たけぞうさん
レビュアー:
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妄想まみれのこんな読書会があったら楽しいよね。
岸本佐知子さんの近著「ひみつのしつもん」が抜群に面白かったと話したら、
Kuraraさんにこの本を薦めてもらいました。
わたし、三浦しをんさんのエッセーは大好きで、
家族ともどもお世話になっています。喜んで手に取りました。
読書会の参加者は以下の五名です。
岸本佐知子:翻訳家。エッセーも手掛け、妄想が得意。
三浦しをん:小説家。困ったエッセーを手掛け、火のない所に
煙を立てることが得意。
吉田篤弘:小説家。クラフト・エヴィング商會所属。
吉田浩美:クラフト・エヴィング商會店主。
大嶋由美子:文芸春秋社員。読書会のアシスト役。
メンバーを見れば妄想系の人が集まっていることが分かります。
わたし、好きな人たちなんです。
メンバーを見た時点で、かなり前のめりになりましたが、
読後はその期待を上回る楽しさで満たされました。
本を読まずに、限られたヒントでどこまで読書会が成立するのかという
やっちまえ系です。よく考えたものです。
わたしも罪と罰は未読だったので、一緒に楽しめました。
残り三分の一のところに、これより本編の内容を紹介しますと書いてあり、
人物表、あらすじが開示されます。
そしてその後に、四人による読書会の続きが、
答え合わせをかねて開催されるのです。
妄想段階では、主人公のラスコーリニコフのことを、
革命家気取りの中二病で、きれい事ばかり言う奴じゃないかと決めつけてみたり、
微妙な登場人物を捨てキャラと切り捨ててみたり、
そもそも誰が殺されてその関係はどうなったとか、
情報が断片的だからこその楽しみ方があるのですね。
皆さん物書きだから、その想像がいかにありそうなところも魅力だったりします。
答え合わせ編も、愛情があふれていて楽しめました。
単に想像と合っていただけには止まらず、誰に惚れたとか、
こんな人とは思わなかったとか、評価の上げ下げで楽しんでいます。
三浦しをんさんなどは、お気に入りの渋いキャラを、
ヴィゴ・モーテンセンにこっそりなぞらえるなど、
しょうがないなーもう、と読んでいて笑いが止まらなくなりました。
こんな時期なので会社の昼休みではマスクをして読んでいたのですが、
不審者面が隠れて助かりました。
ひとつ気がついたのですが、みなさん読書家だからなのか、
伝統的な言い方がちょくちょく出てくるのですね。
はやり言葉をあまり好まないようです。でもさすがに、しをんさんが
いかれポンチと使ったら思いっきりつっこまれていましたが。
楽しい本でした。ご紹介ありがとうございます。
この書評をお読みの方も是非是非。
────── <ちょっと長いおまけ> ──────
ロシア語文学を読むための豆知識を一つ紹介します。
知人に教えてもらった知識に、ネット情報を加えてまとめてみましたので、
参考になれば嬉しいです。
ロシア文学は、名前が複雑で覚えられずに苦労するということを、
読書会で言っています。
久世番子のよちよち文藝部でも言っていましたし、
自分も同じなので共通した悩みだと思います。
これは、似ているけど微妙に違う名前が原因なんだと思います。
罪と罰を例にとります。
主人公:ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ
妹:アヴドーチヤ・ロマーノブナ・ラスコーリニコワ
母:プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナ・ラスコーリニコワ
名前の作りはこうなっています。
「名前」+「父称」+「苗字」
「苗字」と「父称」は、男性・女性変化をします。
男性の場合は、母音が「ウ」「イ」「ン」などがあります。
女性形は、ここから語尾が母音の「ア」に変化します。
その結果、語尾が「ヤ」「ワ」となるわけです。
だから、主人公はラスコーリ家(ラスコーリニコ家かもしれないが)の男の子、
妹も同じくラスコーリ家の女の子ということが分かるのです。
だから二人の苗字から、同じ家の人ってことが分かるんですよ。
これを知っているだけでもだいぶ違います。
ちなみに、ドストエフスキーに妹がいたらドストエフスカヤ。
次に「父称」ですが、これはお父さんの名前です。
語尾変化の考え方は苗字と同じです。
すると主人公は、「ラスコーリ」家の「ロマーノ」おじさんところの
「ロジオン」君になるんですね。
妹は、「ラスコーリ」家の「ロマーノ」おじさんところの「アヴドーチヤ」ちゃん。
だから、お母さんの「父称」が違うんです。
ロジオンにとっては、それはお爺さんの名前なんですね。
さらに困ったことに、ヨーロッパのクリスチャンのミドルネーム(洗礼名)と
ごっちゃにして、「父称」を省略して紹介されることがあるので、ややこしいです。
たとえば母の呼び方をロシア語的に省略するならば、
プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナです(本文P109)。
これを登場人物紹介では、プリヘーリヤ・ラスコーリニコワ(P199)と
ヨーロッパ式にしています。これは本文には登場しない表現ですが、
訳者は知っていて書いているはずです。
ネット情報によると、ロシア的には絶対にないけれど、
ロシア人は分かって流しているみたいですね。
もう一つ大事なこと。
特に親しみをこめない場合、例えば本文の地の文などでは「苗字」を使います。
だから主人公を「ラスコーリニコフ」と書いています。
日本語的には、「ラスコーリ家のその男は」というニュアンスと思えば、
理解が進みませんか。
せっかく教えてもらったことなので、皆さんにも紹介してみました。
Kuraraさんにこの本を薦めてもらいました。
