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DBさん
DB
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童話があらわす時代の話
童話を読み返そうの第三弾で、グリム童話の最後の巻です。
この巻では特に動物関係の童話が多かったように思います。
表題作になっている「ブレーメンの音学師」では、年老いて働けなくなったために餌をもらえなくなったロバ、同じく年老いて飼い主に殺されそうになった犬と猫、それに絞め殺されそうになった鶏がブレーメンを目指して旅をする。
たまたま通りかかった家に泥棒がいて、それを4頭で協力して追い出しその家で幸せに暮らしたというお話です。
なんの教訓なのかはわからないけど、人間って自分勝手だよね。

死神の話は二つとも童話というよりは神話のようです。
病気のような死神の使いには気をつけろというより運命を表しているようだった。
「かしこい人々」に「かしこいハンス」、「かしこいエルゼ」とかしこいというタイトルがつく童話が中程で続きます。
これを見ていると、賢さっていう定義がよくわからなくなるけど、皮肉なのかしら。

「おおかみと七匹の子やぎ」は注意深くしなさいっていう教訓ですね。
絵本で読んだ時計に隠れた子ヤギの絵を思い出す。
「赤ずきん」のお話は、その隠喩がなんなのかでよく語られる話ですね。
赤ずきんの少女はまあいいとして、狼とおばあさんが何を表すのかが諸説あり。
ペローの童話から話をとり、最後に狼の腹から赤ずきんとおばあさんが救出されるシーンを付け足したのがグリム童話です。
母親の言いつけ通り道草を食わないことっていうわかりやすい教訓でまとめたようですが、狼がじつは少女を狙う男だという説が一般的だね。
ペローのように狼に食べられて終わるか、グリムのようにハッピーエンドを付け足すかで随分と違うけれど。
食べられて終わりの方が教訓としてはストレートな気がします。

「いばら姫」もこの巻に収録されている。
百年の眠りと言ったらロマンチックに聞こえるけれど、その後の生活が困って大変というパロディに深く納得した。
童話の王子様たちは噂を頼りに安易に命を賭けていくが、その動機についてはあまり出てこない。
最後の童話となる「金の鍵」は1ページ分の短い童話なんだけど、小さな金の鍵と鉄の箱を見つけた少年が鍵穴を見つけて鍵をまわすところで終わる。
非常に中途半端でよくわからないのはなぜだろう。

グリム童話を読み返してみるとどれも短いなりに面白かった。
教訓深い話から残酷な話、それに子供向けじゃなさそうな話といろいろだけど。
やはりグリム兄弟の背景についても知ってから読むと更にいいかと思います。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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