ゆうちゃんさん
レビュアー:
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39歳のポール、その少し年上の恋人ロジェ、そしてポールに恋する25歳の青年シモンの三角関係を扱った作品。本書に今日的な男女格差の問題を見るのは深読みのし過ぎだろうか?
ポールは39歳の女性。自分で何か事業をしてみたい、という理由で夫マルクと別れ、ウィンドウ装飾の仕事をしている。だがそれは決してうまく行っていない。今日もヴァン・デン・ベッシ夫人からの引き合いで一息ついたところだった。彼女には、ロジェという少し年上の恋人が居た。だが、この頃彼は一緒に食事をした後、車で家まで送ってくれるが、彼女の部屋に寄って行かなくなった。もっと以前は、ポールがロジェの家に通っていたが、いつしかそれが逆になり、更にポールはロジェを待つ身になった。ポールは孤独だった。
ポールが、ヴァン・デン・ベッシ夫人のところで仕事の打合せをして帰る時、夫人の息子のシモンが車で送ってくれるという。外はひどい雨だった。シモンは弁護士の見習いであり、その弁護士は母親の愛人である。仕事はちゃらんぽらんだが、そう言った関係で解雇はされない。シモンは道行く女性が振り返る美男子だった。シモンは、ポールに魅力を感じていて昼食に誘うが、ポールは自分の歳を告げて断る。だが、この頃、ロジェはメージーという軽薄な女優志望の女と良い仲になっていた。ポールは何かと付きまとうシモンをはねつけていたが、そのうち寂しさからシモンと関係を結んだ。だが、彼女は年齢差が気になる。確かに安易としか言えない理由で夫と別れた時にも世間から非難はされた。そんなことには動じなかった彼女も、こんな美青年と40歳に手が届く自分が一緒に歩いていて、世間から軽蔑されるのには耐えられなかった。実際、シモンと夜レストランやバーに行くようになり、近くのテーブルに自分の知り合いが居たことがある。「あの人幾つになったのかしら」と言う言葉が耳に入った。ポールは、シモンを促してその場を去り、家に帰った。シモンにもその言葉が耳に入ったが、「そんなことは問題ではない、結婚しよう」という。ある晩、ポールとシモン、そしてロジェと新しい女がレストランで鉢合わせをするが・・・。
安易な言葉だが、おとなの恋の作品。ポールの寂しさ、若いシモンのいじらしさ、そしてロジェの鈍感と傲慢。ポールとシモンに15歳の差を設けたのがこの作品のみそ。ポールは決して金持ちではなく有閑階級のお遊びを描いたとは言い切れないが、社会問題を扱った作品ではないので、くだらない恋愛ごっこを描いたと切って捨てることは出来るかもしれない。だが、切ない結末でもあり、決して安直な小説ではない。今日的な男女の格差がこの作品にも垣間見える。
表題のブラームスは、シモンがポールを誘った音楽会で演奏される曲目。その演奏会はラジオで中継されていて、ポールに対して仕事と偽ってメージーと田舎で過ごしたロジェも帰りのドライブで聞いている。原作ではブラームスの協奏曲となっているが、ブラームスは協奏曲を4曲書いている(バイオリン1曲、ピアノ2曲、バイオリンとチェロの二重協奏曲1曲)。原作の書きぶりはどうやらバイオリン協奏曲のようだが、この小説の雰囲気に合わない。
本作は映画化されている。若い頃に一度見ているはずだが、シモンが原作通りおどけた動作をしている場面以外は覚えていない(シモンの安直な一面を示す場面)。この作品を再読して、一体どんな女優ならポールを演じられるのだろうと思ったら、イングリッド・バーグマンだった。なるほど!美青年はアンソニー・パーキンス、これもなるほど!!ロジェはイブ・モンタン(この役は名の知れた人なら誰でも・・)。
映画の方のブラームスは、交響曲第3番の第3楽章を使っている。実は、この曲の方が小説にとてもしっくりくる。ブラームスはとても謹厳な曲を書いた作曲家と思われるが、時に非常にロマンチックな曲を書くこともある。前記以外にも、弦楽六重奏曲第1番の第2楽章など。
ポールは、小説中「ブラームスはお好き?」と三回聞かれている。学生時代の級友、音楽会に誘うシモンから、そして田舎から帰って来たばかりのロジェから。彼女にとってブラームスは苦い思い出になるのだろう。
