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かもめ通信
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仕事はあるし、毎日やらなきゃならないこまごまとしたこともあるし、ごたごたもごめんだし……やらないことの理由ならいくらでも挙げられるけれど…。 #はじめての海外文学
はじめての海外文学 vol.5 でフランス語の翻訳家永田千奈さんが推薦している本。
ページ数47。
どうやら大人のための絵本のようだとあたりをつけて読んでみた。

陽の光がふりそそぐビストロでコーヒーを飲みながら
語り手の「俺」が友人のシャルリーと二人、
とりとめのない話をしていた場面を回想することから始まる。

ああこれは、
ひと言ひと言噛みしめながら読んだ方がいい気がすると
声を出して読むことにした。

お互い頭に浮かんだことをただやりとりしていた。
それぞれ相手がしゃべる中身に
たいした注意を払っていなかった。
コーヒーをゆっくり味わいながら、
時の流れに身をゆだねておけばよい、心地よいひとときだ。


シャルリーが飼い犬を安楽死させなきゃならなかった
と言ったときにはさすがに驚いたが、ただそれだけだった。
犬もか…と。
先月、俺自身も猫を処分したばかりだったから。
白と黒のぶちなんて不幸な星のもとに生まれついた猫だったんだ。

動物は茶色にかぎる。
もっとも都市生活に適していて、
子どもを産みすぎず、えさもはるかに少なくてすむし
なにより丈夫だという話だし。

読みながらなにかがおかしいと感じつつ
そのなにかがはっきりとわからなくて心がざわつく。
なるほどそれが「茶色以外のペットは処分するように」という
法律によるものだと読者にもわかった後は
たたみかけるように次々と“俺”と友人シャルリーの身の回りで
「茶色」以外の存在が認められなくなっていく。

いやだと言うべきだったんだ。
抵抗すべきだったんだ。
でも、どうやって?
政府の動きはすばやかったし、
俺には仕事があるし、
毎日やらなきゃならないこまごまとしたことも多い。
他の人たちだって、
ごたごたはごめんだから、
おとなしくしているんじゃないか?


従っていればそんなにひどいことにならないだろう、
自分自身が危険にさらされているわけではないし。
心のどこかに引っかかるものがあっても、
日々のあれこれに追われて忘れてしまったり、
口に出したことで巻き起こるかもしれない煩わしいあれこれを思って
口をつぐんでしまったり……。

そういうことって、私にも
心あたりがありすぎるすぎる……。

そうなんだよね。
「茶色の朝」は、決して
ある日突然やってきたわけではなかったんだ。

図書館の閉架棚から引っ張り出して貰って借りてきた本だったが
「茶色い朝」を迎えないためにも
手元に置いておきたくなって購入することにした。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2233 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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参考になる:28票
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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2019-12-04 06:10

    タカラ~ムさん主催の読書会
    #はじめての海外文学 vol.5応援読書会
    https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no373/index.html?latest=20
    参加レビューです。

  2. ヤドリギ2019-12-04 08:25

    かもめ通信さんこんにちは。ヴィンセントギャロって、バッファロー66のギャロでしょうか⁈本も書いてるんですね、

  3. かもめ通信2019-12-04 09:00

    ヤドリギさんこんにちは!そうです。そうです。そのギャロが絵を描いています。
    挿絵というよりは画集のようにたっぷりと!
    小ぶりな本ではありますが,この絵もなかなか見応えがありますよ。

  4. ヤドリギ2019-12-04 09:33

    多才なんですね!

  5. かもめ通信2019-12-04 11:13

    ちなみに絵本仕立ては日本語版オリジナルだそうです。
    そのあたりのことは以前b-be-bさんがレビューで紹介されています。
    素晴らしいレビューなのでよかったらこちらもどうぞ。
    https://www.honzuki.jp/book/117917/review/103733/

  6. No Image

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