AIを一部用いた作品として海外でも反響を呼んだ。その後かなり些少な部分だったと訂正している。作中にもまさにAIが取り上げられている。
当初新国立競技場の案とされ後に白紙撤回されたザハ・ハディド設計の新国立競技場が建設されている東京。建築家・牧名沙羅は都心に計画されている受刑者らの高層収容施設「シンパシータワートーキョー」の設計に挑む。犯罪者らにも幸福な生活を、という主張に厳しい反対の声も多い中、ある時牧名の中に発想が突然降りて来るー。
主な登場人物は牧名と、彼女がショップでいわばナンパした美青年、タワーの存在価値を説いた本の著者、批判的で粗っぽい記事を書く外国人ジャーナリスト。
私的な解釈をすると、SNS等の発達で賛否両論の声が上がりザワザワした社会の中、でAIと人間の生の心との差をあぶり出す。そこには現実を受け入れる人、一市民にはどうしようもなく実施されてしまう大規模プロジェクトの虚しさ、逞しい慣れ、個人の欲のようなもの、が描かれているといったところか。
テーマがそうだけに、理屈、言葉数があまりに多いのはやむないところもあると思う。また、人の生の逡巡、微妙な部分は、常識で割り切れないところもあって、対比としてそれなりに表出されているのはふむ、とも思った。
また、巻末の対談も併せ、建築家は未来を創る、建築物は社会にさえ影響を与える、というのは腑に落ちた。
先に著者の「しをかくうま」を読んで、これがあまりに純文学に過ぎたのでこの作品もんー、うーむ、と読む前は少し構えていたのだが、分かりやすく生の手応えもあってそこは安心して読んだ。
ただ、やはり私的には言葉数を多くするよりも、物語で語る、のほうが好きかなやっぱり。
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