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efさん
ef
レビュアー:
この世界と隣り合ったもうひとつの世界
 随分昔に読了して、当然レビューも書いていると思い込んでいたのに書いていなかった!
 あれ?そうだっけ?と思い、再読してみました。
 その結果、「あー、だからレビュー書いていなかった(書けなかった)んだ」と了解しました。

 物語は主人公の男性が雪が降り続くプラハの古書店で菫色の本を買うところから始まります。
 この本、知らない文字で書かれていて読めないんです。
 それでも何故か気になってしまいこの本を買って帰るんですね。
 自分はこれまでにもどこかにつながっていると思われる新しい扉に気付いていながら、それを素通りしてきたことが何度もあった。
 今度もこの本を書棚に戻して書店を出ることはたやすいけれど……。
 今度こそはこれまでのそういう生き方をやめようと思い、この菫色の本を買って帰ったのです。

 家に戻り、じっくりとこの本を調べていくうちにどんどんこの本に取りつかれていきます。
 どんな本なのか、何が書いてあるのか知りたいと思い、図書館司書を訪ねこの本の事を聞いたりします。
 その後、どんどんのめり込んでいき、色々な人から『もうひとつの街』に関して断片的な話を聞くようになっていきます。
 そして、少しずつ『もうひとつの街』に入り込んでいくのです。

 ただ……、登場する人たちの話は非常に不条理で、また、一体何を話しているのかよく分かりません。
 主人公自身の思考も、ある事を考えていたはずなのにそれがどんどん移ろって行き、結局何を考えているのか読者には分からなくなってしまいます。

 ここがこの作品の肝だろうと思うのですが、全編にわたりこのような不条理で、私たちの常識からすれば何を語っているのかよく理解できない、詩のようだと言えばそうとも言えるような描写が続くのです。
 だから決して読みやすくはありません。
 これを魅力的と思える読者はこの作品が好きだと言うでしょうし、ちょっと何書いているのか分からないと感じる読者は何なのこの作品はって思う事でしょう。

 どうやら、私たちの世界ともう一つの別の世界は隣接して存在している、あるいは互いに侵入し合っているようです。
 主人公は別の世界、もうひとつの街に入り込み、そこで空を飛び、サメと格闘し、エイの背に乗って空高く滑空し、見上げるような雲の彫像を目にします。
 幻想的と言えばすこぶる幻想的。
 ただ、多くのファンタジー作品のようなはっきりとした筋道だったり、展開は期待できません。

 主人公はもうひとつの街の中心を目指して別世界を彷徨うのですが、それが何のためなのか、何を求めてのことなのかは今一つ読者には分からない。
 なぜ、そんなにも執着していくのか、その心情は分からないように思えます。
 そういう合理性は問題ではないのだとして、主人公と共にこの不可解なもうひとつの街を歩き続けるか、ちょっとついていけないなぁと感じてしまうかが分かれ道のように思えます。

 こういう作品ですから、レビューを書こうったって書きにくいこと。
 だから初読の時には書けなかったんだと腑に落ちました。
 いえ、今回なんとか書こうとしているこのレビューだって「何を書いているんだ?」と思われる方が多いかもしれません。
 どういう作品なのかが少しでも書けていれば良いのですけれど……。
 200ページほどの、さほど厚くもない本なのに、読み切るには予想以上に時間がかかってしまいました。


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ef
ef さん本が好き!1級(書評数:4910 件)

幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!

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