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たけぞう
レビュアー:
有名な一人芝居の台本を読んでみた。
イッセー尾形さんの一人芝居は有名です。
以前、TVでちょっとだけ見たことがあります。
台本が文庫本になっていたのを見つけ、読んでみました。

台本形式の文学を戯曲といいますが、あらためて考えると不思議な熟語ですね。
曲と戯れるですから。歌舞伎や浄瑠璃などの伝統と関係があるかもしれませんね。
なんて、テキトーを書いてみました。

井上ひさし作品で戯曲の面白さを教えてもらい、たまに読むことがあります。
公演機会が限られているから舞台をしょっちゅう見に行くことはできませんが、
戯曲であれば手軽です。
舞台のライブ感、迫力、生命力はとても好きです。
戯曲を読むと、そんな舞台の空気が自分の中に立ち上がってくる感覚があります。
それが戯曲の魅力だと思っています。

全部で十三本の戯曲です。
ひと公演が二時間くらいなので、一本あたり三十分ちょっとでしょうか。
イッセー尾形さんの舞台は年に数回とのことなので、プラチナチケットですね。
まして地方公演なんかありえないのですよ、ふう。
ま、だからこその戯曲というわけで、などとぐるぐる考えてしまうのも、
この一冊の影響だったりするのかなどと、うだうだ書いておりますが。

それにしても主役がしゃべるしゃべる。
場面展開がなく、掛け合いも相手の反応しか分からないから、
ものすごく限定されているのです。
一作品ごとに一場面の写真があるのですが、セットはパイプ椅子だけですね。
あとは衣装が違うぐらいです。演じるハードルの高さを感じます。

主役は、ままならない状況で空回りばかりしています。
人間が個人で考えることなんてたかがしれています。
気になるのは身の回りの些末なことばかり。
他人にあれこれ言っても、自分の思い通りになんてなりません。
そんな日常生活のあれこれを、当意即妙のスピード感で
たたみかけるようにしゃべり倒していきます。

表題作のヘイ、タクシー。
タクシーが止まってくれないことってありますよね。
手を挙げるタイミングが遅い、追い越し車線を走っていて近づけない、
自分の前に他人が割り込んでくる。
ところがところが、何よりも重要なことがあります。
ネクタイを緩め、千鳥足でぶっ倒れそうになりながら、
必死に手を振ろうともがいているサラリーマン。
いや、それでは無理だろうと思っちゃいますね。

しかし自らの失態を省みず、タクシーに毒づく姿に
人間の本質を見せられている気がするんですね。

このサラリーマンが深みにはまっていくのは、
人生の暗示に通じるものがあるのですが、
深読みしないでぽんっと笑っちゃうのがいい楽しみ方の気がします。

こんな芝居のチケットを入手できる人がうらやましいですね。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

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