ソネアキラさん
レビュアー:
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眩暈のする読書―残酷暗黒夢幻童話集
『兎』金井美恵子著を久しぶりに読む。すっかり内容を忘れていたので、初読っていってもいい。
『構造と美文 山尾悠子偏愛アンソロジー』山尾悠子編に『血まみれマリー』が載っていてぶっ飛んだから。 20歳に『愛の生活』でデビューしてから5年後の作品。山尾悠子や小川洋子など多くの作家たちに影響を与えた著者。少女漫画と通底するバタくさい残酷暗黒夢幻童話集。5篇紹介。
『愛あるかぎり』
激しく雨が降っている。屋敷の中でほかにすることもないのでAと車椅子に座った男はお互いの恋人のことを何度となく話していた。二人とも恋人が帰って来ることを願っているのだが。それは真実なのか、虚構なのか。恋人は生きているのか、死んでいるのか。
『不滅の夜』
静物画を思わせるあふれる物の描写が続く。彼女はいつもの儀式にのっとって手紙を書く。手紙からあふれる記憶の無数の断片。ガーリッシュなシュールリアリズム。
『森のメリュジーヌ』
冒頭に入沢康夫の詩と思われる一文が載っている。「…ソノ森、ソシテソノ池ノ辺リガ、私ト、私ノ死ンダ妻トノアイビキノ場所トナル」いわばその返歌的作品。鬱蒼とした「森の中、大きな泉の近く、雪花大理石の家」に暮らしだした二人。彼女は「定期的に夜中」に姿を消す。行き先をたずねたが、彼女は無言のまま出て行った。小人の女占師に行く先と外出をやめさせる方法を教えてもらう。お代は二つの耳だった。
『腐肉』
「吉岡実へ」と書かれている冒頭。彼女の部屋へ毎晩男たちがやって来た。彼らは宝石やお金などを忘れていった。ある夜、「屠りたての子豚丸々一頭分の肉」を置いて行った。屠殺人の男だった。肉はやがて腐肉となった。悪徳不動産屋に騙されて「血だらけの腐った肉」のある彼女の部屋に住むことになった「ぼく」。激しい悪臭は腐った豚肉からかと聞くとちがうと言う。それは…。果実は、腐りかけがいちばん美味しいというが。
『兎』
冒頭にルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の兎の一文が載っている。「when suddenly a White Rabit with pink eyes ran close by her」散歩中の「私」の前を白兎が走る。実はそれは白兎のコスプレをした少女・小百合。彼女は私を部屋に呼んで自分のことを語りだす。父親は兎を飼っていた。愛玩用ではなく食用で父親は兎を殺してとびきりの兎料理を小百合にふるまう。そして。
現在、絶版らしい。この本を英訳して英語圏で刊行したら、かなりウケそうな気がするのだが。
考えてみれば、子どもの時に読み聞かされたあるいは読んだ童話って怖いものや惨たらしいものが多かった。
『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの』フロイト著 中山 元訳 で、童話についてこう述べている。
「童話は一般に、思考と願望の万能というアミニズム的な観点に公然と立っているが、わたしの知る限りでは、本当の意味で童話であって、しかも何か不気味な雰囲気を与えているものは一つもないのである。生命のない事物、絵画、人形などが生きて動き出すと、きわめて不気味な印象を与えると(イェンチュは)主張していたが、アンデルセンの童話では、道具も家具も錫の兵隊もみんな生きているのであって、それでいて不気味な印象はまったく与えないのである。ピュグマリオンが彫った像が生命をもち始めても、誰も不気味だとは感じないだろう」
「わたしたちは、仮死状態と死者のよみがえりが非常に不気味なイメージをもたらすことを確認してきた。しかし童話では、こうしたものもごくありきたりのことである」
(『不気味なもの』より引用)
『構造と美文 山尾悠子偏愛アンソロジー』山尾悠子編に『血まみれマリー』が載っていてぶっ飛んだから。 20歳に『愛の生活』でデビューしてから5年後の作品。山尾悠子や小川洋子など多くの作家たちに影響を与えた著者。少女漫画と通底するバタくさい残酷暗黒夢幻童話集。5篇紹介。
『愛あるかぎり』
激しく雨が降っている。屋敷の中でほかにすることもないのでAと車椅子に座った男はお互いの恋人のことを何度となく話していた。二人とも恋人が帰って来ることを願っているのだが。それは真実なのか、虚構なのか。恋人は生きているのか、死んでいるのか。
『不滅の夜』
静物画を思わせるあふれる物の描写が続く。彼女はいつもの儀式にのっとって手紙を書く。手紙からあふれる記憶の無数の断片。ガーリッシュなシュールリアリズム。
『森のメリュジーヌ』
冒頭に入沢康夫の詩と思われる一文が載っている。「…ソノ森、ソシテソノ池ノ辺リガ、私ト、私ノ死ンダ妻トノアイビキノ場所トナル」いわばその返歌的作品。鬱蒼とした「森の中、大きな泉の近く、雪花大理石の家」に暮らしだした二人。彼女は「定期的に夜中」に姿を消す。行き先をたずねたが、彼女は無言のまま出て行った。小人の女占師に行く先と外出をやめさせる方法を教えてもらう。お代は二つの耳だった。
『腐肉』
「吉岡実へ」と書かれている冒頭。彼女の部屋へ毎晩男たちがやって来た。彼らは宝石やお金などを忘れていった。ある夜、「屠りたての子豚丸々一頭分の肉」を置いて行った。屠殺人の男だった。肉はやがて腐肉となった。悪徳不動産屋に騙されて「血だらけの腐った肉」のある彼女の部屋に住むことになった「ぼく」。激しい悪臭は腐った豚肉からかと聞くとちがうと言う。それは…。果実は、腐りかけがいちばん美味しいというが。
『兎』
冒頭にルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の兎の一文が載っている。「when suddenly a White Rabit with pink eyes ran close by her」散歩中の「私」の前を白兎が走る。実はそれは白兎のコスプレをした少女・小百合。彼女は私を部屋に呼んで自分のことを語りだす。父親は兎を飼っていた。愛玩用ではなく食用で父親は兎を殺してとびきりの兎料理を小百合にふるまう。そして。
現在、絶版らしい。この本を英訳して英語圏で刊行したら、かなりウケそうな気がするのだが。
考えてみれば、子どもの時に読み聞かされたあるいは読んだ童話って怖いものや惨たらしいものが多かった。
『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの』フロイト著 中山 元訳 で、童話についてこう述べている。
「童話は一般に、思考と願望の万能というアミニズム的な観点に公然と立っているが、わたしの知る限りでは、本当の意味で童話であって、しかも何か不気味な雰囲気を与えているものは一つもないのである。生命のない事物、絵画、人形などが生きて動き出すと、きわめて不気味な印象を与えると(イェンチュは)主張していたが、アンデルセンの童話では、道具も家具も錫の兵隊もみんな生きているのであって、それでいて不気味な印象はまったく与えないのである。ピュグマリオンが彫った像が生命をもち始めても、誰も不気味だとは感じないだろう」
「わたしたちは、仮死状態と死者のよみがえりが非常に不気味なイメージをもたらすことを確認してきた。しかし童話では、こうしたものもごくありきたりのことである」
(『不気味なもの』より引用)
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女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。
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- 出版社:集英社
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- ISBN:9784087502060
- 発売日:1979年02月01日
- 価格:1759円
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