猫と浮世絵といえば、やはり歌川国芳が思い浮かぶ。
表紙になっている服を着たネコが三匹踊っている姿は躍動感もあり、夏目漱石の吾輩が踊る「猫じゃ猫じゃ」みたいでもありなかなか可愛い。
江戸時代に身近にいて愛されていたのがネコだったのだろうが、浮世絵師たちがこのネコをどのように描いたのかを写真集にしたのが本書です。
第一章では「日々猫」として、ネコの日常風景を切り取った浮世絵が出てきます。
鈴木春信の「猫に蝶」は縁側で香箱座りをしたネコがじっと蝶を見る姿が描かれているし、河鍋暁斎の「眠り猫」は白トラのネコの寝顔がとても可愛い。
同じく河鍋暁斎の「月夜に鼠を捕らえた猫」は、鼠を手にぶら下げたネコが月を眺めている後ろ姿で描かれている。
そして国芳の「猫飼好五十三疋」は東海道五十三次の語呂合わせでネコがこれでもかと描かれているが、それぞれの柄を見ているだけでも楽しい。
「いたずら猫」を集めた第二章では、金魚鉢の金魚を狙うネコやネズミとネコの酒盛りと国芳の描くネコが様々な表情を見せる。
国芳の団扇絵の猫シリーズとして「猫のおどり」、「猫のすゞみ」、「猫のけん」、「猫のけいこ」と服を着た猫が様々に興じる姿を描いているが、これ結構気に入った。
この団扇売ってたらコレクションしたい。
第三章の「じゃれ猫」は美女にじゃれるネコを集めています。
歌川国貞の「風流相生尽 卯春」では猫を懐に入れて可愛がる少女が描かれているが、このスタイル冬の自分じゃんと思ってしまった。
足元にじゃれつくネコを描いていたり、猫の手を持って踊らせている美女がいたりとこれも国芳の絵が多い。
「はたらき猫」というタイトルの第四章では、もしもネコの町があったらというテーマで服を着て様々な生業に精を出す擬人化したネコが描かれている。
歌川芳藤の「猫のあきんどづくし」や「大長屋猫のぬけうら」、「猫の大よせ」、歌川国政の「猫のそばや」、歌川芳虎の「かるわざ綱わたり」、歌川藤よしの「猫の恋じ」、そして歌川国利の「ねこの世界」に歌川幾秀の「猫のどうつき」。
ネコの絵が描けねば歌川にあらずの様相を呈している。
最後の「ワル猫」は、化け猫を集めた章です。
これも国芳の作品が多いが、「岡部 猫石の由来」や「五十三駅 岡崎」のように巨大な化け猫の顔が背景に描かれていて、手前には普通サイズのネコが手ぬぐいをかぶって猫じゃ猫じゃを踊っているというどこかユーモラスな部分もある絵だ。
江戸の浮世絵師は現代のイラストレーターみたいな存在だったんだなというのがよくわかる本だった。
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