四次元の王者さん
レビュアー:
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飛びぬけた経済成長を遂げたことで「異常な国」とノーベル経済学者サイモン・クズネッツに言わしめた日本。60年後の今、見る影もない低成長からいよいよ抜け出せるか?
今の日本、同列先進国の中で異常な低成長で注目されている。
20年のスパンで見ても2000年にOECD38か国の賃金ランクで2位だったのが、2022年には21位に落ち、IMFの経済成長率を見てもアメリカ、EU諸国のなかで0%近辺に数値が張り付いているのは日本だけ。
そしてようやくこの状況に変化の兆しが見え始めた。
本書ではノーベル経済学賞を受賞しているような何人もの大物経済学者さんの理論がいくつも紹介され、僕の頭ではひとつひとつのロジックには付いていけなかったのだが、日本がデフレに陥った経緯については至ってシンプル。
日本の物価、賃金の伸びが止まった原因 は、1997年文芸春秋に記載された内容、経営サイドと労組サイドで交わされた「賃上げをしない密約」だったという。
背景にあったのは、安価な製品を供給する中国の台頭に、トヨタなどの日本の大手製造業経営陣が抱いた危機感。
これが日本に長きにわたるデフレをもたらした。
本書では触れられないが、非正規雇用という安価な労働者層ができたのもこれが原因だと思う。
この流れにより 二十年の長きにわたって日本人の賃上げマインド、値上げ志向が封印された 。
こんな状況下で本書冒頭の2016年、アイスキャンディ「ガリガリ君」値上に際し、社長自らテレビコマーシャルでお詫びする、海外で驚きを以て報道された事件が起きたのだ。
「高い日本」が「安い日本」に変貌したことで、低成長により日本の大手企業から最先端の技術者がGAFAに引き抜かれるようといった副作用が顕著になってくる。
この状況を打破するため2013年4月、発動したのが黒田バズーカ・異次元緩和。
マネタリーベース(日銀の銀行券と民間金融機関が日銀に預けている当座預金=リザーブ)を2年で2倍にし、物価上昇率2%の達成を目指した。
周知のとおりこれ以降も修正されながら発動され続けた一連の施策は結局、結果を出せずに終わったのだが、発動前1999年3月時点で6兆円だったリザーブは2024年3月時点で561兆円に膨らんだ状態だ。
この安くて物価が上がらない日本が変化したきっかけはパンデミックスだという。
この変化はいくつもの要因が複合して作用した結果だと著者は言う。
それらの解説にはもう一冊分、本書と同じボリュームの説明が必要なのかもしれない。
パンデミック以降、具体的には以下の変化が起きた。
1.消費者のインフレ予想の上昇
2.消費者の値上げに対する耐久性改善
3.企業の価格転嫁の広がり
4.春闘での高い賃上げ率
5.日銀の利上げ、それに伴い非伝統的政策の終了(超金融緩和終了)
十年以上かかって当初の目的は達成されつつあるのだが、ここで本書ではデフレ脱却は「金融政策」のみで可能なのか、相応の「財政政策」もミックスされる必要があるかといった議論が提示される。
元日銀マンとしての矜持から、こういうテーマが出てくるのだろうが、これは結論がでない話だろう。
むしろ、僕らの立場、これから金利を眺めながら資産運用したりお金を借りたりしなければいけない庶民として、政策金利はどの程度が妥当な水準なのかという疑問が出てくる。
どうしてデフレじゃためか?
インフレターゲットの適正な水準はどれくらいなのか?
