hackerさん
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1964年刊の短編小説の名手スタンリイ・エリン(1916-1986)の第二短編集です。オチに重点を置いているわけではない作風ですが、巻末の『倅の質問』は最後の一行アンソロジーの資格十分です。
『特別料理』が有名な作家で、もちろん印象的な作品ではあるのですが、エリンにはそれ以上にすぐれた作品が多々あることを証明する一冊です。作風の特徴としては、この手の作家としては珍しく、オチに必ずしも重きを置いていないという点が挙げられるでしょう。それよりも、現代社会に生きる人間たちの不思議な心理やタブーを語ることに熱心な作家のようです。本書には、10作品収められていますが、特に印象的なものを紹介します。
・『ブレシットン計画』
老人を自然死若しくは事故に見せかけて亡き者にすることにより、その家族の負担と心労を取り除くことを目標とする巨大慈善事業組織の話です。話そのものには意外性などないのですが、書かれた時代より、人間の寿命が延びた現在の方が、インパクトが強くなっているのが特徴です。
・『いつまでもねんねえじゃいられない』
夫の帰りを待ちながらも、先にベッドに入っていた若妻が、暗闇の中で男に顔を殴られ、暴行されます。そして犯人の顔や姿がほとんど見えなかった彼女ですが、警察や夫から、犯人を特定するようにプレッシャーを受けるようになります。
現代的とも言えるヒロインの苦悩よりも、いかに冤罪が作られるのか、といった主旨の話になっているところが興味深いです。
・『不当な疑惑』
長期休暇に出かける電車の中で、狸寝入りをしていた主人公は、隣に坐っていた男が語る、ある殺人事件の話に、秘かに耳を傾けていました。ある田舎町一の大金持ちが殺された事件で、二人いる甥かつ相続人の一人ベンが犯行を否定しなかったので、逮捕され、裁判にかけられます。ところが、もう一人の甥オーヴィルが証言台に立ち、自分の犯行だと明言したうえで、犯行の様子をこと細かに話します。当然、ベンは無罪となり、今度はオーヴィルの裁判が開かれます。その裁判では、ベンが証言台に立ち、自分の犯行だと主張し、結果オーヴィルも無罪となります。ところが、この話はこれで終わらなくて、という展開です。
しかし、この終わり方は予想できませんでした。かと言って、オチがあるわけではありません。念のため。
・『運命の日』
ある朝、新聞に「マフィアのボス殺される」という見出しと共に写っていたのは、イニェース・コヴァックという、12歳まで隣の家に住んでいて、「私」の大の親友だった男の無残な姿でした。そして「私」は堅物で正義漢だったイニェースが、悪の道に踏み込むきっかけとなった、ある事件を思い出すのでした。
これもオチのない話ですが、語り口が上手い!納得できるエンディングが待っています。
・『倅の質問』
「私」は、父親の仕事を受け継いで、電気椅子係、つまり電気椅子による死刑執行人を副業としていました。父親がそうだったように、家族にはこの仕事のことは秘密にしていましたが、やはり父親がそうだったように、60歳になった時、息子にこのことを打ち明けます。息子も、当然この仕事を受け継いでくれるものと思っていた「私」ですが、息子の発した、ある質問に愕然とします。その質問とは?
いや、これは傑作!同時に、すごく怖い話でもあります。本書の中では、間違いなくベストです。
ここで紹介しなかった他の収録作にも、凡作、駄作というようなものは一つもありません。さすがです。いわゆる「奇妙な味」がお好きな方には、自信をもって、お勧めします。
・『ブレシットン計画』
老人を自然死若しくは事故に見せかけて亡き者にすることにより、その家族の負担と心労を取り除くことを目標とする巨大慈善事業組織の話です。話そのものには意外性などないのですが、書かれた時代より、人間の寿命が延びた現在の方が、インパクトが強くなっているのが特徴です。
・『いつまでもねんねえじゃいられない』
夫の帰りを待ちながらも、先にベッドに入っていた若妻が、暗闇の中で男に顔を殴られ、暴行されます。そして犯人の顔や姿がほとんど見えなかった彼女ですが、警察や夫から、犯人を特定するようにプレッシャーを受けるようになります。
現代的とも言えるヒロインの苦悩よりも、いかに冤罪が作られるのか、といった主旨の話になっているところが興味深いです。
・『不当な疑惑』
長期休暇に出かける電車の中で、狸寝入りをしていた主人公は、隣に坐っていた男が語る、ある殺人事件の話に、秘かに耳を傾けていました。ある田舎町一の大金持ちが殺された事件で、二人いる甥かつ相続人の一人ベンが犯行を否定しなかったので、逮捕され、裁判にかけられます。ところが、もう一人の甥オーヴィルが証言台に立ち、自分の犯行だと明言したうえで、犯行の様子をこと細かに話します。当然、ベンは無罪となり、今度はオーヴィルの裁判が開かれます。その裁判では、ベンが証言台に立ち、自分の犯行だと主張し、結果オーヴィルも無罪となります。ところが、この話はこれで終わらなくて、という展開です。
しかし、この終わり方は予想できませんでした。かと言って、オチがあるわけではありません。念のため。
・『運命の日』
ある朝、新聞に「マフィアのボス殺される」という見出しと共に写っていたのは、イニェース・コヴァックという、12歳まで隣の家に住んでいて、「私」の大の親友だった男の無残な姿でした。そして「私」は堅物で正義漢だったイニェースが、悪の道に踏み込むきっかけとなった、ある事件を思い出すのでした。
これもオチのない話ですが、語り口が上手い!納得できるエンディングが待っています。
・『倅の質問』
「私」は、父親の仕事を受け継いで、電気椅子係、つまり電気椅子による死刑執行人を副業としていました。父親がそうだったように、家族にはこの仕事のことは秘密にしていましたが、やはり父親がそうだったように、60歳になった時、息子にこのことを打ち明けます。息子も、当然この仕事を受け継いでくれるものと思っていた「私」ですが、息子の発した、ある質問に愕然とします。その質問とは?
いや、これは傑作!同時に、すごく怖い話でもあります。本書の中では、間違いなくベストです。
ここで紹介しなかった他の収録作にも、凡作、駄作というようなものは一つもありません。さすがです。いわゆる「奇妙な味」がお好きな方には、自信をもって、お勧めします。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:309
- ISBN:9784150719555
- 発売日:2003年12月01日
- 価格:693円
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