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DBさん
DB
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時を超えて読まれる物語
源氏物語が千年の時を超えて今でも読まれ続けているのはなぜだろう。
高貴な身分に美貌と才能、そして権力とすべてに恵まれた光の君を巡り様々な女たちが愛憎劇を繰り広げていく。
男女の関係は普遍ということなのか、王朝時代の豪華な雰囲気に惹かれるのか。
本作ではその源氏物語を現代向けにアレンジしたストーリーに仕立てて、光源氏の少年から青年になりかかるくらいの時期を描いています。

やはり存在感を放っているのは六条御息所だった。
高貴な身分に美貌、歌や文学の豊富な知識に琴の名手と才能あふれた女性だが、年下の恋人となった光源氏は自分を一番には想ってくれていない。
その理由を探るために登場するのが夕顔だった。
粗末な家に住み、全てを男に頼る寄る辺のない女がなぜ男の心をつかむのか。
どんなに身分の高い男でも、相手より優位に立ちたいという願望がそういう女に向かうのかもしれません。
しかもそういう男は正妻は身分の高い実家がしっかりした女を選ぶのだからたちが悪い。

この光源氏の話に加え、物語の作者の紫式部と藤原道長の交差する運命を絡ませて交互に話が進んでいきます。
中宮彰子に仕えることとなり、その父親で雇い主の道長にはいまだに亡くなった定子を忘れられない一条天皇の心を彰子に振り向かせるよう楽しめる物語を書くようにと命じられる。
父親の政治の駒として宮中に送り込まれた恋も知らない若い娘と、持てる力の全てを使ってさらなる権力を求める男の姿が描かれていた。

式部の世界では陰謀に呪詛とダークな世界もあり、安倍晴明や蘆谷道満も登場して百鬼夜行の怪異があったりと平安ロマンに浸れた。
そして雅やかな宮中の様子や賑やかな宴の様子が目に浮かぶかのように書かれた表現の緻密さが良かった。
若干耽美主義なのか、道長は光の君を思わせるような眉目秀麗さで、式部はもちろんなぜかまだ宮中に残っている清少納言も美女として描かれています。
夢は美しくあるべきということだろうか。

式部の源氏物語が千年以上経って今の時代に続いているのも、作中の人物や当時の生活を細かく書き上げながら美しいものを追う心の様や儚さが物語の中に流れているからかもしれない。
もう一度源氏物語を読んでみたいと思った。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2028 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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