三太郎さん
レビュアー:
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コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ2作目は、「緋色の研究」事件からまだ間もないころ。ホームズのコカイン中毒が明かされる。そして、われらがワトスン博士が将来の奥さんとであう物語だ。
コナン・ドイルのホームズ物もこれで7冊目です。今回はシリーズ2作目の長編「四つの署名」を延原謙氏の訳で読みます。僕はこの新潮文庫の延原訳が好きです。文庫カバーのデザインも他の文庫に比べて落ち着いた感じで好みです。
この文庫本は1953年(僕の生まれる前!)が初版で、1991年に訳者の息子さんにより改定されたものです。僕は子供の頃、改定前の版を読んでいるかも。
この「四つの署名」は長編ということですが、文庫で200ページ足らずなので一気に読めてしまいます。最後の部分はこの事件の原因となる、昔のインドであったある殺人事件が語られるのですが、分量としてはあっさりしていて、「緋色の研究」のような二部編成とは異なります。
冒頭で、あの悪評高い、シャーロックのコカインの皮下注射の話がでてきます。ルームシェアしてから数か月間、毎日のようにこの悪習を見せられて、ついにワトスンは我慢できなくなってシャーロックにコカインを止めるように諭します。シャーロックは悪びれずに、何か面白い事件があればこんなことはしないと返答します。そこに、美しいご婦人、ミス・モースタンが事件の相談に訪れてきます。
事件の内容はあえて書きませんが、この物語のクライマックスは、シャーロックらが乗り込んだ警察の高速汽船(ランチ)が、テームズ川で犯人の乗った汽船とデッドヒート?を繰り広げる場面です。何しろ当時の高速艇は蒸気機関なので、石炭をばんばんくべられた方が勝つというものです。追いつき並んだ両艇の間で、毒の吹き矢と拳銃の打ち合いが演じられます。
この事件の捜査にシャーロックは警察犬?を使います。トビイという雑種の犬で、シャーロックは以前にもこの犬を捜査に使ったらしい。トビイは、不注意で臭いクレオソートの液を足に付けてしまった犯人を臭いで追い詰めます。
捜査に犬の臭覚を利用するのは18世紀のベルギーで使われたことがあったそうですが、英国では新しい捜査手法だったかも。これもシャーロックが得意とする科学捜査の一種かもしれません。
ところで、翻訳者によると本編では警官の役職名に混乱が見られるとか。本編では警部と思われるアセルニー・ジョーンズが初登場するのですが、彼の職位はディテクティブ(刑事)だとしてある一方、ジョーンズが連れてきた巡査と思われる二人をインスペクター(警部あるいは警視)と書いています。この頃はドイルもまだ警察組織についてよく知らなかったらしいです。
物語の最後でワトスンはシャーロックに同居生活の終わりを予告します。ミス・モースタンと婚約したと言ったのです。シャーロックは悲しげに「そんなことだろうと思ったが、おめでとうは言わないよ」という。さらにあの人になら僕らの仕事を手伝ってもらいたかった、ずいぶん役にたったろうとまで言うのでした。ちょっと寂しげなシャーロックでした。
この文庫本は1953年(僕の生まれる前!)が初版で、1991年に訳者の息子さんにより改定されたものです。僕は子供の頃、改定前の版を読んでいるかも。
この「四つの署名」は長編ということですが、文庫で200ページ足らずなので一気に読めてしまいます。最後の部分はこの事件の原因となる、昔のインドであったある殺人事件が語られるのですが、分量としてはあっさりしていて、「緋色の研究」のような二部編成とは異なります。
冒頭で、あの悪評高い、シャーロックのコカインの皮下注射の話がでてきます。ルームシェアしてから数か月間、毎日のようにこの悪習を見せられて、ついにワトスンは我慢できなくなってシャーロックにコカインを止めるように諭します。シャーロックは悪びれずに、何か面白い事件があればこんなことはしないと返答します。そこに、美しいご婦人、ミス・モースタンが事件の相談に訪れてきます。
事件の内容はあえて書きませんが、この物語のクライマックスは、シャーロックらが乗り込んだ警察の高速汽船(ランチ)が、テームズ川で犯人の乗った汽船とデッドヒート?を繰り広げる場面です。何しろ当時の高速艇は蒸気機関なので、石炭をばんばんくべられた方が勝つというものです。追いつき並んだ両艇の間で、毒の吹き矢と拳銃の打ち合いが演じられます。
この事件の捜査にシャーロックは警察犬?を使います。トビイという雑種の犬で、シャーロックは以前にもこの犬を捜査に使ったらしい。トビイは、不注意で臭いクレオソートの液を足に付けてしまった犯人を臭いで追い詰めます。
捜査に犬の臭覚を利用するのは18世紀のベルギーで使われたことがあったそうですが、英国では新しい捜査手法だったかも。これもシャーロックが得意とする科学捜査の一種かもしれません。
ところで、翻訳者によると本編では警官の役職名に混乱が見られるとか。本編では警部と思われるアセルニー・ジョーンズが初登場するのですが、彼の職位はディテクティブ(刑事)だとしてある一方、ジョーンズが連れてきた巡査と思われる二人をインスペクター(警部あるいは警視)と書いています。この頃はドイルもまだ警察組織についてよく知らなかったらしいです。
物語の最後でワトスンはシャーロックに同居生活の終わりを予告します。ミス・モースタンと婚約したと言ったのです。シャーロックは悲しげに「そんなことだろうと思ったが、おめでとうは言わないよ」という。さらにあの人になら僕らの仕事を手伝ってもらいたかった、ずいぶん役にたったろうとまで言うのでした。ちょっと寂しげなシャーロックでした。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:196
- ISBN:9784102134061
- 発売日:1986年02月01日
- 価格:380円
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