物語は二軸で進みます。
一つは、15世紀中葉のドイツ・マインツ。グーテンベルクがいよいよ四十二行聖書を印刷しようかという時代です。
グーテンベルクの下にはエンデュミオン・スプリングという名の徒弟がいました。彼も本に魅入られた少年なのでしょう。その導きのまま貴重な羊皮紙に不思議な言葉が浮かび上がる本が自動的に印刷されてしまうのです。
この頃、グーテンベルクに投資していたのはフストという裕福な商人。フストの下にはペーターという徒弟がついていました。これは史実。まあ、フストは歴史上ではその後グーテンベルクを訴え、その印刷機を我が物にしてしまうんですけれどね。
エンデュミオン・スプリングは、ペーターからも助言され、自動的に印刷されてしまった秘本をどこかに隠さなければならないと考え始めます。そうしなければフストがこれを奪ってしまうに違いないと。
著者は、フストとはすなわちファウストであるとしていますよ。
エンデュミオン・スプリングが本の隠し場所として決めたのは、当時大きな図書館を備えていたというオックスフォードでした。本を隠すなら本の中へということですね。
このパートでは、エンデュミオン・スプリングがオックスフォードに本を隠しに行く過程が描かれます。
もう一つの軸は現代のオックスフォード。どうも離婚しそうな母に連れられてオックスフォードにやって来たブレークとダック(通称)の兄妹が描かれます。母親は学者で、オックスフォードで論文を完成させようとしています。
ブレークとダックはオックスフォードの図書館に出入りするのですが、そこでページに何も書かれていない本を見つけたのがブレークでした。
いや、本の方がブレークを選んだということなのでしょう。
ダックの目には本には何も印刷されていないようにしか見えないのですが、ブレークが見ていると徐々に文字が浮かび上がり、不思議な言葉が出てくるのです。
その本には『エンデュミオン・スプリング』というタイトルが書かれていました。
この本は、そう、グーテンベルクの徒弟であったエンデュミオン・スプリングがオックスフォードに隠した本なのです。
本はブレークに何かを求めていると思われ、それを成し遂げようとするブレークとダックが描かれていく物語です。
巻末あと書きによれば、本書は児童文学ということになっているのですが、児童文学にしてはやや歯ごたえがあるかもしれません。
本を巡るファンタジーということで、本好きにはそそる内容なのですが、私の個人的な感想では、どうにもこの秘本がやろうとしていること、物語全体の決着がうまく書き込まれておらず、結局何をしているのか、何をすべきなのかがうまく伝わってこない感がありました。
惜しいなぁ~。この辺りの目的、ミッションの意味がもっと明確に書かれていたのなら物語ももっと盛り上がったでしょうに。
この辺の説明がどうもボケ気味に感じられてしまったため、ページをめくる手もやや遅くなりがちになってしまいました。
ちょっと残念。
読了時間メーター
□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位)/397ページ:2026/03/08
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