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ぷるーと
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折口信夫と歌舞伎三昧の日々が描かれた二作目。
作者の父親宮本演彦の生涯を綴った三部作の二作目。

演彦は、慶応の予科に入り、歌舞伎を観るようになった。一緒に観たり感想を語り合っていたのが加賀山直三、のちの演劇評論家、国立劇場制作室長となる人物だから、歌舞伎を観る目も肥えようというものだ。

一巻のラストで、終生師と仰ぐことになる折口信夫を校内で見かけているが、本科に上がって、いよいよ折口信夫の授業を受けることになる。

その一方で、慶応在学中に、五・一五事件が起こっている。世間は大不況のさなかである。
宮本家は医療を生業とし、かつては広い地所も持つ保土ヶ谷の名士だったが、関東大震災後の不況が生活に重くのしかかって来ている。兄は中々就職が決まらず、やっと就職したと思ったら、父親が生活費工面のために借金をしていて、それが抜き差しならないところまで来ていると打ち明けられる。

昭和初期の、戦争に向かうまでの暗い時代。そういった時代の学生生活を書いたものは、作者が言うようにあまりないようだ。だが、この演彦の学生生活から当時の学生たちの暮らしぶりが見えてくるかというと、ちょっと疑問だ。

手弁当で慶応に行くのが恥ずかしくもあったと言いながらも、もともと裕福な家柄てあるためか、歌舞伎を欠かさず観、高価な本も買い、結構贅沢な暮らしをしているのは、かつての習慣をなかなか変えられない一家の生活習慣に染まっているからだろう。父親から借金の話を聞いた後でも歌舞伎を観に行き続けているのは、私の感覚からは考えられないことだが、没落の途にある名門家には、そういうことも許される雰囲気があるのかもしれない。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2933 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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