かもめ通信さん
レビュアー:
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あらやだこんな面白い本、いままで読んだことがなかっただなんて! 祝 #岩波少年文庫 #創刊70周年
祝 #岩波少年文庫 #創刊70周年 読書会に参加すべく、どの本を読もうかと図書館棚の前で悩んでいたとき、ぼんやりと記憶の端に残っているような気がする本が目にとまって思わず手を伸ばした。
それはこの本ではなくて、この本の隣に並んでいた同じ作者&訳者の『風の妖精たち』という本だった。
確認してみたところ、この作家の作品は全部で3冊(いずれも短篇集)があるのだが、最初に翻訳刊行されたのが、1979年初版の『風の妖精たち』で、その後時を経て、1996年に『フィオリモンド姫の首かざり』、1997年に本書が翻訳されたとのことだから、私が子どもの頃、日本語で読むことができたのは『風の妖精たち』しかなかったということのようだ。
但し、作品の発表順で言うと、本書、フィオリモンド、風の…という順だというから、どういう事情からか、日本語版刊行は遡っていったことになる。
翻訳者である矢川澄子の解説によると、作者のメアリ・ド・モーガンは、1850年生まれ、父親は「ド・モルガンの法則」で知られる数学者で、兄のウィリアムを通じて、ウィリアム・モリスやロゼッティ兄妹とも深い親交があり、話し上手として知られた彼女の語る物語を聞きに集まった面々の中には、画家のバーン=ジョーンズの子どもたちや、のちに『ジャングル・ブック』を書いたキプリング少年もいたのだとか。
そんなわけで『針さしの物語』、早速読んでみることに。
表題は巻頭に収録された三篇からなる連続短編から取られている。
他のみんなが出払ったあと、針さしに居合わせた、めのうのブローチと黒玉のショール・ピンとただの留め針が、気晴らしにお互いが昔見聞きした物語を語り合うという趣向。
めのうのブローチが語るのは、ご本人がまだカットも磨きもされずに転がっていた頃、そこでおきたという、自分の美しさに酔いしれる若い乙女の物語。
ショール・ピンが語るのは、昔よくインドのスカーフを留めるのに使われていた頃に仕入れたという「愛の種」の物語。
留め針が語るのは、知り合いのオパールの指輪から聞いたオパールがどうしてあんなに素敵な色なのかその秘密を明かす物語だ。
この「針さしの物語」の他に、さらわれた仲良しの女の子を助けるために靴屋の少年が奮闘する話や、美しい髪が自慢のお妃が呪いによって毛髪を失い、その髪を取り戻すための「髪の木の種」をもとめて貧しい青年が旅をする物語、感情を表に出さないことが礼儀とされる国に生まれたお姫さまが、妖精によって人形とすり替えられる話や、炎の国の王女と水の国の王子が恋に落ちる話と、全部で7つの物語が収録されている。
“クラシックで幻想的な短篇集”というウリではあるが、伝承文学にありがちな残酷さや、おとぎ話によくあるような教訓めいた説教臭さはあまりなく、大方の予想をほんのちょっとずらしたような結末が面白い。
“針さし”の三篇以外の作品に登場する女の子たち(人間であったり妖精であったりという違いはあるが)が、良くも悪くも能動的に動き回る様が読んでいて気持ちが良くもあった。
兄のウィリアム・ド・モーガンの手による挿絵も必見だ。
それはこの本ではなくて、この本の隣に並んでいた同じ作者&訳者の『風の妖精たち』という本だった。
確認してみたところ、この作家の作品は全部で3冊(いずれも短篇集)があるのだが、最初に翻訳刊行されたのが、1979年初版の『風の妖精たち』で、その後時を経て、1996年に『フィオリモンド姫の首かざり』、1997年に本書が翻訳されたとのことだから、私が子どもの頃、日本語で読むことができたのは『風の妖精たち』しかなかったということのようだ。
但し、作品の発表順で言うと、本書、フィオリモンド、風の…という順だというから、どういう事情からか、日本語版刊行は遡っていったことになる。
翻訳者である矢川澄子の解説によると、作者のメアリ・ド・モーガンは、1850年生まれ、父親は「ド・モルガンの法則」で知られる数学者で、兄のウィリアムを通じて、ウィリアム・モリスやロゼッティ兄妹とも深い親交があり、話し上手として知られた彼女の語る物語を聞きに集まった面々の中には、画家のバーン=ジョーンズの子どもたちや、のちに『ジャングル・ブック』を書いたキプリング少年もいたのだとか。
そんなわけで『針さしの物語』、早速読んでみることに。
表題は巻頭に収録された三篇からなる連続短編から取られている。
他のみんなが出払ったあと、針さしに居合わせた、めのうのブローチと黒玉のショール・ピンとただの留め針が、気晴らしにお互いが昔見聞きした物語を語り合うという趣向。
めのうのブローチが語るのは、ご本人がまだカットも磨きもされずに転がっていた頃、そこでおきたという、自分の美しさに酔いしれる若い乙女の物語。
ショール・ピンが語るのは、昔よくインドのスカーフを留めるのに使われていた頃に仕入れたという「愛の種」の物語。
留め針が語るのは、知り合いのオパールの指輪から聞いたオパールがどうしてあんなに素敵な色なのかその秘密を明かす物語だ。
この「針さしの物語」の他に、さらわれた仲良しの女の子を助けるために靴屋の少年が奮闘する話や、美しい髪が自慢のお妃が呪いによって毛髪を失い、その髪を取り戻すための「髪の木の種」をもとめて貧しい青年が旅をする物語、感情を表に出さないことが礼儀とされる国に生まれたお姫さまが、妖精によって人形とすり替えられる話や、炎の国の王女と水の国の王子が恋に落ちる話と、全部で7つの物語が収録されている。
“クラシックで幻想的な短篇集”というウリではあるが、伝承文学にありがちな残酷さや、おとぎ話によくあるような教訓めいた説教臭さはあまりなく、大方の予想をほんのちょっとずらしたような結末が面白い。
“針さし”の三篇以外の作品に登場する女の子たち(人間であったり妖精であったりという違いはあるが)が、良くも悪くも能動的に動き回る様が読んでいて気持ちが良くもあった。
兄のウィリアム・ド・モーガンの手による挿絵も必見だ。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:岩波書店
- ページ数:273
- ISBN:9784001121360
- 発売日:1997年10月15日
- 価格:672円
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