星落秋風五丈原さん
レビュアー:
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イザベルがあまりにもタカビーで「えい!ひどい目にあっちゃえ!」と言いたくなります それでもやっぱり可哀想なんですけど…
アメリカ生まれの美しい娘イザベルは両親を亡くし、イギリスの親戚で裕福なタチェット家に身を寄せていた。利発なイザベルは周囲の人々に愛され、ウォーバトン卿のような貴族の求婚者や、海を越えてイザベルを追って来るアメリカ時代の恋人である青年実業家キャスパーもいた。だが、夫に従属するだけの古風な結婚を嫌うイザベルは「一生独身でも構わない」と言い放つ。
イザベルの従兄ラルフ・タチェットもイザベルを愛していたが、結核で自分の余命がわずかであることを悟っていた。イザベルの望みが、進歩的で自立した生き方だと知っているラルフは、自分が受け継ぐべき莫大な財産がイザベルに渡るよう配慮する。だが、そうと知らないイザベルは、ある男性との結婚を決める。
イザベルにもっとも手酷くフラれるキャスパーだが、まず外見が嫌われていた。
などという、第三者から見れば、経営者として立派な点はあったのに。
ならばなぜ貴族のウォーバトン卿はダメかというと、彼の外見は気に入ったらしい。大人の男らしさを備えた彼との結婚を周囲も彼との結婚を勧めるが
と突っぱねる。
ああこの娘ったら何て世間知らず!ほどほどっていう事を知らないから怖い者知らずの事を言うんだよ…という所謂若者を見つめるオトナの思いと、「いや、いくら何でもちょっとタカビーすぎない?何様?」という意地悪な気持ちに身を裂かれながら序盤を読む。あげく、よし、痛い目に遭うのも人生経験だよ、というイジワルな気持ちになってくる。それにしても散々振ったあげくに選ぶ相手がその人?みたいな結婚をした時には、ほらごらん!と言いたくなり、後半のイザベルの不器用さにイライラ。失敗したとわかったらさっさと再出発しろよ!とどつきたくなるのは現代を生きる我々だからだろう。
散々金に飽かせてヨーロッパを(人を含めて)貪り尽くす話を描いてきたジェームズが晩年に描いたのはこれら全てに対するリベンジ。背負わされたのは賢いつもりでいたアメリカ人女性。
2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。
ヘンリー・ジェームズ作品
ワシントン・スクエア
ねじの回転 -心霊小説傑作選-
大使たち〈上〉
大使たち〈下〉
黄金の盃
アスパンの恋文
ヘンリー・ジェイムズ作品集 (2) ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中
友だちの友だち (バベルの図書館)
ロデリック・ハドソン
聖なる泉
ロンドン生活 他
ヘンリー・ジェイムズ作品集 (7) 密林の獣 荒涼のベンチ
ボストンの人々
アメリカ人
イザベルの従兄ラルフ・タチェットもイザベルを愛していたが、結核で自分の余命がわずかであることを悟っていた。イザベルの望みが、進歩的で自立した生き方だと知っているラルフは、自分が受け継ぐべき莫大な財産がイザベルに渡るよう配慮する。だが、そうと知らないイザベルは、ある男性との結婚を決める。
イザベルにもっとも手酷くフラれるキャスパーだが、まず外見が嫌われていた。
彼には、得意とする複雑に入り組んだ事柄があった。すなわち、彼は組織し、競争し、管理するのが好きであり、人びとを自分の意思通りに動かし、彼を信頼させ、彼の面前で行進させ、彼の主張の正しさを立証させることができた。これはいわゆる人を動かす才であり、この才能は彼にあっては内省的ではあるが大胆な野心のために生かしうるものであった。彼をよく知っている者たちは、彼が一紡績工場の経営などよりもっと大きなことをするかもしれないと思っていた。
などという、第三者から見れば、経営者として立派な点はあったのに。
ならばなぜ貴族のウォーバトン卿はダメかというと、彼の外見は気に入ったらしい。大人の男らしさを備えた彼との結婚を周囲も彼との結婚を勧めるが
では、完璧すぎるからお断りしたと言えばいいかしら。私は完全な人間ではありませんし、あの方は私にはりっぱすぎるのです。そのうえ、あんまり完璧だとかえっていらいらするんじゃないかと思いますわ
と突っぱねる。
ああこの娘ったら何て世間知らず!ほどほどっていう事を知らないから怖い者知らずの事を言うんだよ…という所謂若者を見つめるオトナの思いと、「いや、いくら何でもちょっとタカビーすぎない?何様?」という意地悪な気持ちに身を裂かれながら序盤を読む。あげく、よし、痛い目に遭うのも人生経験だよ、というイジワルな気持ちになってくる。それにしても散々振ったあげくに選ぶ相手がその人?みたいな結婚をした時には、ほらごらん!と言いたくなり、後半のイザベルの不器用さにイライラ。失敗したとわかったらさっさと再出発しろよ!とどつきたくなるのは現代を生きる我々だからだろう。
散々金に飽かせてヨーロッパを(人を含めて)貪り尽くす話を描いてきたジェームズが晩年に描いたのはこれら全てに対するリベンジ。背負わされたのは賢いつもりでいたアメリカ人女性。
2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。
ヘンリー・ジェームズ作品
ワシントン・スクエア
ねじの回転 -心霊小説傑作選-
大使たち〈上〉
大使たち〈下〉
黄金の盃
アスパンの恋文
ヘンリー・ジェイムズ作品集 (2) ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中
友だちの友だち (バベルの図書館)
ロデリック・ハドソン
聖なる泉
ロンドン生活 他
ヘンリー・ジェイムズ作品集 (7) 密林の獣 荒涼のベンチ
ボストンの人々
アメリカ人
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2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。
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- 出版社:国書刊行会
- ページ数:755
- ISBN:9784336024930
- 発売日:2005年06月01日
- 価格:6825円
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『ヘンリー・ジェイムズ作品集 (1) ある婦人の肖像』のカテゴリ
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