市中の資金の調整弁としての政策金利、低すぎると、優秀な努力している企業も、内容の悪い怠慢な企業も調達金利が変わらない不公平が生じ、社会の発展が削がれる。
金利と混同しやすいが今、先進国のインフレターゲットは2%となっている。
各国政府は政策金利を柔軟に操作してインフレ率を2%程度に保とうとしている。
政策金利は高すぎると、例えば10%超えくらいの水準になると当局が金利の制御をすることが困難になる。
ということで著者は適正水準は5%程度と考えているらしい。
本書ではこうした現実を見据えた部分と、学者としてのロジックの部分があり、著者が学者として政策金利の水準について書いた部分があり、バラエティな内容。
素人の僕でも面白かった。
日本の景気にようやく明るい兆しが……と思っていたらイランでどこかの国がやらかしてくれた。
中央銀行の人々は当面、眠れない日々を過ごしているのだろうが、日本の場合おそらくまだ500兆円以上あると思われるリザーブ、どう処理するのだろう。
20年のスパンで見ても2000年にOECD38か国の賃金ランクで2位だったのが、2022年には21位に落ち、IMFの経済成長率を見てもアメリカ、EU諸国のなかで0%近辺に数値が張り付いているのは日本だけ。
そしてようやくこの状況に変化の兆しが見え始めた。
本書ではノーベル経済学賞を受賞しているような何人もの大物経済学者さんの理論がいくつも紹介され、僕の頭ではひとつひとつのロジックには付いていけなかったのだが、日本がデフレに陥った経緯については至ってシンプル。
日本の物価、賃金の伸びが止まった原因 は、1997年文芸春秋に記載された内容、経営サイドと労組サイドで交わされた「賃上げをしない密約」だったという。
背景にあったのは、安価な製品を供給する中国の台頭に、トヨタなどの日本の大手製造業経営陣が抱いた危機感。
これが日本に長きにわたるデフレをもたらした。
本書では触れられないが、非正規雇用という安価な労働者層ができたのもこれが原因だと思う。
この流れにより 二十年の長きにわたって日本人の賃上げマインド、値上げ志向が封印された 。
こんな状況下で本書冒頭の2016年、アイスキャンディ「ガリガリ君」値上に際し、社長自らテレビコマーシャルでお詫びする、海外で驚きを以て報道された事件が起きたのだ。
「高い日本」が「安い日本」に変貌したことで、低成長により日本の大手企業から最先端の技術者がGAFAに引き抜かれるようといった副作用が顕著になってくる。
この状況を打破するため2013年4月、発動したのが黒田バズーカ・異次元緩和。
マネタリーベース(日銀の銀行券と民間金融機関が日銀に預けている当座預金=リザーブ)を2年で2倍にし、物価上昇率2%の達成を目指した。
周知のとおりこれ以降も修正されながら発動され続けた一連の施策は結局、結果を出せずに終わったのだが、発動前1999年3月時点で6兆円だったリザーブは2024年3月時点で561兆円に膨らんだ状態だ。
この安くて物価が上がらない日本が変化したきっかけはパンデミックスだという。
この変化はいくつもの要因が複合して作用した結果だと著者は言う。
それらの解説にはもう一冊分、本書と同じボリュームの説明が必要なのかもしれない。
パンデミック以降、具体的には以下の変化が起きた。
1.消費者のインフレ予想の上昇
2.消費者の値上げに対する耐久性改善
3.企業の価格転嫁の広がり
4.春闘での高い賃上げ率
5.日銀の利上げ、それに伴い非伝統的政策の終了(超金融緩和終了)
十年以上かかって当初の目的は達成されつつあるのだが、ここで本書ではデフレ脱却は「金融政策」のみで可能なのか、相応の「財政政策」もミックスされる必要があるかといった議論が提示される。
元日銀マンとしての矜持から、こういうテーマが出てくるのだろうが、これは結論がでない話だろう。
むしろ、僕らの立場、これから金利を眺めながら資産運用したりお金を借りたりしなければいけない庶民として、政策金利はどの程度が妥当な水準なのかという疑問が出てくる。
どうしてデフレじゃためか?
インフレターゲットの適正な水準はどれくらいなのか?
市中の資金の調整弁としての政策金利、低すぎると、優秀な努力している企業も、内容の悪い怠慢な企業も調達金利が変わらない不公平が生じ、社会の発展が削がれる。
金利と混同しやすいが今、先進国のインフレターゲットは2%となっている。
各国政府は政策金利を柔軟に操作してインフレ率を2%程度に保とうとしている。
政策金利は高すぎると、例えば10%超えくらいの水準になると当局が金利の制御をすることが困難になる。
ということで著者は適正水準は5%程度と考えているらしい。
本書ではこうした現実を見据えた部分と、学者としてのロジックの部分があり、著者が学者として政策金利の水準について書いた部分があり、バラエティな内容。
素人の僕でも面白かった。
日本の景気にようやく明るい兆しが……と思っていたらイランでどこかの国がやらかしてくれた。
中央銀行の人々は当面、眠れない日々を過ごしているのだろうが、日本の場合おそらくまだ500兆円以上あると思われるリザーブ、どう処理するのだろう。
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仕事、FP活動の合間に本を読んでいます。
できるだけ純文学と経済・社会科学系のものをローテーション組んで読むようにしています(^^;
相場10年、不良債権・不動産10年、資産形成(DC、イデコ)20年と、サラリーマンになりたての頃は思っても見なかったキャリアになってしまいました。
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- 出版社:日経BP 日本経済新聞出版
- ページ数:0
- ISBN:9784296120901
- 発売日:2024年11月23日
- 価格:1980円
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