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DBさん
DB
レビュアー:
中世に光を当てた物語
中世のイングランドを舞台に、現代でいえば検死官のアデリア女史が活躍するシリーズの第一作目です。
ヘンリー・プランタジネットが治めるイングランド東部のケンブリッジで、子供たちが殺されるという事件が起きた。
その子供の一人であるピーターの遺体が磔にされていたという流言から、ユダヤ人たちに嫌疑がかけられ裕福なユダヤ人夫婦が八つ裂きにされて他のユダヤ人たちも城に保護されたまま外に出られないでいたのだった。
ヘンリーにとってはユダヤ人たちからの税収が途絶えているという国庫の問題があり、この殺人事件を解決すべく命令を下す。
それはシチリア王国のサレルノという町から、死者の声を聴くという医師を招聘することだった。

サレルノは医学が進んでいて、唯一女性も医学の道に進むことができるという特殊な場所だった。
学問が重要視され国籍や宗教は二の次となっているようだ。
イングランド王からの依頼を受けたシチリア王の秘書官が医師のゴルディナスを訪ねた時の執事との問答が面白い。
「ここの主人の宗教を失念してしまったのでな」
「旦那さま自身もそれをお忘れです、閣下」
医師としては一級だが、現実感覚はどこかに忘れてしまっているらしいゴルディナスの人選は英語が話せて検死の技術も一番の弟子という点では的確だった。
それが女性だったという点を除けば。

こうしてアデリアがイングランドへ来ることになった旅ですが、ケンブリッジを目指す途中で急病の修道院院長の命を救う。
院長ジェフリーはシリーズを通してアデリアのよい隣人になってくれる人だった。
アデリアは魔女だと呼ばれる危険を巧妙に避けつつ、事件の真相を探るべく子供の遺体を検死する。
その結果と状況推理から犯人へと徐々に迫っていくが。
国王から派遣されたトラブルシューターのロウリー卿との恋愛も含めて最後までいっきに読み通したくなる物語だった。

時代背景的に重い話でもありけれどね。
事件の背景を探る中でもユダヤ人たちや女性たちへの蔑視の空気が感じ取れる。
そんな中でコモン・ローを推し進めたヘンリー・プランタジネットに対して、今までとは違った見方ができるかもしれない。
犯人や共犯者についてはそこまで驚きではなかったんだけど、お守りにと犬をアデリアにつけたジェフリーの慧眼には脱帽ものでした。
犬が現代でいうところのGPSになるとは思わなかった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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