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ソネアキラ
レビュアー:
不気味で不安。20世紀怪奇・幻想文学の先駆け的作品

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

『砂男/クレスペル顧問官』E.T.A.ホフマン著 大島ゆかり訳を読む。

「オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』の原作」となった3つの短篇集。
読まなきゃなあと思っていたが、『クララ殺し』小林泰三著の関連で読んだ。

 
『砂男』
砂かけ婆は人間に砂をかける妖怪。砂男は「子どもを眠らせるため砂状の魔法の霧を目にふりかける」妖精。ナターナエルは父の知人・弁護士のコッペリウスが砂男ではないかと思っていた。青年になったナターナエルは晴雨計売りのジュゼッペ・コッポラがコッペリウスによく似ていて砂男ではないかと。彼にはクララという恋人がいるのに、近所の大学教授スパランツァーニの娘オリンピアに惚れてしまう。まるで人形のように美しい肢体。生気のない表情。それもそのはず、彼女は木製の自動人形だった。それを知って錯乱状態となる。家族やクララの看護で快方に向かうと思われたが、フラッシュバックしてしまう。
砂男は眼を狙う。コッペリウスはナターナエルの眼玉を狙う。その眼玉をオリンピアに…。バタイユの『眼球譚』やブニュエルの『アンダルシアの犬』にもつながっている。不気味で不安。20世紀文学の先駆け的作品。

『クレスペル顧問官』
奇人といわれるクレスペル。家の建て方も独特。彼はヴァイオリン作りの名人でもあった。しばらく家を留守にした。戻るや「素晴らしい女性の歌声」がする。美声の持ち主は娘のアントーニエ。ヴァイオリン談義で顧問官に気に入られた「わたし」は、家に招かれる。次第にアントーニエにひかれていく。ぜひ歌をと懇願するが、顧問官の逆鱗に触れる。二年後、旅から帰るとアントーニエの葬儀が執り行われていた。クレスペルと妻、娘の哀しい話を知る。

『大晦日の夜の冒険』
4話からなる。2話紹介。
「1 恋人」
大晦日の夜、「ぼく」は「顧問官の宴会」でかつて愛していたユーリエと偶然の再会を果たす。着飾った美しいユーリエ。著名なピアニストの演奏のもと盃を重ねる。愛の炎が再燃したのも束の間、彼女を探しに来たブサ面の男。夫だった。

「4 失われた鏡像の話」
エラスムスはドイツに妻子を残して念願だったイタリアへ旅立つ。楽しい日々。とある宴会で名画から抜け出たようなジュリエッタと知り合う。たちまち恋に陥る。実は彼女は「高級娼婦」だった。彼女に迫る若いイタリア人。嫉妬から諍いとなる。刃物を向けた男をエラスムスはやっつける。加減が過ぎて死んでしまう。帰独をすすめるジュリエッタ。変わらぬ愛の担保として鏡像をくれと。いきおいで了承する。妻子の元へ帰るが、鏡に映らない夫の姿を見て悪魔呼ばわりする妻。性懲りもなく彼はジュリエッタに未練がある。恐ろしい契約書にサインしそうになるが。
鏡に映らないのと影がないのとでは、どっちがつらいだろうか。あ、髭がうまく剃れないか。影踏みだと絶対的チャンピオンかも。
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ソネアキラ
ソネアキラ さん本が好き!1級(書評数:2199 件)

女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。

twitter.com/sonenkofu

詩や小説らしきものはこちら。

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