星落秋風五丈原さん
レビュアー:
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帝国の探偵の得意技は スキャンダルのもみ消し!
探偵は事件を未然に防いでこそというのなら、本編の主人公であるダゴベルト・トロストラーは合格だ。ただシャーロック・ホームズのような名探偵を想像すると肩透かしを食らう。彼がやっていることは、ほとんどがやんごとなき身分の人達のスキャンダルのもみ消し&恐喝対応だからだ。だから派手な逃走劇とは無縁で、殆どが“実はこういう話だったんですよ”と後から語られるパターンになる。ホームズと同じく無能な警察が出て来るが、ダゴベルトをてこずらせるような強敵は出てこない。
舞台となる街も霧の町にして女王が君臨するロンドンと、ハプスブルグ帝国の都ウィーンという町が持っている雰囲気の違いがある。ロンドンならばベーカー街B221でニコチン中毒のシャーロックがタバコをふかしながら語る顛末は、ダゴベルトの友人で紡績工場の所有者&銀行頭取他多くの肩書を持つアンドレアス・グルムバッハ邸にて、食後のシュヴァルツァー(チョコレート)を嗜みながらユーガに語られる。艶っぽい話は依頼話の中にはあるが、トロストラー自身はグルムバッハの二十歳ほども若い妻ヴィオレットにプラトニックな愛情を抱いている。当初二人の結婚に反対だったとの描写もあるので動機は推して知るべし。表紙からではわからないが、ダゴベルトの髪型は“使徒ペテロ風”らしい。つまりわずかな前髪以外はすっかり剃っている。元女優で才気煥発なヴィオレットの頼みならば何でも聞いてしまうダゴベルトに萌え要素あり。
召使がいる間は事件の事は一切話さないというルールが徹底している。身分制度は厳然とあり、貴族の子弟を救うためには平民の死は顧みられないという、現代感覚からすれば受け入れがたい展開もある。ホームズのライバルとも呼ばれる彼の推理の原動力はデータベースだ。何せ警察よりも信頼されているらしいので、犯罪関係のデータベースにもアクセスし放題。こちらも現代感覚で言うと「個人情報だだ漏れじゃん!」と抗議したくなる。
『上等の葉巻』『大粒のルビー』『恐ろしい手紙』『特別な事件』『ダゴベルト休暇中の仕事』『ある逮捕』『公使夫人の首飾り』『首相邸のレセプション』『ダゴベルトの不本意な旅』収録。
舞台となる街も霧の町にして女王が君臨するロンドンと、ハプスブルグ帝国の都ウィーンという町が持っている雰囲気の違いがある。ロンドンならばベーカー街B221でニコチン中毒のシャーロックがタバコをふかしながら語る顛末は、ダゴベルトの友人で紡績工場の所有者&銀行頭取他多くの肩書を持つアンドレアス・グルムバッハ邸にて、食後のシュヴァルツァー(チョコレート)を嗜みながらユーガに語られる。艶っぽい話は依頼話の中にはあるが、トロストラー自身はグルムバッハの二十歳ほども若い妻ヴィオレットにプラトニックな愛情を抱いている。当初二人の結婚に反対だったとの描写もあるので動機は推して知るべし。表紙からではわからないが、ダゴベルトの髪型は“使徒ペテロ風”らしい。つまりわずかな前髪以外はすっかり剃っている。元女優で才気煥発なヴィオレットの頼みならば何でも聞いてしまうダゴベルトに萌え要素あり。
召使がいる間は事件の事は一切話さないというルールが徹底している。身分制度は厳然とあり、貴族の子弟を救うためには平民の死は顧みられないという、現代感覚からすれば受け入れがたい展開もある。ホームズのライバルとも呼ばれる彼の推理の原動力はデータベースだ。何せ警察よりも信頼されているらしいので、犯罪関係のデータベースにもアクセスし放題。こちらも現代感覚で言うと「個人情報だだ漏れじゃん!」と抗議したくなる。
『上等の葉巻』『大粒のルビー』『恐ろしい手紙』『特別な事件』『ダゴベルト休暇中の仕事』『ある逮捕』『公使夫人の首飾り』『首相邸のレセプション』『ダゴベルトの不本意な旅』収録。
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2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:374
- ISBN:9784488293055
- 発売日:2013年04月20日
- 価格:1155円
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