わたし、三浦しをんさんのエッセーは大好きで、
家族ともどもお世話になっています。喜んで手に取りました。
読書会の参加者は以下の五名です。
岸本佐知子:翻訳家。エッセーも手掛け、妄想が得意。
三浦しをん:小説家。困ったエッセーを手掛け、火のない所に
煙を立てることが得意。
吉田篤弘:小説家。クラフト・エヴィング商會所属。
吉田浩美:クラフト・エヴィング商會店主。
大嶋由美子:文芸春秋社員。読書会のアシスト役。
メンバーを見れば妄想系の人が集まっていることが分かります。
わたし、好きな人たちなんです。
メンバーを見た時点で、かなり前のめりになりましたが、
読後はその期待を上回る楽しさで満たされました。
本を読まずに、限られたヒントでどこまで読書会が成立するのかという
やっちまえ系です。よく考えたものです。
わたしも罪と罰は未読だったので、一緒に楽しめました。
残り三分の一のところに、これより本編の内容を紹介しますと書いてあり、
人物表、あらすじが開示されます。
そしてその後に、四人による読書会の続きが、
答え合わせをかねて開催されるのです。
妄想段階では、主人公のラスコーリニコフのことを、
革命家気取りの中二病で、きれい事ばかり言う奴じゃないかと決めつけてみたり、
微妙な登場人物を捨てキャラと切り捨ててみたり、
そもそも誰が殺されてその関係はどうなったとか、
情報が断片的だからこその楽しみ方があるのですね。
皆さん物書きだから、その想像がいかにありそうなところも魅力だったりします。
答え合わせ編も、愛情があふれていて楽しめました。
単に想像と合っていただけには止まらず、誰に惚れたとか、
こんな人とは思わなかったとか、評価の上げ下げで楽しんでいます。
三浦しをんさんなどは、お気に入りの渋いキャラを、
ヴィゴ・モーテンセンにこっそりなぞらえるなど、
しょうがないなーもう、と読んでいて笑いが止まらなくなりました。
こんな時期なので会社の昼休みではマスクをして読んでいたのですが、
不審者面が隠れて助かりました。
ひとつ気がついたのですが、みなさん読書家だからなのか、
伝統的な言い方がちょくちょく出てくるのですね。
はやり言葉をあまり好まないようです。でもさすがに、しをんさんが
いかれポンチと使ったら思いっきりつっこまれていましたが。
楽しい本でした。ご紹介ありがとうございます。
この書評をお読みの方も是非是非。
────── <ちょっと長いおまけ> ──────
ロシア語文学を読むための豆知識を一つ紹介します。
知人に教えてもらった知識に、ネット情報を加えてまとめてみましたので、
参考になれば嬉しいです。
ロシア文学は、名前が複雑で覚えられずに苦労するということを、
読書会で言っています。
久世番子のよちよち文藝部でも言っていましたし、
自分も同じなので共通した悩みだと思います。
これは、似ているけど微妙に違う名前が原因なんだと思います。
罪と罰を例にとります。
主人公:ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ
妹:アヴドーチヤ・ロマーノブナ・ラスコーリニコワ
母:プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナ・ラスコーリニコワ
名前の作りはこうなっています。
「名前」+「父称」+「苗字」
「苗字」と「父称」は、男性・女性変化をします。
男性の場合は、母音が「ウ」「イ」「ン」などがあります。
女性形は、ここから語尾が母音の「ア」に変化します。
その結果、語尾が「ヤ」「ワ」となるわけです。
だから、主人公はラスコーリ家(ラスコーリニコ家かもしれないが)の男の子、
妹も同じくラスコーリ家の女の子ということが分かるのです。
だから二人の苗字から、同じ家の人ってことが分かるんですよ。
これを知っているだけでもだいぶ違います。
ちなみに、ドストエフスキーに妹がいたらドストエフスカヤ。
次に「父称」ですが、これはお父さんの名前です。
語尾変化の考え方は苗字と同じです。
すると主人公は、「ラスコーリ」家の「ロマーノ」おじさんところの
「ロジオン」君になるんですね。
妹は、「ラスコーリ」家の「ロマーノ」おじさんところの「アヴドーチヤ」ちゃん。
だから、お母さんの「父称」が違うんです。
ロジオンにとっては、それはお爺さんの名前なんですね。
さらに困ったことに、ヨーロッパのクリスチャンのミドルネーム(洗礼名)と
ごっちゃにして、「父称」を省略して紹介されることがあるので、ややこしいです。
たとえば母の呼び方をロシア語的に省略するならば、
プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナです(本文P109)。
これを登場人物紹介では、プリヘーリヤ・ラスコーリニコワ(P199)と
ヨーロッパ式にしています。これは本文には登場しない表現ですが、
訳者は知っていて書いているはずです。
ネット情報によると、ロシア的には絶対にないけれど、
ロシア人は分かって流しているみたいですね。
もう一つ大事なこと。
特に親しみをこめない場合、例えば本文の地の文などでは「苗字」を使います。
だから主人公を「ラスコーリニコフ」と書いています。
日本語的には、「ラスコーリ家のその男は」というニュアンスと思えば、
理解が進みませんか。
せっかく教えてもらったことなので、皆さんにも紹介してみました。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
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- 出版社:文藝春秋
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