珍しいイタリアの絵本『いまでなきゃ』は、その冒頭のシーンも絵本としては珍しい。
「-いよいよリタイアだ、やっとふたりでなんでもできる。」
そう、この絵本は、おそらく定年を迎えた熟年夫婦の物語なのだ。
もちろん、だからといって子供たちが読めないわけではないだろうが、
やはりこの絵本に登場する夫婦のような熟年の人たちに読んでもらいたい。
リタイアしたら、仕事におわれてできなかったあれもしたい、これもやりたいと
誰しもが思うもの。
この絵本の男性の場合もそう。
知らないところを見てまわる旅をしてみたい、と。
ところが、パートナーの女性は「春までまちましょ。」とつれない。
ならば、一緒に外国語を勉強するのは? どうしてとくいじゃないのに。
この会話のようすを描いた二人の絵がいい。
糸電話でつながる二人。でも、男性は耳にあて、女性は耳にすらあてていない。
このページでもそうだが、チェチーリア・フェリさんが描いた絵がこの絵本の魅力のひとつ。
素朴で温かみがあって、これが初の絵本作品だというが堂々とした風格すら感じる。
文章を書いたのはダウィデ・カリという絵本作家で、すでに多くの賞を受賞している実力ある作家。
そういうコンビから生まれたこの絵本のラスト、「いまでなきゃ」と風に向かって
バイクを走らす二人に勇気をもらえるはずだ。
この春、リタイアを決めた人に贈ってあげたい一冊。
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