた者。彼らは、楽しいことなどないかのように、どこか諦めたような眼差しをしている。いつもと変わらない日々、それは、不穏ささえ感じさせる。そして、不意に、奇妙な出来事が、それまでの暮らしを一変させる。

救いのない話は、満たされない思いと読んでいく端から壊れていきそうな脆さの中で危うく成り立っている。スイスという美しくも孤立した土地が、その危うさをいっそう引きたてている。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2924 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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