本が好き!ロゴ

閉じる

170年前のセンセーショナルな話題作。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!免許皆伝
ボヴァリー夫人
書誌情報や解説を読むと、本著は社会的影響の大きかった話題作で、裁判沙汰になった結果がよい意味で影響して、名作として現代まで残っているという稀有な一冊です。

フローベールは小学生の頃から試作的に文章を書き始めた人です。書かないといられない、小説家気質のタイプだったようです。きっかけは二十八才の時です。古くからの友人のデュ・カンと、生涯の友人となる詩人のルイ・ブイユを自宅に招待し、ようやく完成した聖アントワーヌの誘惑を読み聞かせ、二人に意見を求めたのでした。友人たちからは手厳しい批判。フローベールは、友人たちの判断を尊重すると答えました。

そして一睡もせずに迎えた翌朝、ふいにブイユが言いました。なぜ君はドロネーの話を書かないんだと。ドロネーは、フローベールの父の教え子で、免許医でした。最初に金持ちのような年上の女性と結婚した後、その女性に先立たれ、あまり裕福ではない娘と再婚しました。そして始まった墜落人生は、本作のボヴァリー夫人の話そのままだったようです。

本作は、不倫で身を持ち崩し、家族崩壊に至った物語です。いまでこそそういう作品は珍しくありませんが、当時の衝撃はすさまじいものがあったようです。小説なのに、公衆道徳および宗教道徳、良俗に対する罪で訴えられてしまいました。小説がですよ? それくらい、当時の社会に与えた影響は甚大だったというわけです。

新訳のおかげで、抜群に面白く読めました。究極のかまってちゃんのボヴァリー夫人は、究極の承認欲求の持ち主だし、究極のナルシストでもあります。そんな人間の恥部をあますところなく書き上げた本作は、現代でも通じる普遍性があると思いました。

大衆小説なのに名作という、面白い立ち位置です。一読の価値がありますよ。
  • 本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
  • 掲載日:2026/05/24
投票する
投票するには、ログインしてください。

この書評の得票合計:1

参考になる:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

    No Image

    コメントするには、ログインしてください。

    ボヴァリー夫人 の書評一覧

    取得中。。。