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爽風上々
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戦前から戦後にかけて、発酵醸造学の権威として活躍された坂口謹一郎博士のエッセイです。
著者の坂口さんは醸造発酵の分野で長年権威として活躍してきました。
東京大学(東京帝大)農芸化学の教授であったのは太平洋戦争中から戦後まで。
その後は様々なところで文章を書いていたのですが、その昭和40年代の発表文をまとめたのが本書です。

第一部世界の酒、第二部日本の酒、第三部酒と人といったまとめ方をしていますが、話の相互の関係はないようです。


デンプン質の原料をどうやって糖化するかということは、世界各国で異なっています。
もっとも原始的と思われるのは「口噛み」というもので、コメなどを蒸したものを選ばれた人(たいていは若い女性)が口に含んで噛み、唾液のアミラーゼと共に吐き出して容器に入れてから発酵させるというものです。
さらに東洋ではカビで糖化、西洋では麦芽で糖化と言われていますが、その分布は様々に混じっているようです。


カビで糖化といっても日本と中国などではその様相は異なります。
これを坂口さんは「粉食と粒食」に分けて区分します。
中国ではカビで糖化といっても粉を固めた餅のようなものにカビを付けますが、日本では蒸したコメなどにコウジカビを付けます。
おなじコメや麦を食べるにしても粒のまま食べるか、粉にしてからか、食文化の違いと言えるのですが、それが酒の造り方にも影響しているということです。

この文章が書かれたのが昭和40年代までということで、焼酎の位置づけが現在とはかなり違います。
昭和50年代から薩摩芋焼酎、さらに大分麦焼酎の流行で焼酎というもの自体の地位も上昇しました。
しかしそれ以前は戦後のカストリ焼酎、そしてその後の甲類焼酎の流行と、低品質低価格というイメージが強く、その後の感覚とはかなり違っていたと言えるでしょう。

最後の部分では芭蕉と酒との関りといったことも、「文学研究者ではないが」と断った上で書いていきます。
芭蕉の生涯は貧乏と金の余裕のある時期が別れていますが、それによって飲む酒にも変化があったようです。

しかし、発酵醸造の研究が主たる仕事でありながら、坂口さんの文学知識も相当なものと見えます。
最近の自分の専門分野以外はほとんど何も知らないという研究者たちとはかなり違うようです。


なお、私も農芸化学出身ですが、坂口先生の名を取った「坂口フラスコ」にはお世話になりました。
振盪培養に適した形状に工夫されたものですが、洗いにくいという点はありました。
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爽風上々
爽風上々 さん本が好き!1級(書評数:2784 件)

小説など心理描写は苦手という、年寄りで、科学や歴史、政治経済などの本に特化したような読書傾向です。
熊本県の片田舎でブラブラしています。
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