吉田あやさん
レビュアー:
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ゴドーという装置の計り知れない奥深さに震えるような興奮を覚える
帽子や靴、ポケットの中の野菜、意味がありそうでなさそうなアイテムを交えながら、禅問答のように繰り返される一種狂気のようなやり取りは時に酩酊するように最高の退屈をもたらしてくれる。羽ばたきの音、木の葉のそよぎ、砂の音、囁きざわめく遠い日の景色や誰かの言葉のように一切は二人を通り過ぎていく。二人はアダムとイヴのようであり、友や家族のようでもあり、ただ独りのようでもあり、ベケットの人物造形の懐の深さに感嘆する。
ただ繰り返される無意味な会話劇のように見せながら、反復され、重ねられていくやりとりは人生の重層を想起させ、進む程にその悲劇の様で喜劇のような二人の姿に生きることの深淵が映り、はっと心を掴まれ、何かを見つけた気がした途端、思い出を忘却するように霧消してしまう。共依存のようなふたりの会話と思考は絶妙なズレを保ちながら、迷い、罪を犯し、失敗し、泣き言を言い、絶望し、希望の光を求め、また何かを待ち始める。
愛称的縮小辞で「神」を喜劇的にもどいた「Godot」からのゴドーには、読み手の自由にその形も意味も自在に変えられ、まさにゴッドその人そのもののようで、ベケットは文字を使い多面的な構造を人の脳内に作り出す手品師のよう。
二律背反する人生の哀しみと可笑しみ、希望と絶望をどう捉えるか、人生は救済を待つ旅なのか、最後の審判を待つ日々なのか。ゴドーという装置の計り知れない奥深さに震えるような興奮を覚えた再読。
「何をしようか、今度は?」
「待ちながらか」
「ああ、待ちながら」
ただ繰り返される無意味な会話劇のように見せながら、反復され、重ねられていくやりとりは人生の重層を想起させ、進む程にその悲劇の様で喜劇のような二人の姿に生きることの深淵が映り、はっと心を掴まれ、何かを見つけた気がした途端、思い出を忘却するように霧消してしまう。共依存のようなふたりの会話と思考は絶妙なズレを保ちながら、迷い、罪を犯し、失敗し、泣き言を言い、絶望し、希望の光を求め、また何かを待ち始める。
愛称的縮小辞で「神」を喜劇的にもどいた「Godot」からのゴドーには、読み手の自由にその形も意味も自在に変えられ、まさにゴッドその人そのもののようで、ベケットは文字を使い多面的な構造を人の脳内に作り出す手品師のよう。
二律背反する人生の哀しみと可笑しみ、希望と絶望をどう捉えるか、人生は救済を待つ旅なのか、最後の審判を待つ日々なのか。ゴドーという装置の計り知れない奥深さに震えるような興奮を覚えた再読。
「何をしようか、今度は?」
「待ちながらか」
「ああ、待ちながら」
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よろしくお願いします。
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- 出版社:白水社
- ページ数:240
- ISBN:9784560071830
- 発売日:2013年06月18日
- 価格:1296円
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