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星落秋風五丈原
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実はミランダは 最初も最後も殺されていない しかしじわじわと殺されていく
 カリフォルニアのビーチクラブに集うのは、匿名の中傷文(Poison Pen Letter)を書くのに忙しいチャールズ・ヴァン・アイク、金持ちの両親や学校にもて余されて、年齢よりかなり大人びた言葉遣いをする9才の少年フレデリック・クイン、夫を亡くしたミランダ・ショー、ヴァン・アイクの義弟で退役海軍准将クーパーと三十代になる二人の娘コーデリアとジュリエット。従業員にはビーチクラブのマネージャーのウォルター、秘書のエレン、プールの監視員グレイディーがいた。ある者は隣人に興味深々、またある者は逆に構われたくない。心底の友人関係など一つもない彼等のうち、男女二人が突然失踪する。そのうちの一人がミランダだ。

 ここでタイトルロールが出てきたのだから、彼女がなぜ、いつ、どのように殺されたのかを明かす話になるのだろう…と普通ならば考える。ところが彼女は呆気なく見つかり戻って来る。ならばタイトルに偽りありと思うようだが、ラストまで読むとこの邦題がどんぴしゃだったことがわかる。彼女は確かに死に向ってゆくのだ。

 理由が全く本人に原因のない言いがかりであるならば、これほど悲惨な語はない。ところが作品を読むうちに、読者はミランダのいわゆる“残念さ”に気づき、事ここに至ったのは、彼女にも少しは原因があったと感じるようになる。ビーチクラブの面々の誰一人として全くの善人はおらず、どこかで「自分がいかに得をすべきか」を考えている。だからといって罪に問うほどの極悪人ではない。作者の“さりげなく読者の思考をその方向に持ってゆく”キャラクター紹介のチラ見せ具合がなんとも上手い。人間観察の賜物か。

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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2329 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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