大作スウェーデン・ミステリ。
ミレニアム2部 上巻を受けて下巻。
物語の軸は、中年雑誌編集者ミカエルと年若き凄腕ハッカー・リスベットの2人。
第1部の事件では、協力して事件の真相を暴き、またリスベットはミカエルの危機を救う。一時は深い関係になりつつ、結局はリスベットが姿を消す形で終止符を打った。
時が経ち、ミカエルは人身売買が絡む新たな事件を追っていた。リスベットは大金を手にし、初めて金に困らない生活をある種、謳歌していた。
しかし、ミカエルの同僚らとリスベットの後見人が殺されるという大事件が起こり、双方と接点があったリスベットが犯人と疑われる。
彼女は事件の根本にかかわると思われる、自分の過去と向き合う決意をする。リスベットが犯人とは思えないミカエルもまた、事件を調べ始める。2人の道はまた交錯することになる。
リスベットは基本、「戦う女」である。
子供のころに問題行動(彼女曰く「最悪の出来事」)を起こし、一時、精神病院にも入れられた。危険人物とされて、以来、成人してもなお、後見人が付く立場となっていた。
それはそもそも「なぜ」だったのか。
その裏には国をも揺るがすようなある「秘密」があった。
何だか話が大きくなってきた。
秘密は彼女の出自や現在の境遇にかかわるものだった。そこに旧ソ連の諜報部やスウェーデンの公安警察が絡んでいる。国家的な秘密の鍵を彼女が握っているため、当局は常に彼女を監視下に置きたがっているというわけだ。
大きなもの相手に、ほぼ徒手空拳で戦おうとするリスベット・サランデル。
確かにちょっと新しいタイプのヒロインかもしれない。
さて、彼女の戦いの結果やいかに。
下巻の終盤は怒涛の展開である。一応、事件に決着はつくのだが、なお謎も残る。
巻末の北上次郎の解説によれば、第三部は第二部に直結するストーリーで、
第一部が孤島ミステリーであり、サイコ・スリラーであったとするなら、第二部は警察小説&復讐小説であり、第三部はスパイ・スリラー&リーガル・サスペンス
なのだという。
この時点で「いや、いくらなんでもそんなことあるかしら」と思わないでもないのだが、判断はとりあえずラーソンの手による三部作の最後まで読んでからとしたい。
ともかくも大部であり、また立場の異なる多数の登場人物を鮮やかに描き分ける手腕にはうならされる。ハッキングの描写も楽しいところ。
ところで、第二部でかなり重要な役割を果たすパオロ・ロベルトというボクサーは、実在の人物なのだそうである。スウェーデン制作の映画でも本人役で出演している。
その他、スウェーデンの有名人やテレビ番組など、内輪ネタ的なものも散見される。もしかするとラーソンは本作が世界的にヒットするとまでは思っておらず、スウェーデン人向けに書いていた部分もあるのかもしれない。それはそれで味になっているのだが。
そういえば、時折、ミカエルは「名探偵カッレ」になぞらえられ、リスベットは「長くつ下のピッピ」と重ねられる。どちらもスウェーデンの国民的作家リンドグレーンの人気シリーズである。本人たちはあまり喜んではいないのだが、ちょっとほほえましい感じである。
ピッピは愛読していたが、カッレくんシリーズは未読なので、読んでみようかと思っている。
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ミレニアム1 上
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ミレニアム1 下
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