ポールが、ヴァン・デン・ベッシ夫人のところで仕事の打合せをして帰る時、夫人の息子のシモンが車で送ってくれるという。外はひどい雨だった。シモンは弁護士の見習いであり、その弁護士は母親の愛人である。仕事はちゃらんぽらんだが、そう言った関係で解雇はされない。シモンは道行く女性が振り返る美男子だった。シモンは、ポールに魅力を感じていて昼食に誘うが、ポールは自分の歳を告げて断る。だが、この頃、ロジェはメージーという軽薄な女優志望の女と良い仲になっていた。ポールは何かと付きまとうシモンをはねつけていたが、そのうち寂しさからシモンと関係を結んだ。だが、彼女は年齢差が気になる。確かに安易としか言えない理由で夫と別れた時にも世間から非難はされた。そんなことには動じなかった彼女も、こんな美青年と40歳に手が届く自分が一緒に歩いていて、世間から軽蔑されるのには耐えられなかった。実際、シモンと夜レストランやバーに行くようになり、近くのテーブルに自分の知り合いが居たことがある。「あの人幾つになったのかしら」と言う言葉が耳に入った。ポールは、シモンを促してその場を去り、家に帰った。シモンにもその言葉が耳に入ったが、「そんなことは問題ではない、結婚しよう」という。ある晩、ポールとシモン、そしてロジェと新しい女がレストランで鉢合わせをするが・・・。
安易な言葉だが、おとなの恋の作品。ポールの寂しさ、若いシモンのいじらしさ、そしてロジェの鈍感と傲慢。ポールとシモンに15歳の差を設けたのがこの作品のみそ。ポールは決して金持ちではなく有閑階級のお遊びを描いたとは言い切れないが、社会問題を扱った作品ではないので、くだらない恋愛ごっこを描いたと切って捨てることは出来るかもしれない。だが、切ない結末でもあり、決して安直な小説ではない。今日的な男女の格差がこの作品にも垣間見える。
表題のブラームスは、シモンがポールを誘った音楽会で演奏される曲目。その演奏会はラジオで中継されていて、ポールに対して仕事と偽ってメージーと田舎で過ごしたロジェも帰りのドライブで聞いている。原作ではブラームスの協奏曲となっているが、ブラームスは協奏曲を4曲書いている(バイオリン1曲、ピアノ2曲、バイオリンとチェロの二重協奏曲1曲)。原作の書きぶりはどうやらバイオリン協奏曲のようだが、この小説の雰囲気に合わない。
本作は映画化されている。若い頃に一度見ているはずだが、シモンが原作通りおどけた動作をしている場面以外は覚えていない(シモンの安直な一面を示す場面)。この作品を再読して、一体どんな女優ならポールを演じられるのだろうと思ったら、イングリッド・バーグマンだった。なるほど!美青年はアンソニー・パーキンス、これもなるほど!!ロジェはイブ・モンタン(この役は名の知れた人なら誰でも・・)。
映画の方のブラームスは、交響曲第3番の第3楽章を使っている。実は、この曲の方が小説にとてもしっくりくる。ブラームスはとても謹厳な曲を書いた作曲家と思われるが、時に非常にロマンチックな曲を書くこともある。前記以外にも、弦楽六重奏曲第1番の第2楽章など。
ポールは、小説中「ブラームスはお好き?」と三回聞かれている。学生時代の級友、音楽会に誘うシモンから、そして田舎から帰って来たばかりのロジェから。彼女にとってブラームスは苦い思い出になるのだろう。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
この書評へのコメント
- ゆうちゃん2020-02-19 19:20
ブラームス 交響曲第3番第3楽章
https://www.youtube.com/watch?v=_H41qBdrpwg
映画ではこんな感じですね(さよならをもう一度、と言う題名で公開されたようです)
https://www.youtube.com/watch?v=WCBoz0ls57k
ブラームス 弦楽六重奏第1番第2楽章
https://www.youtube.com/watch?v=aRxsS5nHSe8
実はこちらも映画で使われています。似た系統の映画かも。主演は、ジャンヌ・モローです。
https://www.youtube.com/watch?v=o0B8LqiReuQクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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