前のブログで、ジョン・B・ジュディス&ルイ・ティシェイラの『アメリカ民主党 失敗の本質 「中間層・労働者」は、なぜ「トランプ支持」に突き動かされたのか』(東洋経済新報社)を紹介しました。
本書の日本語版解説を書いている会田弘継氏によると、この筆者のお二人は「右翼ではない。筋金入りの左派」であって、欧州の社会民主主義者に近い「民主社会主義者」ないし、それへの共感を隠さない知識人だそうです。要は、本当の意味でリベラルな識者によるリベラルを偽称するニセリベラルともいうべき極左勢力を論破した本といえます。
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同じように、本当の意味でのリベラルに近いのではないかと思われるエズラ・クライン&デレク・トンプソンの『アバンダンス 「豊かな時代」を呼びさませ』(NewsPicksパブリッシング)を読みました。
お二人は1984年生まれ(クライン)、1986年生まれ(トンプソン)の若い世代です。「日本語版解説」を書いている森川潤さんによると、それより上の「世代の左翼たちが旗印にしてきた『資本主義が悪い』『富裕層や大企業が悪い』という論点では、若い世代にアピールできない、つまりトランプには勝てないという明確な意識をもっている」とのこと。
まぁ、オールドリベラルに対抗するニューリベラルといったところでしょうか。だから、アバンダンスせよと。
「アバンダンス」(abundance)とは、「あり余るほど豊かな状態」「豊富」を意味し、近年アメリカで政治・経済・社会の未来を語る際の最重要キーワードだそうです。日本の「もったいない」の対極にある概念で、対義語はscarcity(「不足」「欠乏」「希少」などの状態をさす言葉)だそうです。必要なものが十分にある社会の構築を目指す……。
このお二人も、共和党や右派にモノ申したい点も多々あるものの、『アメリカ民主党 失敗の本質 「中間層・労働者」は、なぜ「トランプ支持」に突き動かされたのか』の著者ジョン・B・ジュディス&ルイ・ティシェイラと同じく、広義の左派の病理に的を集中して論じています。右派の欠陥以上に、自分たち左派陣営の病理・堕落が見過ごせないのでしょう。そんなことではトランプに勝てないぞと。
脱成長だの、肉食をやめようとか、そんな主張をする暇があれば、高速鉄道を作ればよかったのに、それも作れないまま。「豊かな時代」「豊かな社会」の何処が悪い?「貧しい社会」「清貧な時代」がいいのか?
お風呂に入った時に、湯が湯船からあふれるほど「アバンダンス」でなくてもいい、でも、自分が湯船に入っても、肩までもお湯が届かないのはいかがなものか。「贅沢は敵だ」「地球を救え」といったスローガンをがなりたてるような「軍国主義者」も「平和(環境)運動屋」もどちらも海の藻屑になってくれたほうがいいでしょうね。そのための一冊かなと思って一読しました。
『アメリカ民主党 失敗の本質』ほど共鳴はしませんでしたが……。読んで損はしないと思いました。
では、ごきげんよう。
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