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シリア版ロミオとジュリエット、シリアの100年を語り尽くす大河小説という宣伝文句に偽りはない。そしてまたこの物語、現代版の「千夜一夜物語」でもあるようだ。

愛の裏側は闇(2)
シリア出身のドイツ語作家ラフィク・シャミ。
その筆名は「仲間・友人」という意味の「ラフィク」と、「ダマスカス人」という意味の「シャミ」からなっているのだという。

この物語はドイツの大学に留学する形で亡命した著者の自伝的小説であると同時に、“生と死と信仰、血の絆、反乱や闘争。シリアの100年を語り尽くす”大河小説でもあり、“シリア版ロミオとジュリエット”という恋愛小説でもある。

全3巻のうち、第Ⅰ巻を読んだ限りでは、物語は年を追って語り起こされず、家系も人をも追ってもいなかった。
次ぎにくるのが誰の物語か、前述の出来事とどのような関係にあるのかなど、順序立てた説明がないので、読みながら物語を自分で再構成していく必要があったのだ。

ところが第Ⅱ巻になると、少し構成に変化が見られた。
細かい章立てがなされているのはあいかわらずではあるが、およそ400ページほとんどすべてにわたって、若き日の著者を思わせるファリードと彼の仲間たちの幼年期から青年期にいたるまで様々な物語で埋め尽くされている。
ひとつひとつのエピソードにはほんの数ページしか割かれておらず、その一つ一つが小咄的にまとめられているので読むのには苦労しないが、どこでやめても区切りが良いので、かえって勢いをつけて読み進めるのには少々難儀するほどだ。

それでも、ファリード少年がダマスカスの路地裏で、同じキリスト教徒だけでなくムスリムやユダヤの子どもたちとも交じり合いながら成長し、やがて父親の強い意向に抗しきれず修道院にはいり様々な経験をし、ふたたびダマスカスにもどって恋人と再会すると同時に、大人になり以前のように忌憚なく交わることができなくなった幼なじみ達とも顔を合わせるようになる様は読み応え充分だ。

著者がなぜ、一風変わったこうした形式を用いて物語を描いたのか、あるいはこれがヒントなのかもしれないと思われる印象深い一文があったので、少し長いが引用してみよう。

ギリシア人は直線を愛し、シリア人は曲線や弓なりを好む。多くの人がいっている。砂漠をさまよう、つらい旅と無縁ではない、と。曲線は一見、距離を短くしたように見えるからだ。別の人々は、人生には紆余曲折があるものだという。オリーヴの枝は果実の重みでしなり、女ははらむと腹が丸くなり、椰子の葉は弓なりになる。直線は死に等しい。だがダマスカスの古老の説明は身も蓋もない。路地はくねくねしているほうが防御に役立つというのだ。


ダマスカスの街並みをあらわすこの一節を読んで、この物語の常とは違うひと味違った“形式”こそが、まさに「シリア的」なのかもしれないと思った。


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  • 掲載日:2014/10/18
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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2014-10-22 10:11

    おっ!この本早くも献本に登場しましたね!いつもながら東京創元社さん,太っ腹!!
    ちなみに第Ⅲ巻は~わあ!今日発売じゃないの!!
    北の果てまで来るのはもう少し先だろうけれど,楽しみ♡

    みなさんもぜひ,迷路のようなダマスカスの裏路地に迷い込んでみませんか?!w

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