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青山さんが描く世界は表現が実に奥深く、いつもタメ息ばかりでてしまう。

春山入り
 短編集。この作品集、単行本の時は、本に収められている作品「約定」をタイトルにしていたが、文庫にする際、同じ本に収められている「春山入り」を文庫本のタイトルにしている。

 どの作品も、下級武士が、それを受け入れれば、出世や人生の道が開かれるが、その結果、友達や家族を失ってしまう。そこで、どうするか、悩み苦闘する姿を描く作品になっている。

 そのなかでも、本のタイトルになっている「春山入り」がすばらしい。
主人公の原田大輔は島守藩6万石の武士。島守藩は天明の飢饉により藩の食料がひっ迫。
多くの百姓はこのままでは生きられないとして、作地を放棄して脱藩する。
 
こんな時、窮地を救うのは、武器ではなく智を高めることが必要ということで体制の改革を行う。しかし、この改革には不満を感じる武士も多く、その先鋭が幼馴染の島崎哲平。藩から哲平を殺害しろと大輔に命令が下される。実は大輔と哲平は藩の道場で剣の腕を磨いたが、2対8の割合で大輔は哲平に負けていた。

 藩内にある刀剣屋に行き、通常より柄の長い刀をみてこれだと大輔は勝てるかもしれないと思い購入しようとしたが、店主にこんな出来の悪い刀は大輔に相応しくないと諫められ、購入を断念する。しばらくたって、大輔が刀剣屋に行くと、先日哲平がやってきたと店主が言う。しかし、大輔が求めた刀を哲平は買わなかった。それでも、哲平の本気度が大輔には伝わってくる。

 それで2人はどうなるのか。この落とし前のつけ方が感動的で鮮やか。全く青山文平をもってしか描けない結末。

 大輔と妻の佐和が、春山に弁当を持ってでかける。
その北国の春山入りについての表現がよい。

「北国の冬は長く、高い堰となって春を止める。代わりに、堰が切られれば一気に色は爆発する。人々は、その爆風に身を晒して、とりどりの色を浴びるために山へ入る」
 こんな文に出会うために、青山文平を読む。
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  • 掲載日:2026/04/27
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