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たけぞう
レビュアー:
評価はすこぶる高いが、わたしは合わなかった。
書こうとしている世界観は分かりました。
いかにも現代の日本SFだなあという感じがします。
解説を読むと発表時にとても衝撃を与えたようで、ひょっとしたらこの作品が
最近の日本SFのベースとなっているのかもしれませんね。
それくらい既視感がありました。

取り扱うテーマの深さや、社会性・人間性の作りこみは
高評価だけあって目を見張るものがあります。

では何が趣味に合わないかというと、作品から上滑り感を受けるのですね。
頭でっかちで、こころの中の言葉を感じられないのです。
一番厄介なのは無駄に多い残虐描写です。
ただしそれは、作品のテーマと仕掛けを理解すれば、
設定がつながるところがあるとも言えます。
とはいえ、どうにも空虚な感じを受けてしまうのです。

とても上手な中二病小説と評すればイメージがわくでしょうか。
しかしこういう小説が高い評価を受けることがあることも理解しています。
残虐性があり、粘着質な雰囲気のするディストピア小説です。

だいぶんディスっている文章になっていますが、
趣味の違いとして理解してもらえれば嬉しいです。
わたしと趣味が合うなと思っている人にはお薦めしませんが、
価値観が違うと思う人は試してみたらいかがでしょうという意味です。
プラス風に書き換えると、こんな寸評になります。

人間性を極限まで切り詰められ、殺人マシーンと化した特殊部隊の男が、
わずかに残る人間性の灯に照らされるうち、世界の不条理を一歩ずつ
追い詰めていく物語。


どうでしょう、印象が違いますか? こころに届けば嬉しいです。
趣味の近そうな本で、マルドゥックスクランブルがぱっと思い浮かびました。
それから、ハヤカワ文庫2015秋の勝手にコラボ企画で読んだ、
「My Humanity」も強烈に思い出しました。
同じディストピア小説でも、オーウェルの「1984年」とは
何かが違うのです。理由は説明できないのですが。
いずれも本が好き! の読書企画で読んだので、何はともあれ出会いに感謝です。

アメリカ特殊部隊のシェパード大尉が主人公です。
少し未来の設定です。ごりごりのセキュリティシステムと、ID管理により
安全を構築した世界ですが、小さな紛争は発生するのです。
目指すような安全な世界では戦争は起こらないことになっているので、
アメリカ特殊部隊が非合法的に暗殺を手がけて世界の秩序を維持しています。
それはつまり、人工的に作られた安全のほころびが人間性の存在と
葛藤しているのに、科学の力でごまかし、塗りこめた世界なのです。

これがデビュー作とのことで、たしかに展開力はすごいですね。
人間性に深入りしていないスタイルも、作品テーマに沿ったものであり
考えさせられます。
作品の力は伝わりましたので、必要な人に届けばいいなあと思っています。
癖の強い作品です。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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