ゆうちゃんさん
レビュアー:
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厄介ごとばかり引き起こす三人の大学生の後始末をしてくれるのがフランス人教授のモッキンポット師である。フランスのイメージである「洗練された」とは真逆な彼は、三人がどんな失敗をしても見捨てない。
井上ひさしのコメディ小説。
僕、小松がカナダ人宣教師の経営する孤児院からS大学文学部仏文科に無試験入学することになった。小松のいた孤児院は、カナダのケベック出身の修道士が経営しており、小松は日常会話程度のフランス語なら話せる。そして東京でのいわば身元保証人になったのがモッキンポット師である。モッキンポット師は甚だ風采の上がらない、目つきに険のある、天狗鼻のひどく汚ならしいフランス人のS大学教授で、おまけに流暢なやや下卑た関西弁を話す。
小松はモッキンポット師の口利きで、四谷二丁目のB放送の裏にある「聖パウロ学園」に入寮した。ここはとても怪し気な寮で、見た目が既に傾いている。そこで知り合ったのが寮長で東大医学部の土田、副寮長で教育大理工学部の日野だった。苦学生の小松は、最初はおじさんたちの草野球の手伝いから始め、次いでストリップ小屋の裏方のアルバイトをしてモッキンポット師に諭される。小松はなかなかそこを辞めないのだが、小松を説得するためにモッキンポット師がストリップ小屋に足しげく通うようになった。S大学では、次第に、モッキンポット師がストリップ小屋に通っていると言う噂が立ち、それが小松を慌てさせて彼はストリップ小屋のアルバイトを辞めた。次いで、金に困っているだろうとモッキンポット師が紹介したアルバイトがひよこの雌雄の選別である。ここから土田と日野も絡むようになり、ふたりが小松のアルバイトに口を出す。本屋での夜警、慈善団体の衣服の仕分け、B放送の清掃、果ては寮の隣の風呂屋が修繕で休業したのを良い機会に寮の風呂で銭湯を経営する。ひよこの選別は適当、本屋の夜警では隣のとんかつ屋の肉を盗む、慈善団体の衣服の仕分け中に衣服をちょろまかす。貸した寮の風呂に女性が入ると覗く。これらのアルバイトは、最後に大失敗して、首になるかダメになる。その時、いつも後始末をするのはモッキンポット師だった。
三人の悪戯のために、聖パウロ学寮は悪党の巣窟とされ廃寮になる。それでもモッキンポット師は、S大学の教授館、そこでも彼らが不祥事を起こして、次に聖ピーター学寮、と住処を紹介してゆく。モッキンポット師は、聖ピーター学寮でも不祥事を起こす三人の学生を遂に見放したかに見えたのだが・・・。
アルバイトの内容はともかく、学生の発想と実行があり得ない。それでも学生を庇うモッキンポット師は、まさに神である。その神が、「風采の上がらない、目つきに険のある、天狗鼻のひどく汚ならしい」と言う点が、井上ひさしの仕掛けだろうか。こう言う悪戯のネタは尽きそうで尽きないし、その失敗の原因の工夫もマンネリ化しない点がこの小説の面白いところ。小松が最初の方でするアルバイトが演劇であれば、実は本書の締めくくりも演劇である。これは著者の十八番だからか。演劇のおひねりに五百円札などが登場する、まさに古い昭和の小説なので、世代的な壁はあるかもしれないが50代以上なら楽しめる肩の凝らない小説である。関西弁のことを書くと関西の方に怒られそうだが、モッキンポット師のセリフも漫才のようで笑わせてくれる。
僕、小松がカナダ人宣教師の経営する孤児院からS大学文学部仏文科に無試験入学することになった。小松のいた孤児院は、カナダのケベック出身の修道士が経営しており、小松は日常会話程度のフランス語なら話せる。そして東京でのいわば身元保証人になったのがモッキンポット師である。モッキンポット師は甚だ風采の上がらない、目つきに険のある、天狗鼻のひどく汚ならしいフランス人のS大学教授で、おまけに流暢なやや下卑た関西弁を話す。
小松はモッキンポット師の口利きで、四谷二丁目のB放送の裏にある「聖パウロ学園」に入寮した。ここはとても怪し気な寮で、見た目が既に傾いている。そこで知り合ったのが寮長で東大医学部の土田、副寮長で教育大理工学部の日野だった。苦学生の小松は、最初はおじさんたちの草野球の手伝いから始め、次いでストリップ小屋の裏方のアルバイトをしてモッキンポット師に諭される。小松はなかなかそこを辞めないのだが、小松を説得するためにモッキンポット師がストリップ小屋に足しげく通うようになった。S大学では、次第に、モッキンポット師がストリップ小屋に通っていると言う噂が立ち、それが小松を慌てさせて彼はストリップ小屋のアルバイトを辞めた。次いで、金に困っているだろうとモッキンポット師が紹介したアルバイトがひよこの雌雄の選別である。ここから土田と日野も絡むようになり、ふたりが小松のアルバイトに口を出す。本屋での夜警、慈善団体の衣服の仕分け、B放送の清掃、果ては寮の隣の風呂屋が修繕で休業したのを良い機会に寮の風呂で銭湯を経営する。ひよこの選別は適当、本屋の夜警では隣のとんかつ屋の肉を盗む、慈善団体の衣服の仕分け中に衣服をちょろまかす。貸した寮の風呂に女性が入ると覗く。これらのアルバイトは、最後に大失敗して、首になるかダメになる。その時、いつも後始末をするのはモッキンポット師だった。
三人の悪戯のために、聖パウロ学寮は悪党の巣窟とされ廃寮になる。それでもモッキンポット師は、S大学の教授館、そこでも彼らが不祥事を起こして、次に聖ピーター学寮、と住処を紹介してゆく。モッキンポット師は、聖ピーター学寮でも不祥事を起こす三人の学生を遂に見放したかに見えたのだが・・・。
アルバイトの内容はともかく、学生の発想と実行があり得ない。それでも学生を庇うモッキンポット師は、まさに神である。その神が、「風采の上がらない、目つきに険のある、天狗鼻のひどく汚ならしい」と言う点が、井上ひさしの仕掛けだろうか。こう言う悪戯のネタは尽きそうで尽きないし、その失敗の原因の工夫もマンネリ化しない点がこの小説の面白いところ。小松が最初の方でするアルバイトが演劇であれば、実は本書の締めくくりも演劇である。これは著者の十八番だからか。演劇のおひねりに五百円札などが登場する、まさに古い昭和の小説なので、世代的な壁はあるかもしれないが50代以上なら楽しめる肩の凝らない小説である。関西弁のことを書くと関西の方に怒られそうだが、モッキンポット師のセリフも漫才のようで笑わせてくれる。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
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- 出版社:講談社
- ページ数:266
- ISBN:9784061312586
- 発売日:1974年06月26日
- 価格:520円
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