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くてたま
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フランスの作家、1892年の作品。1870~71年の普仏戦争を描いた戦争もの。史実としてはナポレオン3世の第二帝政の終焉、パリコミューンと呼ばれる人民蜂起のころ。
主人公のジャンがマッコール一族である。貴族ではなく農民で、39才で入隊して伍長の位だった。ジャンは106連隊で若いモーリスと行動を共にし、二人は友人となる。モーリスはパリに遊学した経験のある知識人だが、最後には腐敗した王政に失望して、パリコミューンに参加してしまう。

戦場はベルギー、ルクセンブルグ、ドイツ国境に近いフランス北部だった。ジャンたち106連隊は、情報把握能力のない元帥や将軍に翻弄され、食料の支給も受けられず、苦戦する。士気を鼓舞するため(?)に前線に出ていた皇帝は早々と投降してしまい、捕虜になった皇帝という汚名を歴史に残した。

皇帝とともに捕虜になったジャンとモーリスは監視の隙を見て脱走するが、ジャンが足に銃撃を受け負傷した。モーリスはジャンに手を貸して、双子の姉のアンリエッタを頼って、シダンという町に向かった。

アンリエッタの夫のヴァイスは織物工場の監督をしており、工場を守るため兵士とともにドイツ軍と戦ったが、銃弾を受けて死亡した。アンリエッタは作男一人を連れて、ヴァイスの遺体を回収したのちに、野戦病院となった工場で看護婦の見習いをしていた。

アンリエッタはモーリスの依頼を快く受け入れ、ジャンを自宅に隠して看病した。脱走しているので、ドイツ兵に見つかれば処刑される。
モーリスはまだ戦闘の続いているパリに向かった。

ジャンは足を切断することをかたくなに拒否したため、治療には長期間を要した。実の肉親のように世話をしてくれるアンリエッタに好ましい想いを深めていった。
戦争はいずれ終わるだろう。足は切断せずに済んだ。アンリエッタを妻に向かえて農民に返ることを考えていた。モーリスと兄弟になれる。アンリエッタは承諾してくれるのではないか。何も言わなかったが、二人は目と目で会話した。

だが戦争は簡単に終わらなかった。宰相ビスマルクは50億フランの賠償金とアルザスの割譲で譲る気配はなかった。パリを遠巻きにしてフランス人通しの戦争を高みの見物としゃれこんでいた。王政の後の国民党政府とそれに反発するパリコミューンとの戦争を。

負傷の癒えたジャンは国民党軍に参加し、パリに進軍した。
アンリエッタはモーリスとジャンが心配でたまらず、パリに向かった。
「パリは燃えている。もはやこれ以上は行けない。全員降りるんだ。パリは燃えている。」警備のドイツ兵に汽車から降ろされた後は、徒歩で燃えているパリを目指した。

ジャンとモーリスは戦場で運命的な出会いを果たした。ジャンが銃剣で刺したコミューンの兵士はモーリスだった。自責の念に苛まれながらジャンは瀕死のモーリスを彼の下宿まで運んだ。そこで待っていたのは、ようやくパリにたどり着いたアンリエッタだった。
久しぶりに三人が顔を合わせたが、モーリスの傷は深かった・・



ガーディアンマストリード1000の一冊。ルーゴン=マッカール叢書の19巻目らしいが、それぞれの小説は独立しているので、順序を気にせずに読める。

作者はナポレオン3世のことを優柔不断な皇帝で、治世は皇后摂政に握られており、軍隊の指揮権も他の元帥に奪われて、何の権限もない飾りだけの人物として描いている。元帥や将軍も虚仮にしている。フランス人の右寄りの人に命を狙われなかったか、心配になる。
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くてたま
くてたま さん本が好き!1級(書評数:390 件)

花の年金生活者です。
勤労者の皆様お仕事ご苦労様です。皆様のお陰で朝からお酒を戴きながら本が読めます。
二年ほど前まではアウトドア派で、山渓の「日本の山1000」を目指していました。五街道まで足を広げたら、歩きすぎで戸塚宿で足萎えになり、525山で中断しています。

代わりに、「ガーディアンマストリード1000」を目標としています。難しい本は読めませんが・・

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