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すずはら なずな
レビュアー:
「くまのプーさん」のA.A.ミルンの推理小説。さすがキャラクターが魅力的。
作者が書いたたった一作の推理小説で、世界的に愛されている作品、のようです。


ミステリー好きのお父さんのために書くこの一作について、まず作者は 自身の良しとする推理小説について考えを述べます。

曰く、探偵役は読者と同じ「素人」であり、その推理の元となる手段も特殊な技術や知識は不要、そして探偵役が知り得た情報は読者にその都度開示すること。

最後の最後で「実は私はこういうことに気がついていたのだ」と言われて犯人を暴いて追い詰める ところを見せられたって、一緒に推理を楽しんでいたつもりの読者はおいてきぼり、そういうことなんだろうと納得です。名探偵ホームズに対するワトソンの役割も物語を進めるには必須。この物語内でもギリンガムとベヴリーがその役割です。良いなと思うのは元からの友人としての纏う気安さと互いに認め合う雰囲気。片方を引き立てるために片方をおバカすぎるキャラにしたりはしません。相方の推理に感心し捜索を上手く手伝い、自分の意見を述べる。
目にしたものをそのまま記憶できる能力をギリンガムは持っていますが、それでもまあ、現実味を失くしすぎる設定とまではギリギリいかない程度になってはいます。


内容に少し触れておきます。

赤い館の裕福な主人マークのところに放蕩物の嫌われ者、兄のロバートが翌日訪問するとのこと。皆の前で手紙を読み上げ 時間まではっきりと伝えられます。先に招かれていた客たちはその未知の「兄」の存在をはじめて知らされます。
そして翌日、客たちがテニスを楽しんでいるうちに屋敷内で殺人事件。

開けてくれ!と叫ぶ いとこで秘書的な役割のケイリーの姿を、たまたま訪ねて来たギリンガムが見つけ、助太刀。ケイリーは部屋の中で銃声がしたといいます。女中たちもその音は聞いたようです。

外から急いで回って部屋に入ると一人の男の死体。「ロバートだ」とケイリーは言います。



早々に他の客は帰され、ギリンガムとベブリー、ケイリー 女中たちだけが残り、警察の取り調べを受けます。


ヒントは女中たちの証言、ギリンガムの見聞きしたこと。
そして ギリンガムの感じた違和感から 少しずつ推理と検証が進みます。もちろん読者も同時進行です。警察は警察で捜査を開始。

ギリンガムの考えたことに沿い「真実(と思われるもの)」は一転、二転します。、読者も素直にその前の推理の否定と 次の推理へ転換を余儀なくされるのですが、そういうことにも慣れて案外そういった展開も心地よく読むことができます。


最初の客たちが足止めをくらい誰もが皆が怪しい、という話も多くあるようですが、ここではあっさり退場し、残る人物の中で怪しいか怪しくないかはただ一人。 あとは死んだ人の経緯と行方不明のマークのその行動(=逃げたのだとすれば)の理由と行き先が推理の対象です。

推理小説に馴染んだ方なら、まず自明のようになっている「ロバート」の死体、から疑っていたでしょう。不慣れな私としては、「兄」といっても「双子?」くらいのことしか思い浮かばず、お洒落で見た目を気遣う館の主人マークが何かの理由で放蕩者の「ふり」をするにしても ひげはすぐに生えず、髪もぼうぼうにはならないし、とかなり思い込みに左右された見当違いなことを思っていました。
ちょっとネタばれになりますが、洒落者はひげを延ばして整えているのですね。(最初にそんな記述もあったし)

後日 この作品のツッコミどころを指摘した推理作家もいるようですが、それはそれ、として 私のような推理小説になじみの無い(加えて「プーさん」 原作大好きな)者には とても楽しく読むことができました。

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すずはら なずな
すずはら なずな さん本が好き!1級(書評数:440 件)

電車通勤になって 少しずつでも一日のうちに本を読む時間ができました。これからも マイペースで感想を書いていこうと思います。

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