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DBさん
DB
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天文学者の発見した星の本
タイトルが印象的で読んでみたくなりました。
発見されてから太陽系の第九惑星とされていた冥王星が、太陽系の惑星からはずされたのは2006年だ。
そのニュースを聞いたときに、ホルストの「惑星」通りになったんだと思った記憶がある。
同じ時期にカイパーベルトの話も知って太陽系の果てはどこにあるんだろうと思ったりもしたが、謎を追求することなく今に至る。
本書では太陽系の惑星を専門に研究する天文学者が、カイパーベルトに含まれる新たな太陽系外辺天体を発見し、それが第十の惑星となるのかという論争を引き起こした顛末を語っています。
それと同時に自らの結婚や娘の誕生といった人生についても書かれていて、天文学者の日常を垣間見ることもできる。

冥王星が「死んだ」のは、2006年8月25日、プラハの国際天文学連合の総会での議決によるものだった。
本書はそれより数年さかのぼり、1999年冬のカリフォルニア州サンディエゴのパロマー天文台からはじまります。
せっかく望遠鏡の過密スケジュールの枠がとれたのに霧に覆われてしまって望遠鏡を使えないという夜に同僚と雑談していた時のこと。
「最近、興味を持っていることは何かないの?」と問われ「冥王星の外側にもうひとつ惑星があるんじゃないかと思う」と答えた。

そこから太陽系の新たな惑星を求める探索が始まります。
そもそも惑星といえば夜空の星よりも、イラストで描かれた太陽系の惑星が思い浮かびます。
昔は同じパターンで固定されて動く星空の中で、さまよっているかのように移動していく星が惑星、古代ギリシア語で「さまよえる星」を意味する星だった。
肉眼で見える水星、金星、火星、木星、土星の五つに、天王星が加わったのは1781年のこと。
そして火星と木星の間にケレス、パラス、ジュノー、ベスタと見つかるが。それらの天体は小さすぎることから小惑星とされる。
海王星が見つかったのは1851年、そして問題の冥王星が発見されたのは1930年。

冥王星の果てにはさらなる惑星があるのではないかと、望遠鏡で空の広域を探し始めたブラウン博士はまずひたすら写真を撮る。
そして同じエリアを撮影した日付違いの写真を比べて、無数の星の中から動いているものを探すという作業を根気良くしていきます。
もちろんコンピューターを使うんだけど、そのプログラムは自分で作るという。
さすがカルテックというべきか、天文学者になるにはプログラマーにもならなければならないのかも。

ブラウン博士がカイパーベルトに第十の惑星かもしれない天体を見つけたのは、彼が恋人にプロポーズした週だった。
しかもカルテックの終身在職権も同じ週にとったということで、幸せずくめの週だったようです。
だがこの時発見されて後にクワオアーと名付けられた天体は、月よりも小さい冥王星の半分くらいの大きさだった。
さらにセドナ、ハウメア、エリス、マケマケといった太陽系の天体を発見していきます。

後に正式にエリスと命名された天体は最初ジーナというコードネームだったけど、このジーナが第十の惑星となるのか、それとも冥王星と同じくカイパーベルト天体となってしまうのかを決めたのがプラハの会議だった。
しかも第十惑星を発見したとして名が残るはずのブラウン博士が、冥王星を惑星から引きずり降ろそうとしているということが学者仲間には受けたようだ。
名誉よりも正確な事実通りにしたいという一途さが見える。

アマチュア天文学者にからまれたり、天体発見の名誉をスペインの学者に奪われたりと天文学内での騒動も率直に書かれていた。
学者として太陽系に真剣に向き合うのと並行して、初めての娘の誕生と成長にも学者らしい几帳面さで向き合っています。
赤ん坊のミルクと睡眠の時間をグラフ化してみようなんて父親が学者以外にいるとは思えない。
博士のような人たちの業績が積み重なって、宇宙の地図もまた更新されていくんだろうと思いました。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2031 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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