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ぷるーと
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ひとつのことだけに情熱を傾ける奇人たちを、愛情こめて描いた短編集。
シュテファン・ツヴァイクは、ウィーンの裕福なユダヤ人工業家の家に生まれた。早熟の詩人として出発し、劇作家を試みたのち小説に転じた。名が知られるようになってからは、ザルツブルクに住んだが、ヒトラーが独裁体制を固め反ユダヤの雲行きとなってきたため、イギリスに住居を用意した。とはいえ、すぐには出国せずザルツブルクに留まり続け、オーストリアがナチス・ドイツに併合されるに及び、祖国をあとにした。

ツヴァイクは、第一世界大戦から第二次世界大戦の間のインフレと政情不安定な時代を生きた作家。本作品の「目に見えないコレクション」と「書痴メンデル」は、その時代だからこその悲劇を描いた短編。

また、この2作品の主人公は、「ひとつのことだけに情熱をかける」特異な人物。こういった人々は、普通のときなら、呆れられたりなどしながらも愛すべき変人として扱われたり、「書痴メンデル」のように一部の人たちから尊敬されたりもするような人々なのだ。だが、社会が悪化してくると、彼らは、いとも簡単に零落してしまう。なぜなら、彼らは「ひとつのことだけ」しか見ていないから、時代の変化を察知することもできないし、危難から逃げることもできないからだ。

「チェスの話」は、ツヴァイクがイギリスからアメリカに移った矢先の1941年に発表された作品。この作品には、ヒトラー政権が隣接国に組織した「本当の軍隊ではないが危険性と訓練度はまったく同じ軍隊」(SA、SS)の巧妙なやり口について記されている。事務所に入り込んだ彼らの回し者によって拘束されたB博士の想像を絶する体験と、正常を保つために彼がやったこと。これは、なんという話だろう。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2925 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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