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格差の壁が生む令和の「同棲時代」。昔も今も若人は貧乏だが、悲惨さを全面に出さないのが石田流です。恋愛小説なのに石田小説にしてはエッチが少ないのも本書の特徴です。

  • 清く貧しく美しく(新潮文庫)【Kindle】
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  • 出版社:新潮社
清く貧しく美しく(新潮文庫)【Kindle】
♬二人はいつも、傷つけあって暮らした。(中略)できることならあなたを殺し、わたしも死のうと思っった♪これが昭和の正しく暗い同棲生活です。かぐや姫の「神田川」も同じ系譜で♪若かったあの頃何も怖くなかった。ただあなたの優しさが、こわかった♪とあり、とかく同棲生活というものは暗く背徳の香りが強いものでした。そうです、ビンボーな同棲生活は昔は罪で恥ずかしいことだったんです。ところが今どきの若者たちの同棲生活ぶりの爽やかすぎることは驚くべき。その変貌ぶりを本小説は赤裸々に描くとともに、貧乏とは違ったところに価値観を生み出さ若者たちの姿を描きます。

 年収300万円台で非正規雇用として暮らす30歳手前のカップル・堅志と日菜子が主人公。2人とも引っ込み思案で他人とのかかわりを避け、ましてや競争や出世といったぞk時に背を向けて2人でひっそりと暮らしています、不器用ながらも互いを認め合うエッチで静かで幸せな同棲生活を送っていましたが、ある日、堅志に正社員登用のチャンスが舞い込み、さらに2人にそれぞれ新しい恋人との出会いの機会が訪れて、2年間育んできたビンボーだけど幸せな生活のピンチ!!!というなかなかハラハラさせる展開。このあたりの構成はさすがは青春小説の名手・石田の采配が光っているのです。

 いわゆる社会の落ちこぼれで、非正規雇用生活を余儀なくされた2人の末路ですが、今や日本の40%がいわゆるニートらしいことを考えれば、我が国の将来は暗いとしか思えません。そして最も恐ろしいのが定職を持たないのにそれを良しとしている人々が多いこと。卒業後にきちんと就職をせずにバイトで自由気まま暮らすことができていたことをずっと続けているのです。個人レベルではキリギリス並みの想像力のなさとしか言えず、自業自得といえばそれまでですが、こんな人が増えては国力の低下は免れません。努力とか辛抱を忘れて自分らしさや個性を称賛する今の風潮をいかがなものかと、小説の主題以外のところで深く考えさせられました。
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  • 掲載日:2026/05/06
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    取得中。。。